1話
vrmmoものの小説を読んでいたら書きたくなったので書いてみました。
この作品は不定期更新です。
「おい、聞いているのか冬冴」
まだ、寒さが残る4月のこと、高校二年生になった俺…笹崎冬冴は母親が作ってくれた弁当を食べていた。
「あ?さっきからうるさいな」
「ちゃんと聞いていないお前が悪い」
さっきから俺の目の前でパンの食べかすを散らしながら騒いでいるのは俺の悪友である灯神享と言って、超が付くほどのゲーマーだ。
別にゲーマーなのはいい。趣味なんて人それぞれだから。
だけど、それを毎日「昨日こんな事があったんだ」とか「このゲーム面白いからやってみ」って家にまで押し掛けてくるのはまじでやめてほしい。
それと、パンのカスを飛ばすな。
こいつは顔は割りと整っていてかっこいい方なのにこういうところがあるからモテないんだと思う。
「それで、何の話だ?」
「だから、お前もnew life online…略して新しい人生って言うVRMMOのゲームやるよなって聞いているんだよ」
VRMMOものか…別に俺もゲームは嫌いじゃ無いからやってもいいんだけど、一応ヘッドギアも妹もゲームが好きだから一緒にやろうという事で父さんが俺の誕生日の時に妹におねだりされて買ってくれたからあるけど、いかんせん高いんだよなソフトが。
それと突っ込まなかったけど、それは略しているんじゃなくて和訳しているだけだからな?
その略を考えた奴、略すって意味知っているのか?
「別にやってみてもいいが金が無い」
「安心しろ!俺はそのゲームの元βテスターでいい成績を残したから無料で一個貰えるんだよ。それで、それをやるから一緒にやろうで?」
「いいのかって…まぁ、これは愚問だな。わかったよやるよ」
すると、享は「っしゃあ!」と雄叫びを上げながらガッツポーズをしていた。
何で喜んでいるのか知らないが、周りから変なものを見るような目で見られているから早く止めろ。
それからある程度落ち着いた享に一応妹もやっているのか聞いてみた所「あぁ、俺が冬冴にこれをすすめたのは舞彩ちゃんに頼まれたからなんだ」と言われた。
因みに、舞彩とは俺の妹の名前。それと何でこいつがガッツポーズしていたのか瞬時に理解することが出来た。
まぁ、ここでは家族の恥を言うのが嫌だから言わないが。俺の為、そして妹の名誉の為。
「じゃあ、このあと俺の家にソフトを取りに来てくれ」
俺はそれに軽く頷くだけで応えて、残りの弁当を口に掻き込んだ。
それにあとで聞いたのだが、正式にサービスが始まるのは明日の昼の12時かららしい。
ちょうど明日は土曜日で次の日は学校がその日も次の日も休みだ。あいつらの事だから廃人よろしく徹夜をしまくるんだろうなと俺は思った。
まぁ、俺はのんびりとソロプレイを楽しむつもりだけどな。
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午後の授業も終わり、放課後になって俺は享と一緒に帰っていた。
「まず始めにこのnew life onlineは完全なスキル制のゲームだ」
と、ついでにこれからやるゲームのシステムについて教えて貰っていた。
が、俺は基本的にゲームをやりながら理解していくタイプの奴だから聞いていると見せかけて聞き流していた。
聞いていないのがばれるとまた騒がしくなるから「へー」とかで適当に相槌をうちながら。
そうしているうちに享の家に着いていて、享の家の前で誰かが待っていた。
俺はその見覚えのあるシルエットに軽く目頭を押さえながら。
「あ、お兄様、享さんお帰りなさい」
なんだよお兄様って。始めて呼ばれたわ。
「何でいんの?」
「なんとなくこの時間に帰ってくるかなっと思って」
こいつの勘は相変わらず当たるなー。それと、答えになっていないことに気付いているか?
まぁ、それもどうでもいいや。疲れた。
「享、取り敢えずそのソフト持ってきて」
「分かった」
そう返事をした享は、ソフトを取りに自分の部屋に向かった。
享がいなくなったのを見届けた舞彩は俺に抱きつこうとしてきた。
が、俺は横に避けてそれをかわす。
「何でよけるの?」
「何で避けちゃいけないの?」
質問に対して質問で返す。
「そこにお兄様がいるから!」
「まず、そのお兄様という呼び方を止めろ」
鳥肌が立つだろうが。
「わかったよ、おにいちゃん」
「残念そうな顔をするな。それで、何で享がnew life onlineだっけ?それを持っているって知っていたんだ?」
舞彩に頼まれたの辺から何で舞彩が享がソフト2つ持っているのかを知っているのか聞いてみた。
「そりゃあ、もちろん私もβテスターだったからね」
「なるほどな」
だから享が持っているのを知っていたのか。この際はいつの間にβテスターやっていたんだという質問はしない。分かりきった答えが返ってくるからだ。
「私だけじゃなくてお姉ちゃんもやっているよ」
「姉さんもか…」
今更だが、家の家族構成を言おうか。
まず家は五人家族で、一番上の姉で結香その次が長男の俺で、その次が末っ子の舞彩だ。
父親である煌呀は仕事で海外に出ている。因みに何の仕事をしているのかは未だに知らない。
母さんは楓で、専業主婦をしている。生活費は父さんが銀行に振り込んでいるらしい。
それで、今回話題に出た姉さんは妹と同じくゲーム好きで少し家から離れた大学に通っているため一人暮らしをしている。
まぁ、姉さんは頭がいいからゲームをしていても何の問題はないだろう。
と、そんな会話を舞彩としていると享がソフトを片手に持って戻ってきた。
「ほら冬冴」
「サンキュー」
渡されたソフトを持って、享と少し話をしてから舞彩と一緒に家に帰った。
家に帰ったら母さんが洗濯ものを入れているところだった。
少し高いところにあるため、母さんが精一杯伸びをしてしまおうとしている。
身長が150㎝の母さんには少しきつそうだ。
「手伝おうか?」
「あ、冬冴お帰りなさい。手伝わなくて大丈夫だよ」
「まぁ、いいから」
手伝いを拒否する母さんをほっといて残った洗濯ものを全部いれる。
「いいって言ったのに…」
「まぁまぁ、たまにはいいじゃないか」
洗濯ものが入ったかごを持って母さんと一緒に中に入る。
少し不満そうな顔をしていたが見た目が中学生にしか見えないためあまり怖くない。
こんな姿なのに今年で39歳には見えないな。よくて中学生くらいだ。
母さんにそう言うと説教されて、拗ねられるけど。
いい歳した大人が頬を膨らまして、「ふんだっ!」って言いながらそっぽを向くのはどうなんだろうか?
