表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/24

「私があちらに移ると、あなたがこちらに来てしまう。それでは意味がないのです。」

「私があちらに移ると、あなたがこちらに来てしまう。それでは意味がないのです」


 レドに言われ、チビは首をひねった。


「どういうことだ?」


 ですからね、とレドは幼子に噛んで含めるように、忍耐強く説明をする。

 

 数あるドラゴン種の中でも魔力、体力、知力とともに高い能力を持つブラックドラゴン種。生まれたばかりといってもいい幼子のチビは、そのブラックドラゴン種だ。同僚であるマッグとマリィの子どもで、自分にとってはかわいい甥っ子。

 いくら基礎値が高いといえ、子どもにはしつけと教育が必要なのは人間の子も同じ。ふつうは親であるマッグとマリィが魔力を与え孵化させて育てるのだが、両親は共働きであるし、そもそもチビは人間の手によって孵化されている。人間の魔力を吸収して孵化したチビには、もう主人マスターがいる。

 チビの主人のメルサとかいう少女は、マグダラス魔術学院の見習い魔女だ。まだまだ若く未熟だが、おいしそうな魔力の質をしていた。将来有望ってやつだろう。


(まあ、一番はパウル様だけどね。)


 レドは人間の一存でパートナーのパウルとともに教育係に任命されてしまった。


(小娘は、別室でパウル様と個人レッスン……!)


 そう考えるとレドは胸がちくちく痛む。

 マリィと双子で生まれたレドは、孵化してすぐに親に捨てられた。双子というだけで珍しく親には嫌がられるのに、レドはブラックドラゴンらしくない白い体で生まれたから。

 野生のドラゴンならそこで死んでいただろうが、飼いドラゴンだったのが幸いしてヴィンセント家の長子と同じ歳で家同士仲の良かったパウルの家にもらわれ、人の手によって育てられた。

 パウルの手のひらのサブレを食べ、パウルの肩に乗り散歩をし、パウルを背中に乗せて飛ぶ。

 レドはパウルとともにある今の暮らしが大好きだった。どれくらい好きかというと、もし自分が人間だったらパウルと結婚したいほど。でもそれでは今のようにパウルと寝食ともにずっと一緒ではいられない。

 仕事のパートナーとしてパウルに認められていることがなにより嬉しいのだから。

 


(早く合同レッスンができるまでにチビをしつけなくっちゃ)


 決意も新たにレドは、いまだ無駄に後ろをついて回ろうとする好奇心旺盛なチビに『姿勢を正してじっとしている』ことを教えるのだった。


6話の設定を一部変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