21話
遅くなってすいません。ちょっと用事が立て込んでてなかなか執筆が進みませんでした。
次回はもっと早めに投稿する予定です。
それぞれ隠れる場所を探すために歩き始めた俺たちだが、俺は掌の上に乗っているノームに小声で話し掛ける。
「ノーム、お前は取り敢えず俺の服の中に入れるか?」
そう聞くが、ノームは少し不満そうな顔をした。何が気に入らないんだ?
不思議に思ったが、少しして気が付いた。
「もしかして、名前を付けてほしいのか?」
ノームはコクコクと頷いた。
…名前か。ネーミングセンスまったく無いのだがな。どうしようか。
こういうことはアルトが得意なんだが、まぁ考えるか。
……もういっそのことツチッコでいいか?土の妖精なんだし。
いや、やっぱりやめておこう。怒られそうだ。
それからさらに少し考えた結果。
「ノエルなんてどうだ?」
そう聞くと、ノーム…改めノエルは嬉しそうに頷いていた。気に入ってもらえて何よりだ。
話が脱線したが、作戦会議に戻るか。
「じゃあ、ノエル。服の中に入れるか?」
俺が聞くと、ノエルはコクと頷いて俺が手を動かして、自分の服に近付けると俺の服に飛び移りそして襟から服の中に入っていって、少しだけ顔を覗かせてきた。
大丈夫だな。それなら…
「ノエルはそのまま隠れていてくれ、そして―――」
作戦を伝えて、俺は合図が上がるのを待った。
それから少しして合図が上がり、俺は走り出した。一応ノエルが怪我しないように、安全な場所に隠れるようにしているが、何があるか分からないからな。
早めに終わらせた方がいいだろう。
気配察知をしながら、目に氣を込める。ナーシャが隠れるなら初めて会ったときのように、小さな歪みの中に隠れているはずだ。まぁ、何かしらの対処はしているだろうが。それに、駆竜の方は大丈夫だろう。俺の想像通りなら何とかなる。
そんな事を考えていると、駆竜とバッタリ出くわした。…タイミング良すぎだろ。
「GYAOOOOOOOOO!」
駆竜は咆哮を上げて、俺に突っ込んでくる。俺はそれを横に避けることでやり過ごす。が、駆竜はすぐに方向転換をして、俺に近寄ってきて、爪の攻撃をしてくる。
(やっぱり、思った通りだな)
俺はそう思いながら駆竜の攻撃を全てかわしていた。
理由は簡単だ。ナーシャは戦闘経験が浅いんだ。それにこの駆竜を操り始めたのも最近なのだろう。攻撃が単調過ぎる。だから簡単に攻撃をかわすことが出来た。
でもこのまま駆竜の相手をしていても埒があかない。隙を見て、この場から離れないといけないな。
駆竜が攻撃が当たらないことに苛立ったのか、大きく振りかぶってからの爪攻撃をしてきた。
チャンスだと思った俺は俺を腕に氣を込めて、受け流してから懐に入り込み、柔らかそうな部分を狙って氣を込めて殴り付けた。
少し浅かったのか、駆竜の体は三メートルくらいしか浮かばなかった。
まぁ、いいか。この隙に距離を取って、捜索を再開しよう。駆竜が居たということはこの近くに隠れているという可能性があるからな。
…今思ったけど、ナーシャは駆竜をどこまでなら離すことが出来るのだろうか?それが分かれば、大分楽にはなるのだが。
いや、今更そんな事を考えていても仕方ないな。自分の足で探そう。
ノエルが見つかる可能性は低いとは思うけど。
そんな事を考えながら、気配察知に意識を集中させながら駆竜に見つからないように隠密をしながら捜索をする。
早くみつけないとな。
●●●
「うぐぐっ、強いとは思っていたけどここまで強いなんて」
私はとある空間に身を潜めながら、駆竜…くーちゃんが見ている光景をモニターのようなもので見ていた。
そして、そのくーちゃんはお腹にダメージをもらって少しの間動けない状態だった。
