24話
遅くなってすみません。
重たい空気が流れるなか、空気を読まない人物が部屋の中に入ってきた。
「いやー、久しぶりにいい汗をかいた!おっ、ユリウス帰ってきていたのか。薬は手に入っ…て、何で子供が二人も増えているんだ?」
上半身裸で豪快に笑いながら俺に話しかけて来るロドリゲス、しかしその途中にナーシャとニーニャに気付き、怪訝そうな表情を浮かべながらそんな事を呟いた。
「ナーシャ」
「うん」
ナーシャとニーニャは頷き合い、ナーシャとニーニャは杖を取り出して、ロドリゲスに近付く。
「な、何で怒っているんだ…って体が動かない!?ちょっ、本当に待っアーーーっ!」
ナーシャが魔法でロドリゲスを動けなくし、その隙にニーニャがロドリゲスを殴ったり蹴ったりと、母娘の見事なコンビネーションでロドリゲスをフルボッコにした。
…ロドリゲスの自業自得だし、少し空気を読め。
「なるほどな、そんな事が…」
皆に呆きられたような顔で見られるなか、ロドリゲスは鼻にティッシュを詰めながら正座をして、チャロットからさっきまでの事を聞いて、しきりに頷いていた。
まぁ、ロドリゲスのことはいいとして、
「ニーニャ、レイアの呪いを解く方法は本当にないのか?」
ニーニャにそう聞くと、ニーニャは少し目を伏せてから、俺とリリーアさんと順に見てから、
「無いことも無いけど…でも可能性は限りなく0に近いのよ」
「限りなくってことは0では無いのですよね?だったらお願いします。おしえてください」
リリーアさんが藁にもすがる思いでニーニャにその方法を聞く。
「分かったわ。なら今から私が言う素材を集めてきて」
そう言って、ニーニャは「『鳴く女の声帯、上薬草、魔草』を出来るだけ多く持ってきて」と言った。
分かった。鳴く女の声帯に上薬草、そして魔草だな。………ん?
何処かで聞いたこと、というか少し前に使ったことのある素材の名前に、俺はブックと呟いてから…見つけた。『聖者の鎮魂歌』に使われていた。
ロドリゲスたちが言われた素材を集めようと兵士を召集して、愚者の住む森に行こうとする中、俺はニーニャに聖者の鎮魂歌をイベントリから取り出してニーニャに聞く。
「なぁ、ニーニャ。お前が言っているのって聖者の鎮魂歌の事か?」
「そうだけど…ユリウス。よく知っているわね」
キョトンとしたような顔をして、聞き返してくるニーニャに俺は取り出した物を見せる。
「これの事よな?」
「…………何で持ってるの?」
俺が聖者の鎮魂歌をニーニャに見せると、目をゴシゴシトと拭いてからまた見て、それから俺の顔を見てからそんな事を言った。
まぁ、出来たから持っているんだが。自分でも何で出来たのか分からないし、都合が良すぎる気もするが気にしないでくれ。
「まぁ、良いわ」
ニーニャが呆れたような顔をしてそう言う。少し申し訳ない気持ちになりながらも、俺はレイアに聖者の鎮魂歌を渡す。
あまり話についていけてなかったレイアだったが、自分の命が後少しということだけが理解出来たのか、泣きそうな表情を浮かべてチャロットに抱きついていた。
「おにい…ちゃん?」
「レイア、これを使いな」
「え…でも、これはお兄ちゃんの」
「いいんだ。俺が持っていても使うことなんて無いだろうし、それに必要ならまた作ればいいだけだ」
後ろで「また作れたらそれこそ奇跡よ」とニーニャが呟いていたが、気にしない。
それでもまだ受け取らないレイアに俺は、
「俺のことは気にしなくていいから。リリーアさんたちを安心させる為にも使いなさい」
諭すようにそう言って、レイアを安心させる為に、柄にもなく俺は少し微笑んだ。
「…ぁ、ぅん」
レイアは顔を真っ赤にしてから小さく頷いて、聖者の鎮魂歌を受け取ってからニーニャに使い方を聞いて、使った。
その瞬間、部屋に綺麗な歌声が流れて、レイアと何故か国王が光に包まれた。
ニーニャに確認して貰うと、レイアの呪いはちゃんと解かれていた。
「良かったな。レイア」
レイアにそう言うが、レイアはチャロットの後ろに隠れてしまった。何でだ?
何で隠れてしまったのか、よく分からないが、まぁいいか。
そうしていると、国王が目を覚まして起き上がった。
「何で俺は、ベッドの上に寝ているんだ」
「あなた」
起き上がった国王にリリーアさんが抱きつく。
何でまだニーニャに解呪してもらっていない国王が起き上がったんだ?
もしかして、聖者の鎮魂歌は全体に広範囲に効果があるのだろうか?
