19話
遅れてすみません。
チャロットがリリーアさんに国王の容態を聞く。
「それが、よくわからないのよ。4日前に倒れて、それで急いで治癒魔法を使ったりしたけど良くならないのよ」
そう言って、困ったような表情を浮かべる。
そこで、ふと俺は国王に鑑定出来ないか?と思い、国王に鑑定を使ってみる。
何か分かるかも知れないし。
…なるほど。
国王に鑑定が出来て、出てきた結果をリリーアさんたちに伝える。
「ちょっといいですか?」
「何ですか?」
「さっき国王様を鑑定をしたのですが、それで《呪い》と出ました」
そう言うと、リリーアさんたちは少し驚いたような顔をしてから真剣な表情になった。
「ユリウスさん、その呪いの名前まで分かりますか?」
そう聞いてきたリリーアさんに俺は頷き、
「《バンビーナ族の呪い》って出てます」
そう言うと、ロドリゲスが驚いていた。
「な、《バンビーナ族の呪い》だと!?」
「何か知っているのか?ロドリゲス」
「いや、知らん。なんだそれは?」
じゃあ知っているように驚くなよ。紛らわしいな。
少しロドリゲスにイラッと来たが無視をして、リリーアさんに何か知っていないか聞いてみる。
しかし、リリーアさんも知らないようで首を横にふる。
それから俺はチャロットやレイアにも聞いてみたが首を振るか、首をかしげるだけだった。
と、そこに1人の老人が中に入ってきた。
「そこの若者よ、ユリウスと言ったかの?さっき《バンビーナ族の呪い》と言わなかったかの?」
「言いましたけど…あなたは?」
俺がそう聞くと、老人ではなくリリーアさんが答えてくれた。
「夫の祖父でレイアス様ですよ。この国の前国王だったけど今は、引退してレイアの面倒を見てくれるので助かっています」
そう言いながら、笑顔で駆け出してレイアスさんに抱き付いているレイアを微笑みながら見ていた。
レイアスさんも抱き付いてきたレイアの頭を穏やかな笑顔を浮かべながら撫でていた。
膝を付いて、挨拶をしようとするとレイアス様が「畏まらなくても、そのままで構わんよ」と言ってきたから俺は立ったまま軽く挨拶をして話の続きに戻った。
「それで、レイアス様はバンビーナの呪いについて何か知っているのですか?」
レイアスさんは頷いて、
「うむ。バンビーナ族とは今は幻影の森…今は愚者の住む森に住む森に住んでいると言われている少数民族の呪いなんじゃよ」
「それで、その…夫は大丈夫なのでしょうか?」
リリーアさんが不安そうにそう聞くと、レイアスさんは神妙な顔をして、
「…落ち着いて聞くんじゃ、リリーア」
「っ!はい…」
「ワシも今ライガの容態を見たが呪いが大分進行しているようじゃ…だから、の」
そこまで言って、レイアスさんは1回言葉を切る。
リリーアさんたちは不安そうな表情を浮かべながらも言葉の続きを待った。
レイアは泣きそうになっている。
「あと、数日もしない内に…幼女になってしまうじゃろう」
…うん?
ちょっと待とうか。さっき何て言った?
「すみません、良く聞こえませんでした。もう1度お願いします」
リリーアさんたちも俺と同じ気持ちだったのか、レイアスさんに信じられないといった顔をしながら聞き返していた。
俺も顔には出してないが、同じような気持ちだ。
「あと、数日もしない内に…幼女になってしまうじゃろう」
…さっきとまったく同じ言葉をありがとう。
なんだよ幼女になるって。そりゃあ国王が死ななくてそれだけですむならいいのだが、だけどな。この俺たちのやるせないこの気持ちはどうすればいいんだ?
俺たちが何とも言えない顔をしている中、レイアだけ良く分かっていないのか、首をかしげていた。
そうしていると、ロドリゲスが話を変えるためにどうすれば解呪出来るのかレイアスさんに聞き始めた。
まぁ何にしても、このまま寝込んでいるというのも困るだろうし、何とかしないといけないだろう。
「簡単じゃ。愚者の住む森に行き、バンビーナ族が調合した薬を飲ませればいいだけじゃ。じゃが、バンビーナ族は普段は幻影魔法と言われるもので隠れて生活をしているからの、見つけるのは困難じゃ」
幻影魔法…聞いたことないな。
まぁそんな事は今はいいとして、どうやってそのバンビーナ族を見つけるかが問題だな。
俺の氣で見つけれればいいが、出来るか?
いや、やってみないと分からないな。出来なかったら出来なかったらで次の方法を考えるだけだ。
今更なんだが、何で国王はそのバンビーナ族の呪いを受けたんだ?
何か恨みを買うようなことをしたのだろうか。
そこに疑問を感じた俺はリリーアさんたちに聞いてみたが、リリーアさんいわく、国王は恨みを買うような人間ではなく、むしろ住民からは慕われているとのこと。
まぁ、いいか。国王の目が覚めれば分かることだろう。
そう思い、俺は愚者の住む森に行こうと部屋を出ようとするとレイアスさんが俺を引き止めて小さな袋を渡してきた。
中に何か入っているな。何だこれは?
「バンビーナ族に出会ったらその袋の中の物を渡すのじゃ。その中にはバンビーナ族の好物が入っているからの」
〈お菓子詰め合わせ袋〉
有名な菓子店の商品を入るだけ入れた物。女性から絶大な支持を得ている。
体重にはご注意を。
腐らないのか?そんな事を考えたが大丈夫なんだろう。
そう思いながらレイアスさんにお礼を言い、リリーアさんたちに見送られながら部屋を出ようとすると、レイアに引き止められた。
「お兄ちゃん…」
「何だ?」
俺の服を掴んだまま俯いてしまったレイア。俺はレイアが続きを言うのを待った。
少しして、意を決してレイアは俺に言ってきた。
「お父さんを、助けて!」
「ああ、任せろ」
そう言って、俺は今度こそ部屋を出た。
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城から出た俺はそのまま愚者の住む森に来ていた。
なるべく戦闘を避けるために【隠密】を使って気配を消し、氣を込めながら気配察知をする。
まだ、森の入り口に近いからか反応はない。進むか。
少しずつだが森の奥へと進んでいく。
そうしていると、いつの間にかつい先程来ていたボス部屋の前まで来たが、扉は閉まっていた。
そして、強面のおっさんたちの気配ももうしない。やられてはいないはずだ。たぶん逃げていると思う。
ボス部屋に入らず、ぐるりと回ってみることにした。
ただの勘でしかないが、ここの辺りにいる気がするんだ。それに、少しだがあの駆竜に違和感を感じた。何物かに操られているような…そんな気がするんだ。
だからその操っているであろう人物がこの近くにいて、そしてそいつがバンビーナ族の可能性が高いと思った。
それから少し歩いていると、ある一点に小さな歪みを見つけた。
本当に小さな歪みで肉眼では視認ができないほどだ。俺は氣で目を覆っていたから何とか見えた。
そして、俺はその歪みに近付いて手を突っ込んでみた。少し探ってみると、何かが手に当たりそれを掴んで思いっきり引っ張り出す。
「ほぇ?」
すると、サイズが全く合っていないダボダボのローブを身に纏い、大きすぎて少しずれてしまっているとんがり帽子を被った幼女がお菓子を片手に素っ頓狂な声を出しながら中から出てきた。