26話
遅くなってすみません。
ショッピングモールまで浜口に連れてこられた俺は一緒に中に入り、そのまま何故かゲームセンターに連れてこられた。
…お礼をするんじゃなかったのか?ただ遊びたかっただけじゃないのか。別にいいけどさ。
ゲームセンター来た俺たちだったが、早速西條がユーフォーキャッチをやり始めた。
…やっぱり、遊びたいだけだよな?
「はい、笹崎くん」
それから数分後、たったの1回でお菓子が詰め合わせられている物を取って、それを俺に西條が渡してきた。
何で俺に?
「お昼ご飯を奢るつもりだったんだけど、食べているようだったし、それにお金があまりないからこんなんじゃ駄目かな?」
そう言ってくる浜口に、頷く西條。
別に何でもいいんだけど、そんなことより西條が上手すぎないか?
たまに享と一緒に来ることがあったが、西條みたいに1回じゃ取れていなかったぞ。
西條からお菓子を受け取り、その後も西條が人形やらお菓子やらキーホルダーやらと色んな物を1回で取って俺に渡してきた。
もう充分だ。
西條に渡されたクッションは俺が使って、お菓子は皆で食べるとして、人形とキーホルダーは西條に悪いけど麻彩にあげよう。
「じゃ、笹崎くんにお礼もしたし遊ぼうよ」
「じゃあ、帰るか」
そう言って、帰ろうとする俺の服を掴んで引き止める。
ちゃんと、お礼も受け取って用事も終わったから帰らしてくれないか?
それと、浜口は何もしてないからな。
「まぁ、笹崎くん。遊ぼうよ」
そう言う、浜口と頷く西條。
……分かったよ。俺は少し考えてから遊ぶことにした。
「それで、なにして遊ぶんだ?」
「そう来なくっちゃ、では早速プリ○ラを撮ろう」
「それ以外で」
即答する俺に頬を軽く膨らませる浜口。 それから少し考えてから浜口が別の提案をしてくる。
悪いな、俺は写真に撮られたりするのはあまり好きじゃないんだ。
それから俺たちは西條の勧めで、太鼓の玄人やガンシューティングゲームをすることになったが、そこで俺は西條の意外な一面を見ることになった。
「上手いな。西條」
「まぁね、麻佑はゲームセンターにあるものだったら全部得意なんだ」
俺は太鼓の玄人で鬼レベルの曲を笑顔を浮かべながらフルコンボをしている西條を見て、そう呟くと浜口がそう言ってきた。
浜口はどうなんだ?そう思い、聞いてみると、
「あ、あはは。私は全然だよ。唯一上手いっていったらFPSぐらいなもんだよ」
「フリップ○イド?」
「いや、全然違うよ!FPSはファーストパーソンシューティングの略称でいわゆるシューティングゲームだよ。というか、よく知っていたね」
「まぁ、享がフリップ○イドが結構好きで、それで名前だけは聞いたことあるだけだ」
「へぇー、そうなんだ」
そんなことをしていると西條が俺たちの所に来て、次は俺にやってみたらって言ってきた。
…やったことないが、やってみるか。
俺は100円入れて、曲を選ぶ、その時に浜口に「やったことあるの?」と聞かれて俺は、
「やったことない。が、反射神経と動体視力はいい方だと思うから大丈夫だろ」
そう浜口に後ろを振り向かずに言うと、「そういうものじゃないよね?」と呟いているのが聞こえてきた。
俺は何がいいのか分からなかった為、前に享と舞彩の二人に連れてこられて、享がやっていた曲を選ぶことにする。
タイトルは『くれ○い』。そして俺は難しいを選ぶ。
後ろで浜口と西條が少し騒いだが、俺は曲が始まった為そっちに集中することにして、叩く。
やり方などは、享や舞彩がやっていたのを見ていた為分かるから、後はタイミングよく叩いて何とかフルコンボを達成した。
その後、もう一曲選ぶことが出来て、今度は舞彩がやっていた曲を選ぶことにする。
タイトルは『北埼玉2100』、これも難しいを選ぶ。結果から言うと、フルコンボは出来た。
