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NEW LIFE ONLINE   作者: てんく
30/36

30話

遅くなってすみません。


目を逸らす母さんに俺は声をかける。


「…母さん、教えてないの?」

「はい、そうです」


目を逸らしたままそう言う母さん。何故言ってないのか聞くと母さんは、


「その、お父さんと兄さんが舞彩たちに危ないことはさせられないって、怪我したら困るからとか言って、教えてなかったの。お父さんは何か小声で呟いていたけど、よくは聞こえなかったの」


「そもそも冬冴が武術を習い始めることも私は反対だったのに」とも言う母さん。

なるほど、確かに姉さんと舞彩が怪我でもしたら俺も嫌だな。理由はよく分かった。


母さんとそんなやり取りをしているとやっと舞彩が我に帰った。

我に帰った舞彩は俺に詰め寄ってくる。


「お、お兄ちゃん武術なんて習ってたの?」

「あぁ、小学四年ぐらいからな。じいちゃんに誘われて習い始めたんだ」


そう教えると舞彩は少し考える素振りを見せてから沙希に耳打ちをして相談をし始める舞彩。

何か嫌な予感がするぞ。そして、その予感は的中することになる。


「お兄ちゃん!」


語尾に音符がつきそうなほどニコやかに笑顔を浮かべながら俺に近寄ってくる舞彩。

この呼び方は俺に何かをねだる時にする。その後ろには申し訳なさそうな表情を浮かべる沙希。


「私たちにもその【夢玄演舞】?を教えて欲しいなー」


言うと思った。

でもまぁ、何か理由があるだろうしそれを聞いてから教えるかどうか考えるか。

そう思い、舞彩に理由を聞く。


「そろそろ新入生の為に、高学年の私たちがオリエンテーションでダンスを披露することになっているんだけど、そこでお兄ちゃんの【夢玄演舞】が参考にならないかなっと思って教えて欲しいんだ」