「それに、やっぱりまだ私慣れていないんだよね」
私は一ヶ月くらい前にバンビーナ族としての成人の義を迎えたばかりで、まだ正式にはなっていないがお母さんに、というか族長に言われたこの見張りを三ヶ月間完璧にすれば晴れて一人前、成人として認められることになっている。
そうして、見張りをするのに一人は危険だからと、このくーちゃんを貰った訳だけど、少し前まで家でゴロゴロしたりお菓子を食べたりしていた私がいきなり戦闘なんて出来るわけないじゃないですか。
最初の一ヶ月間は本当に大変だったけど、少しは戦闘に慣れてきたから大丈夫だとは思っていたけど…こんな強敵の相手なんて初めてだよ。
というかユウお兄ちゃん本当に強すぎ。何で上の服を脱いでインナーだけの姿なのか良くわからないけど、それでも私のお母さん以上に強い気がするよ。
外の人たちは皆ユウお兄ちゃんみたいに強い人なのかな?それだったらちょっと怖いけど、それでもユウお兄ちゃんみたいに優しい人ばかりだったら…行ってみたい気がする。それに貰ったお菓子が美味しかったし、もっと食べたいな。
…まぁ、ユウお兄ちゃんが私に向ける目が幼子を見るようなのがちょっと気になりますが。
この見張りが終わったらお母さんに聞いて許可が出たら行ってみよう。
そう考えていると、くーちゃんが回復して動けるようになっていた。
私は念話のようなものでくーちゃんに指示を出す。まだ、簡易なものしか出来ないけどいずれ複雑な指示も出せるようなると思うけど、早くそうなりたいな。
ユウお兄ちゃんが今どこにいるのか気になるけど、探そうと思ったら1度くーちゃんに繋げているリンクを切らないといけないから今はユウお兄ちゃんのパートナーのノエルちゃんを探すことに専念しよう。
でもノエルちゃんは何処に居るのかな?体が小さいからそれを活かせる場所だとは思うんだけど…。そんな事を私は顎に手をあてながら考える。
はっ!
そういえばユウお兄ちゃんは上の服を脱いでいたよね?そして、始まる前にチラッとだけどノエルちゃんがユウお兄ちゃんの服の中に入っていくのを私は見ていた。
なら、そのユウお兄ちゃんの脱いだ上着の下に隠れているんじゃ無いのかな?
よし、くーちゃんにユウお兄ちゃんの上着を探すように指示を出そう。
私がくーちゃんに指示を出すと一声鳴き声を上げて駆け出し、そしてすぐに見つけた。すごく近いところにあって、何故か綺麗に畳まれて置かれていた。
ふっふっふっ、私は騙されないよユウお兄ちゃん。この下に居るんだね。私の勝ちだ!
そんな事を考えた時が私にも数秒前にありました。
勝ち誇るようにドヤ顔を誰にも見られていないことを良いことに浮かべてくーちゃんに上着をどけるように指示を出すが、上着をどけたその下にはノエルちゃんはいなくて、かわりにノエルちゃんがちょうど通れそうなくらいの大きさの穴が開いていました。
くっ、さすがユウお兄ちゃん。私が気付くことを前提にして予めノエルちゃんに別の作戦を伝えていたんだね。策士だよ。
でも、私は諦めないよ。この穴を掘っていけばくーちゃんの速度なら追い付けるはずだよ。
そう思いくーちゃんに穴を掘るように指示を出そうとしたところで誰かにローブを捕まれた。
……ものすごい既視感を感じるのですが、これってあれですよね。この暖かく、包容力のありそうで頭を撫でられたら気持ちいいだろうなと思わされるこの手の持ち主はユウお兄ちゃんですよね?
そう考えていたら外に引っ張り出されて、目の前にユウお兄ちゃんの顔が現れた。
「俺の勝ちだな」
こうして、ユウお兄ちゃんとの遊び…勝負はユウお兄ちゃんの勝ちで勝負がついた。
次回の更新は明後日か土日のどちらかの予定です。