その後、浜口達の方を見ると浜口は唖然とした顔をして、西條は何故か瞳をキラキラとさせていた。
…少し嫌な予感がするのだが。
「笹崎くん!一緒にやろうよ!」
西條が小走りで俺に近寄ってきて、俺の手を両手で掴んで俺にそう言ってきた。
「別に構わないが…」
「じゃあ、すぐ始めよう」
そう言って、ぐいぐいと俺を引っ張る西條。
俺はいきなり積極的になった西條に困惑しながら、浜口の方に顔を向けると、浜口は苦笑をしながら俺に近付いてきて、耳打ちをしてきた。
「ごめんね。麻佑は上手すぎてね。今まで一緒に出来るような人が居なかったんだよ。だから一緒に出来るような人が出て来てうれしいのだろうね」
「そうか?」
「うん。それにね、笹崎くんがさっきやっていた曲は全部難しい方なんだよ」
「だから麻佑の相手お願いね」って言う浜口。
…まぁ、そうだな。分かったよ。
それから10回くらい、計20曲の鬼レベルの曲を二人でやって、俺と西條はフルコンボをしていた。
鬼レベルは初めてやったが、何とかなって良かった。
太鼓の玄人の後は、ガンシューティングゲームをすることになり、ここでも俺と西條の二人ですることになり、俺のミスで全面クリアすることは叶わなかったが、7つぐらいのステージはクリア出来た。
コンテニュー画面の時に俺が西條に謝ると、「ううん、全然いいよ。笹崎くん上手かったよ」と生き生きとした笑顔を浮かべながら言った。
それから俺と代わり、浜口が西條と一緒にガンシューティングを初めて、6ステージ目で浜口のミスでゲームオーバーになっていたが険悪にならず、楽しそうにじゃれ合っていた。
そんな二人を俺は本当に仲が良いなと思いながら見ていた。
ガンシューティングの次は格闘ゲームをすることになり、最初は俺と浜口が戦い、俺が3ポイント先取して勝利し、次に西條と浜口がやって体力を減らすことなく3ポイント先取して西條が圧勝した。
…容赦ないな。
いじけている浜口をよそに、最後に俺と西條がやることになり、最初に俺が体力を半分くらい削られながらも1ポイント先取して、その次に操作ミスして2回続けて西條が勝った。
その次は、操作ミスをしないように集中して戦い、体力を削られることなく西條に勝ち、2対2となった。
駆け引きや読みでは俺の方が上手だが、西條の方が当たり前だがこのゲームを熟知していて、圧倒的に操作が上手い。
ひとつの操作ミスで体力を半分以上削られる。…よくここまで戦えたな、俺。
「さすが西條。上手いな」
「そういう冬冴くんも強い。駆け引きが上手すぎだよ」
そう言う西條。
…いつの間にか下の名前で呼ばれるようになっていたが、気にしないことにした。
それに、駆け引きが上手いのはじいちゃんに鍛えられたからな。
「楽しかった!」
そう言って、笑顔を浮かべる西條。
その後の勝負では、結果は俺が体力を少し残して西條を倒して、俺の勝ちとなった。
まぁ、満足してもらえたなら良かった。
勝負を終えた俺たちは今、それぞれが買った飲み物を飲みながらフードコートで休んでいた。
俺の横に西條が座り、その隣に浜口が座っている。が、その浜口は少しニヤニヤしていた。
何で浜口がニヤニヤしているのかは分からないが…西條、ちょっと近くないか?
俺の肩と西條の肩がちょっと当たりそうなのだが。
そんなことを思っていると、浜口が俺たちをからかい始めた。
「良かったね、笹崎くん。麻佑に懐かれて」
「いや、懐かれたって…」
「そうだよ。子供扱いしないで」
そう文句を言う西條だが、
「そう?初対面の人には人見知りして絶対に話しかけたり関わろうとせずに、自分が気に入った人にはスキンシップが多くなって笑顔を浮かべながら自分から話しかけてくるのは懐くとは言わないの?」
…懐くとも言うかも知れないが、やっぱり言い方だな。自分より年下じゃなくて同級生だし、仲良くなったでいいんじゃないのか?
