14話
ちょっと遅くなってしまいました。すみません。
「ルナさん!?」
フリーデが驚いたような顔をしてルナの方を見るが、俺はどうしようか考えている。
別に付いてくるだけなら良いが、でもフリーデと何かする予定があったんだろう?
そう思いルナに聞いてみると、
「いえ、私たちも何処かでスキルのレベル上げをする予定でしたので、それならユリウスさんと一緒でもいいと思いまして」
だったらアルトたちと一緒の方がいいんじゃ無いのか?パーティも組んでいるのだし。
そうルナに言うと、
「それが…今日アルトさんたちは用事があるらしくて、一緒に出来るのがフリーデさんしか居なかったのです」
だが、そのフリーデが何か言いたそうにしているぞ?いいのか?
俺はそう思いながら、ルナに何も言うなと言わんばかりに口を押さえられて「んー!んー!」と呻いているルナを見る。
俺の考えを察したのか、にっこりと微笑んで、
「良いです。フリーデさんはこのままで」
そうですか。でも、取り敢えず押さえている手を離した方が良いと思うぞ?フリーデが苦しそうにしているから。
それから慌ててフリーデの口から手を離したルナは涙目になって「ルナさん、きらい」と呟いているフリーデを一生懸命に宥めて、何とかなった。
俺はその間、ルナの自業自得なので何もせずにコーヒーを飲んでいた。
「それで、良いですか?」
ルナは何事もなかったかのように、そう聞き返してきた。
…まぁ、どっちでもいいからいっか。
「わかった、良いぞ」
「本当ですか!」
そう言いながら身を乗り出してくるフリーデ。…何故ルナではなくお前が反応するんだ?フリーデ。
俺が不思議そうな顔をしてフリーデを見ていると、フリーデは顔を真っ赤にして身を引いて、顔を手で覆って、丸くなった。
恥ずかしかったのは分かったから止めなさい。他の客から変な目で見られているだろうが。
ルナはルナでそんなフリーデを微笑みながら見ていた。
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それからすぐにルナがフリーデに何かを言ってそれを聞いたフリーデは飛び起きて、ルナを竹ホウキで叩き始めた。
ルナとフリーデの仲が良いのは分かったから今すぐフリーデを止めろ。他の客の迷惑になっているから。
会計を済ませた俺たちは愚者の住む森に来ていた。
「それで、ユリウスさんは何の素材を探しているのですか?」
「ハイポーションに使う素材だな。後は適当に何か調合に使えるものだな」
俺がそう答えるとルナはちょっと驚いたような顔をして聞いてきた。何をそんなに驚いているんだ?
「もう、次の街に行かれたのですか?」
どう言うことだ?と思いルナに聞いてみたところ、ルナが言うにはハイポーションは次の街に行かないと素材とレシピがないらしい。
…ロドリゲス。お前、今度あったら覚えておけよ。
まぁ冗談はこのくらいにして、ユウフスベル周辺で取れる素材でハイポーションを作れるのがあるのだろう。じゃないとあんなクエストは出ないだろうし。…出ないよな?
「いや行っていないが、何とかなると思う」
俺がそう言うと、ルナは「そうですか」と言ってから緊張気味のフリーデに声をかけ始めた。
アルトみたいに何か聞いてくると思ったんだが、何も聞いてこないんだな。そう思いながらも、口には出さないが。
緊張気味のフリーデは少し気になるが、俺が何か言うよりはルナの方が良いだろうと思い、俺は氣を使いながら気配察知をする。
そうしていると、ある程度落ち着いたのかルナとフリーデが俺に声を掛けてきた。
「もういいのか?」
「はい、もう大丈夫です」
そうだな。俺から見ても大丈夫そうだ。
まぁ、あまり戦いに慣れてない人だったらよくあることだから俺はあまり気にしていない。
フリーデが落ち着いたのを確認してから俺たちは愚者の住む森の奥に進んでいった。
そして、進みすぎて大きな扉を見つけた。なんだこれ?
「これってボス部屋の扉ですよね?」
「そうですね。どうしますか?」
いや、何で俺に聞く。
「いや、入らないからな」
そう言うと、ルナとフリーデが驚いたような顔をした。何でだ?
「そこにボスが居るんですよ?本当に入らないんですか?」
「入らないな。俺の目的は採集だからな、それにそういうことはアルトたちとすればいい」
ルナにそう聞かれて、俺はそう答えた。
それを聞いたフリーデは少し嬉しそうにして、ルナは安心したような顔をした。
「いえ、アルトさんだったら入っているので」
ルナがそう答えて、フリーデはうんうんと頷いている。まぁ、アイツだったらそうするだろうな。
それに、ルナたちの顔を見るからして何の準備もしていないのに入ったりするんだろうな。
「次の街に進むのにボスを倒さないといけないのですが、それでもちゃんと準備してからにしてほしいです」
どうやら俺の考えは当たっているようだった。
苦労しているんだな、ルナとフリーデは。頑張れよ。
俺たちはボス部屋の扉を素通りして、採集をしたり、ルナたちのレベル上げをしたりした。
その途中で鳴く女と1回戦うことになったが、アルトの言う通りめんどくさい相手だった。
ウッドパペットが来るわ、ルナとフリーデは動けなくなるわで散々だった。
俺?俺は氣を耳に集めて耳栓代わりにしていたから何とも無かった。
そうして、ほぼ俺一人で鳴く女とその他を倒すと、鳴く女がドロップを落としていた。
〈鳴く女の声帯〉
モンスター鳴く女の声帯。声を聞いた者をバインドしたり状態異常『混乱』にする。
また、最悪の場合死に至る時もある。
いや、何に使えばいいんだこれ?
扱いに困るが取り敢えずイベントリに入れておいた。
戦闘が終わり、ルナとフリーデたちが落ち込んでいた。別に落ち込まなくても良いと思うがな。
俺は落ち込んでいるルナとフリーデを励ますことにし、ルナとフリーデに近付いていると復活した。
いきなり顔を上げるから思わずビックリしてしまった。
「大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。それにいちいち落ち込んでいても仕方ないと思ったんです」
そう言うルナたちの表情はさっきの落ち込んでいる顔が嘘のように引き締まっていた。
俺はそんなルナたちに感心しながらも声には出さずに、「じゃあ、行くか」と言って歩き始めた。
ルナたちもその後を慌てて追いかけてくる。
それからある程度、採集とルナたちのレベル上げが終わったら愚者の住む森から出てユウフスベルに戻ってきた。
それに、鳴く女たちとの戦闘で、結構スキルレベルが上がっていた。
【体術】Lv25【錬氣】Lv32【瞑想】Lv11【並列思考】Lv15【気配察知】Lv22【隠密】Lv14【身軽】Lv28【調合】Lv5【鑑定】Lv17【採取】Lv16
ユウフスベルに戻ってきた俺は、ルナたちと別れて工房に向かった。
さて、ハイポーションを頑張って作るか。