それと、そのあとに小声で「これから大きくなるし」と、言わないで。もう成長は止まっているから。
「冬冴、いらないこと考えてる?」
「気のせいだろ」
女の人って何でこんなにも勘が鋭いのだろうか?
思わず冷や汗が出た。
と、母さんと話していると、リビングについたからかごを置く。
母さんはそのまま夕御飯を作るために台所にいった。舞彩はソファーに座ってテレビを視ていた。
俺は着ていた制服を脱ぐために部屋に戻った。
制服からラフな格好に着替えた俺は母さんが「ご飯出来たよー」と呼んだから一階に降りた。
今日のメニューはご飯に唐揚げにポテトサラダだった。
ご飯を食べ終えてお茶を飲んで一息付いていると、舞彩が母さんに「明日、昼からゲームしたいから少し早めにご飯作って下さい。お願いします」って言って頭を下げていた。
母さんは舞彩がゲーム好きなのを知っていたし、前にも同じようなことがあったから苦笑いを浮かベて「分かった。でもちゃんと勉強はするんだよ?」って言っていた。
ついでに俺も苦笑いを浮かべていた。
「よっし!なんか新しい情報がないか見てこよっと!」
そう言いながら舞彩は二階に素早く上がっていった。取り敢えず俺もnew life onlineは誰が作ったのか調べようかな?
やっぱり止めた。楽しめればそれでいいし、興味がないや。
時計を見ると午後9時を回っていた。そろそろ風呂入って寝ようかな。
台所で洗い物をしている母さんに「風呂入ってくる」と伝えて風呂に入り、風呂から上がった俺は時計をみて9時30分になっていたから二階に上がって少し勉強をしてから寝た。
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朝の6時に目が覚めた俺は一階に降りて顔を洗い動きやすい服に着替えてランニングするために外に出た。
朝のランニングは少し緩急をつけながら10キロ位走る。
走り終えたらいつも朝の7時になっていて汗をたくさんかいている。
朝のランニングを終えた俺はシャワーを浴びてさっぱりした。
そして、この頃には母さんも起きていて朝ごはんを作っている。
「おはよう、母さん」
「冬冴、おはよう」
寝起きの母さんの寝癖は少しすごいことになっている。それにまだ眠たそうだ。
冷蔵庫からお茶を出してコップ注いでお茶を飲みながら朝食が出来るのをイスに座って待つ。
母さんより酷い寝癖をしたまま舞彩が降りて来た頃に朝食が出来た。
朝食のメニューはご飯に味噌汁、焼き魚だ。やっぱり朝食はこれだよね。
まだ眠たそうにしている母さんに変わって俺が洗い物をする。
舞彩にやらせればいいと思うかも知れないがあいつは駄目だ。
家事なんて一つも出来ない。唯一出来るのは俺が教えた掃除くらいなもんだ。一人の女子としてどうかと思うが出来ない物は仕方がないだろう。
洗い物を全部済ませて、少し部屋で勉強をしていると11時になり、母さんが約束通り少し早めに昼ご飯を作っていて食べることになった。
因みにメニューはチャーハン大盛。手を抜いたんだね、母さん。
ちゃちゃ、と昼飯を食べ終えた舞彩は「部屋で精神統一してくる」という意味の分からないことを言ってさっさと自分の部屋に戻ってしまった。
おい、舞彩よ。家事は出来なくてもせめて自分の食器くらいは自分で流しにもって行けよ。
母さんも同じ事を思っていたのか、「こら舞彩。自分の食器くらい自分で持っていきなさい!」って舞彩の部屋に向かって怒っていた。
その後母さんはため息をつきながら洗い物を始めた。俺も手伝おうとしたが、母さんが「いいよ。冬冴もゲームしたいんでしょ?」と言って断った。
それにおれは甘えることにして、自分の部屋に戻った。
因みにソフトのインストールと設定はもう昨日のうちに済ましてある。
これから始めるゲームに少し思いを馳せているといつの間にか12時になっていて、ヘッドギアを着けてベッドに寝転がった。
そして、俺の意識が暗転した。