まぁ浜口もそれが分かっている上で、西條をからかう為にわざとそう言っているだけかも知れないが。
「そ、そんな事無いよ!」
「だったら何で、最初に比べて笹崎くんとの距離が近いの?」
そう言われて、西條は俺を見てからハッとしたような顔をして、顔を赤くしながら椅子に座り直した。無意識だったのか。
そんな西條を見て、さらにニヤニヤとする浜口。
さっきの格闘ゲームで西條にフルボッコされたのを根に持っているのだろうか。
少しの間西條は浜口にからかわれ続け、最後には切れた西條に浜口が頬を思いっきり引っ張られていた。
浜口が西條に謝ると、西條は頬から手を離す。
浜口は頬を擦りながら、俺に話しかけてきた。
「充分楽しんだし、帰ろうかな?」
「そうだな、そうするか」
そういうわけで、席をたち俺が先に帰ろうとすると、浜口と西條の二人に服を掴まれた。
「帰るんじゃないのか?」
「いやいや、笹崎くん。確かにね帰ろうとは言ったけどさ、そこはほら…ね?」
…はっきりと言ってくれないか?ちょっと分からないのだが。要するにまだ帰らしてくれないということだろう。
「言いたいことがあるならはっきりと言ってくれ」
「プ○クラ撮ろうよ。一度だけで良いからさ。」
「撮ろうよ~」と言いながら俺の服を引っ張る浜口。西條は「駄目かな?」と聞いて来る。
……分かった。分かったから、服を引っ張るのを止めてくれ。駄々をこねる子供か。
周りの人から微笑ましい物を見るような視線と何故か妬ましいという視線を感じて、俺が折れた。
「やった。じゃあ、行こっか!」そう言いながら、浜口は俺と西條の手を掴んで歩き出した。
自分で歩けるから手を離してくれ。
プリ○ラの前まで来た俺たちは、空いている所に入り、俺が400円入れる。
後はよく分からない為、浜口たちに任せる。
設定を終えたのか、浜口と西條が俺に密着するように近付く。
「…近くないか?」
「こういうもんだよ?」
「そうなのか?」
「うん、そうだよ」と言いながら浜口はさらに俺に密着してきて、西條も少しだけ俺に引っ付くような位置を取る。
そういうものなら仕方ないか。
3回の内、2回はその位置で浜口たちはピースをしたりポーズを変えて撮っていたが、最後は何故か西條と二人で右腕と左腕のそれぞれに抱き付くような格好をしてピースをしていた。
思わず浜口達の方を向いてしまうが、すぐにカメラの方に視線を戻した。理由は後で聞くことにする。
撮り終わり、外に出て浜口が「驚いた?」と言いながら悪戯っぽく笑う。
西條は少し顔を赤くして俯いているが。
「少しだけな」
「う~ん、思っていた反応と少し違ったけどまぁ良いや。笹崎くん、ちょっと待っていてね。最後の仕上げをするから」
そう言いながら西條を連れて、後ろにあるデコレーションと書かれた所に入っていった。
少し気になるが、まぁ出来たものを見ればいいか。言われた通り、待とう。
俺が行っても分からないから何も出来ないしな。
数分くらい待っていると浜口たちが出来上がったものを持って戻ってきた。
「はい、これ。笹崎くんの分」
そう言って浜口に手渡された物を見ると、俺たちが写っていて、それぞれの下の名前が書かれていた。
背景は赤色で、星とかいろいろとデコレーションをされていた。
「ありがとう」
「お礼はいいよ、こっちこそ楽しかったし」
それから少し雑談をして、連絡先を交換してから浜口たちと別れた。
時計を見るともう午後6時前だった。もう少ししたら夕御飯の時間だし、早く帰ろうか。