18話
遅くなってすみません
ユウフスベルまで何とか戻ってきた俺とレイアはそのままチャロットたちの店に向かう。
少し歩いてチャロットたちの店に来た俺たちは扉を開ける前に俺はレイアに声をかける。
「レイア、気を付けろよ。この中には魔が棲んでいる」
「魔…ですか?」
「あぁ、害はないが…確かにいる。気を引き締めろよ」
「はい!」
俺がそう言うと、レイアは真剣な表情をして頷く。
そして、俺は魔…変人と会う為、店の扉を開ける。
そして、俺たちを出迎えたのは…
「どうだチャロット、俺の筋肉引き締まってるだろう?」
「はい、あなた。とても引き締まっているわ」
そう言って、上半身裸でチャロットに見せつけるようにポージングをしている魔の姿とそれを見ながら優雅に紅茶を飲んでいるチャロットだった。
俺はその光景を見て固まってしまったレイアを隠すように前に立って、ロドリゲスたちに声をかける。
「なにやってるんだ、あんたたちは」
少し呆れるような声で言うと、俺たちに気付いたロドリゲスたちは笑顔を浮かべて俺たちに近寄ってくる。
そして、レイアは「ひっ!」と小さく悲鳴をあげて俺の後ろ隠れながら俺の服を少し掴む。
「ふふ、レイア久しぶり」
「あ、お姉ちゃん!」
そう言って笑顔を浮かべるがロドリゲスを見て、また俺の後ろに引っ込んでしまった。
「うーん、やっぱり怖がられているな」
そう言って、ちょっと困ったような顔を浮かべるロドリゲス。
「ロドリゲス…お前何やったんだよ」
「いや、何もしていないと思うが…それにあまり会う機会が無かったしな」
「そうなのか?」
ロドリゲスが頷いて、
「ああ、会ったとしても1回ぐらいで、その時ちょうど訓練を終えて汗をかいていたから服を脱いでいて、その時レイア様が珍しく外に出ていたから声をかけただけなんだが…」
…ロドリゲス、それが原因だろ。
それによく不敬罪にならなかったな、お前。
俺は呆れながらそう思った。
ロドリゲスに怯えてしまっているレイアに声をかけて、落ち着かせてから椅子に座ってレイアに事情を聞く。
「それで、何でチャロットに会いたかったんだ?それに聞かれて困るんだったら俺は席を外すが」
「困らないから、それだけはやめて」
席を外そうか?とレイアに聞くと、俺の服を掴んで必死に懇願してくる。
いや、必死過ぎだろ。そんなにロドリゲスが苦手か。
そんなレイアを見て、ロドリゲスとチャロットは少し驚いたような表情を浮かべてから苦笑した。
何でそんな顔をしているのか、ロドリゲスたちに聞いてみると、
「いやレイア様は人見知りで、まだ出会って間もないのにそんなに懐くのが珍しいからな」
「ふふふ、そうですね。レイア自身から寄るのは私たち親族と、世話をしてくれる使用人数名ですから。それ以外は怖がって近寄ろうとしないのですよ」
なるほどな。
確かに初めて会ったというかぶつかってしまった時は俺の顔を見てすぐに逃げ出したからな。
だから、レイアの事をよく知るチャロットたちからしたら本当に珍しいのだろう。
取り敢えず、このままじゃ話が進まないのでレイアに「分かったから、居るから続けてくれ」と言って、ホッと安堵するような表情を浮かべてから話始めた。
レイアが言うには、どうやら少し前にレイアの父親…国王が何かの病で寝込んでしまい、今もなお寝込んでいて一向に良くならない父に不安になったレイアがみんなに黙って城を飛び出て、チャロットの所に行こうとしたらしい。
この話を聞いて俺が思った事は、
「やっぱりこれ、俺が聞いちゃ不味い話だろ」
というか声に出てた。
だが、ロドリゲスとチャロットは俺の言った事に気にしていられないのか、真剣な表情を浮かべたまま考え事をしていた。
「ロドリゲス…」
「ああ、分かっている」
チャロットがロドリゲスに声を掛けるとロドリゲスは頷いて、
「すまない、ユリウス。俺たちはこれから国王様の容態をチャロットを連れて見てくる」
「別に謝らなくていい。当たり前の事だからな」
「え?お兄ちゃんは来てくれないのですか?」