そう思い、知っていそうなニーニャに聞いてみると、
「…そうね。確かに広範囲に効果があるわ。それに、あのままだった国王ではナーシャに渡された薬じゃ呪いは解けなかったからね。最初に言ったでしょ同情心からって。…まぁ今となってはその必要もないけど」
まぁ何にせよ、良かった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ユリウス、俺とそして娘を救ってくれてありがとう」
起き上がった国王…レイウスさんとリリーアさん、そしてレイアと一緒に客間に移動して自己紹介を終えると、そう言って頭を下げてきた。
「いえ、自分の出来ることをしただけなので気にしないでください」
「それでも救ってくれたのにはかわりない、ありがとう」
「私からもお礼を言うわ。ありがとう」
「ありがとう、お兄ちゃん」
3人からお礼を言われて、背中がむず痒しくなった。俺は頭をかきながら「分かりましたから、頭を上げてください」と言った。
「それでユリウス。お礼がしたいのだが何か欲しいものは無いか?」
「無いですね」
俺が即答で言うと、レイウスさんは驚いたような表情を浮かべて、
「そ、即答か。本当に何もないのか?」
「すみません、無いですね」
謝りながらそういうと、レイウスさんは困ったような顔をして、リリーアさんにどうしようかと相談していた。
「そうですね。今はありませんがまた出来るかも知れませんのでその時でもいいですか?」
「それは結局何も要らないってことじゃないのかね?」
「それはわかりませんよ」
俺がそう言うと、レイウスさんはため息をついてから、「無理に言っても無さそうだからな。こちらで用意しておく」と言った。
…まぁ、いいか。
それから少しレイウスさんたちと話をしてから最後に、「後で町全体にも伝えるが数日後に毎年恒例の運動大会を開催するから参加出来るなら参加してくれ」とレイウスさんが言った。
へぇ、それは楽しそうだな。俺もこの後は愚者の住む森に行って素材を集めてハイポーションを調合するだけだから参加するか。
客間から出て、ロドリゲスたちと一緒にお菓子を食べながら待っていたナーシャたちと一緒に城から出て、ロドリゲスたちと別れてから約束通り、ナーシャたちの街の案内をした。
ニーニャが特に興味を持ったのは、屋台の串焼きやアクセサリー類で、ナーシャはお菓子類のみ。
その途中でナーシャに他に何処か良い所無いと聞かれて、以前フリーデと一緒に行った店に連れていった。が…
「あ、ユリウスさん」
そこで、フリーデとルナと会った。何でまたここに居るのか分からないがまぁいいか。
「ユリウスさん、それでクエストは成功したのですか?」
ナーシャとニーニャをフリーデたちに紹介してから一緒に店の中に入り、注文をしてから品が届くのを待っている間にルナがそう聞いてきた。
フリーデはナーシャを抱き締めていて、ナーシャはニーニャに助けを求めていた。頑張れよ、ナーシャ。
「ん?あぁ、何とか成功はした」
「それで、どんなクエストだったのか教えてもらっても良いですか?」
まぁ後で分かることだろうし、教えてもいいか。だがその前に、
「ルナたちはいつまでこの町に居るんだ?」
「え?…そうですね、レベル上げをしてエリアボスを倒して次の町に行くまでですね」
そりゃそうか。というかまだエリアボスを倒せていなかったんだな。
アルトが居るからもう何度か挑んでいると思っていたのだが。
そう思ったが口には出さず、ルナに教えた。
「そんなクエストがあったんですね」
ルナはそう言うだけで、そんなに驚いていなかった。
「あまり、驚かないんだな」
「まぁ、ユリウスさんですから」
…俺だから驚いていないっていうことに釈然としない気持ちだが、まぁいいや。
それとフリーデはいつまでナーシャを抱き締めているつもり何だ?いい加減ニーニャも助けたら?
そう思い、ニーニャの方を見ると笑いを堪えるだけで助けようとしないため、フリーデの頼んだケーキも来たことだし俺が助けることにした。
「フリーデ、いい加減ナーシャを離したらどうだ?苦しそうにしているし、お前が頼んだケーキ来たぞ」
フリーデにそう言うと、テーブルを見てケーキが届いていることに気付き、ナーシャを離した。
離された瞬間ナーシャは俺の所に来て、後ろに隠れてしまった。
いや後ろに来るなよ、狭いだろうが。せめて横に座れよ。
そうしていると俺たちの頼んだ物もきて、食べながらルナ達と談笑をした。
ちなみに、俺が頼んだのは初めてきた時と同じのコーヒーにガトーショコラ、ルナがフルーツパフェでナーシャがお菓子の詰め合わせ、そしてニーニャがポークナポリタン。
…何でお菓子の詰め合わせがあるんだ?それもデザート一覧に。
まぁ、ナーシャが喜んでいるし誰もその事を気にしてないから別にいいか。
次話は来週の土曜日か日曜日に投稿予定ですが、もう少し早く出来たら早めに投稿しようと思っています。