なるほどな。

確かに、ダンスの参考程度にはなるかもしれないが、しかし根本的に違うのだがな。

まぁ、教えるにしろ、しないにしても口で言うより見せた方が早いような気がする。

実際に見せて、それでも教えてほしいと言えば出来る限りのことは教えようと思う。【夢玄演舞】だけはな。


「別に教えてもいいが、【夢玄演舞】だけだぞ?」

「……えーっと、な、なんのことかなー?」

「誤魔化そうとしない。舞彩のことだから武術の方も教えてもらおうと思っていたのだろう?」


そう言うと、しゅんとちょっと落ち込んだ様子を見せながら舞彩は「はい、そうです」と肯定した。

そんな事だろうと思ったが、母さんたちの気持ちも分からないことは無いんだ。


「舞彩、教えてほしいのは分かるがちゃんと母さんたちには許可を貰うんだ。危ないことをするのには変わりがないからな。俺の独断で教えることは出来ない」

「うぅー、分かった。母さんと相談する」

「あぁ、そうしてくれ。…まぁ、そんな落ち込むな。ちゃんと【夢玄演舞】の方は教えるし、許可が出たら武術の方も教えるのだから」

「うん、分かった。お願いね、お兄ちゃん」



話も付いたところで、もう帰らないといけない時間になり、舞彩たちに夢玄演舞は別の日に教えることにしてそれぞれの家路につく。

浜口と西條は一緒に帰ろうとして、俺は前のこともあり家まで送ろうか?と浜口たちに聞くが、2人いるから大丈夫と断られてしまった。


少し心配しながら浜口たちと別れた俺たちは沙希と一緒に帰るが遅いこともあり、俺たち家族全員で沙希を家まで送ることになった。

それには沙希もビックリしていた。


「だ、大丈夫ですよ」

「駄目」


沙希は断ろうとするが、舞彩が即座にそう言う。親友なだけに心配なのだろう。

結局、渋る沙希を舞彩が押しきり沙希を家まで送ることになった。


舞彩と沙希が俺と母さんの前を歩き、楽しそうに学校であったことやこれからの部活動のことを話している。

母さんはそんな舞彩たちを見て嬉しそうに微笑みながら歩いている。

母さんも楽しめたようだし、良かった。

そうしてゆっくり歩くこと数分、享の家についた。


「ここまで送っていただき有難うございます」


そう言って、お辞儀をしながらお礼を言ってくる。

「お礼なんていいよ。親友として当然のことをしたまでだよ」と胸を張りながら言う舞彩。

それを聞いた沙希は少し照れくさそうに笑顔を浮かべる。


本当に仲が良いな。そう思いながら楽しそうにしている舞彩たちを俺と母さんは見ていた。

それから少しして沙希と別れた俺たちは家に帰り、母さんがすぐに晩御飯の準備を始めて、俺と舞彩は制服から部屋着に着替える。



着替え終えたら、部屋から出て下に降りて、晩御飯の手伝いをする。

今日の晩御飯は三色丼だった。


晩御飯を食べ終えた後、食器を片付けてお茶を飲んだ後自室に戻り勉強をしてから『NEW LIFE ONLINE』にはログインをせずにそのまま寝た。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




次の日になり、いつも通りランニングをして7時に帰ってくると、舞彩が少し眠そうにしながらも笑顔を浮かべながら、


「お兄ちゃん、今日でも大丈夫かな?」

「特に用事ないし、別にいいぞ」


「じゃあ今日の学校が終わった後、家に沙希ちゃんと真由香ちゃんと麻佑ちゃんが来るから」


そうか、分かっ……ん?

沙希は分かるが何で、浜口と西條まで来るんだ?理由を聞こうと思い振り替えるがもう舞彩は出ていった後だった。

まぁ、いいか。浜口たちが来た時にでも聞いてみるか。



シャワーを浴びた後、リビングに行き朝食を食べ終えて食器を片付けている時に母さんが髪の毛を拭きながらリビングに戻ってきた。

どうやら俺がシャワーを浴びた後に風呂にでも入っていたらしい。


「おはよう、母さん」

「うん、おはよう」


お茶を飲んで一息付いてから、母さんに聞く。


「そう言えば、舞彩から聞いた?」

「今日うちに沙希ちゃんたちが来ることでしょ?ちゃんと聞いているよ」


それならいいんだ。

さて、もうそろそろ学校に行く準備でもするか。




時間が過ぎて、学校も終わり放課後になると俺は帰る準備をして

享に誘われて一緒に帰る。

どうやら享は今日も用事があるらしく、家に帰った後すぐに出ていかないといけないらしい。どんな用事かは知らないが頑張れよ。


享と別れて、家に着くともう舞彩と沙希、そして浜口たちが家の前で待っていた。

早いな。


「お兄ちゃん、おかえりなさい」

「あぁ、ただいま。早いな」

「遅くなっても困るから、早めに終わらそうと思ってね」


まぁ、確かに遅くなったら危ないし早めに済ませた方がいいだろう。

舞彩たちに「準備をしてくるから裏庭で待っていてくれ」と言い、自室に戻る。さすがに家の中でするわけにはいかないだろう。


じいちゃんに渡された白銀色のチャイナ服に似たような服に着替える。

じいちゃん曰く、夢玄演舞をする時の衣装でじいちゃんが30分位で作成をしていた。

着替え終えた後、伊達眼鏡を外してから髪の毛を整えて、念の為に夢玄演舞に使う扇子も持って降りる。もしかしたら使わないかも知れないが。


下に降りて、裏庭に行くと準備されていた椅子に座って待っていた。


「悪い、待たせた」

「遅いよ、お兄…」


声をかけると、舞彩たちが俺の方を見て固まってしまった。ん?何をそんなに驚いているんだ?

あぁ、服装の事か。


「あぁ、この服か?これは夢玄演舞をするための服だって言ってじいちゃんが渡してくれた」

「そうなんだ。似合ってるよお兄ちゃん」


そうか?それならいいのだが。そうしていると、母さんがジュースを人数分用意して、トレーに乗せて持ってきた。

そして、母さんは俺の方を見て少し驚いたような表情を浮かべた後、微笑みながら「似合っているよ、冬冴」と言ってきた。


「それじゃあ、始めるけど大丈夫か?」


そう言うと、やっと我に帰ってきた沙希たち。何をそんなに驚くことがあるのかは分からないが、もう始めても大丈夫そうだな。

そう思い、始めることにした。






次の投稿は今週の日曜日の予定です。

今度こそはちゃんと投稿します。

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