そう言って、落ち込んだような表情を浮かべるレイア。
いや、流石に一般人の俺が城に入るわけにもいかないだろ。そうレイアに言うと、
「そう…ですね」
そう言って、俯いてしまった。
そんなレイアを見て、少し困ってしまった俺はチャロットの方を見る。
俺の視線に気付いたチャロットは「あらあら」と言って微笑んでから、
「別にいいと思いますよ。ねぇ、あなた」
「そうだな。それにユリウスは俺たちの恩人だからな」
いや、俺はそんな意味でチャロットたちを見たわけじゃ無いんだが、まぁいいか。
チャロットたちから許可が出たし、深く関わってしまったからな。最後までやるか。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あの後、「俺も行く」と言い、嬉しそうな表情を浮かべたレイアと、ロドリゲスたちと一緒にチャロットたちの家であり、この国の王が住んでいる王城の前に俺たちは来ていた。
近くで見ると迫力あるな、と俺はそんな暢気な事を思っていた。
レイアたちが俺の前を歩いて、城の中に入っていき俺もそれについていく。
その時一人の兵士と会い。
「あ、チャロット様お久し振りです。それと後ろにいるその者は?」
「私の知り合いです」
「そうですか、ゆっくりしてくださいね」
そう言って、俺に微笑んでくる。
…それでいいのか?
それと、王が倒れたというのに慌てていないのはどうしてだ?
そう思ったが、チャロットたちは気にした様子もなく、そのまま先を進んでいるから俺も気にしないことにした。
それから何度か兵士やら使用人やらとすれ違うがチャロットが俺を知り合いと言うだけで気にした様子もなく挨拶をしてくるだけだった。
それほど、チャロットは信頼されているということだろう。
まぁ、それでも深く追求してこないのはどうかと思うが。
そうしているうちに王が寝ているという寝室の前に来た。
チャロットがノックをすると、中から「どうぞ」という声が聞こえてきて、扉を開けてチャロットと一緒に中に入る。
…少しだけここまで来てなんだが、部屋の外でこのまま待っていようかと思ったが、レイアが「行こ?」と服を引っ張りながら言ってきて結局中に入ることにした。
中に入るとそこには、ベットで寝ている髭を生やした壮年の男性と、男性より少し年下であろう綺麗な金髪をゴムで纏めているきらびやかなドレスを着た美しい女性だった。
どことなくチャロットに似ているからたぶん母親だろう、そして、寝ている人が国王か。
「あら、チャロット帰ってきていたの?」
「はい、お母さん。久し振りです」
「それに、ロー君も一緒なのね」
「リリーア様、ご無沙汰です」
微笑みながらチャロットとロドリゲスに声をかけて、それから俺たちの方を見るリリーア様と呼ばれた女性。
だが、俺に話しかけてくる前にレイアがリリーアさんに駆け寄った。
「お母さん!」
「あらあら、レイア。何処に行っていたの?お散歩?」
リリーアさんに抱き付いたレイアにそう言いながら微笑んで頭を撫でる。
頭を撫でられたレイアは嬉しそうに顔を綻ばせる。
少しの間そうしてからリリーアさんは俺の方を見て話しかけてきた。
「それで、貴方は?」
「お母さん、この人はユリウスさん。とっても強くて、私の命の恩人です」
そう聞かれて、チャロットがそう答えて、俺は礼儀作法を全く知らないが、取り敢えず方膝を付いて、頭を垂れる。
「お初目にかかりますリリーア様、私はユリウスと申します。チャロット様は命の恩人とおっしゃいましたがそんな仰々しいものではございません。私の方が良くしてもらっております」
俺がそう言うと、リリーアさんは微笑みながら、
「ふふ、ユリウスさんそんなに畏まらなくてもいいわ」
そう言ってきた。
「頭を上げてください」と言われたから俺は頭を上げると、ロドリゲスが驚いたような顔をしていた。
「ユリウス、そんな事出来たんだな」
「まぁ、見よう見まねだがな」
挨拶も終えて、リリーアさんに事情を聞くことにする。