第7話 綺麗な髪
久我お爺様はスパルタのようにみえて?
今回は髪についての回です、違うかもしれませんけど。
久我家に行ってから早くも2ヶ月という月日が経ちました。
その間何があったかというと……久我のお爺様に稽古される為にほぼ毎日久我家に行っておりました。
「大丈夫よ華憐、交通手段は魔導車があるから問題ないわ!」
というお母様の言葉に軽い眩暈を覚えてしまいながらも渋々行くことに私は決めました。
理由としては雪姉が同行してくれるから気分的にまだマシだったのが一つ。
もう一つはなんというか……お爺様が嬉しそうだったというのが理由だったりする。
とりあえず初日みたいなあんな恐ろしい事を毎日やってくる事はないだろうと予想して通うことしばらく。
基礎的な身体作りの修練をした後に刀の振り方、持ち方を教えられ。お爺様自身への打ち込み等を実践させられ、初日のあの恐怖修行らしき物は一切なかったという気持ち的には拍子抜けした感じでした。
刀術修練の時間が終わり屋敷に戻ったら私は魔術の本を読んだり、気になった事が載ってる本などを読む事にしていた。この世界の知識や魔術の知識などは早い時期から覚えていて損は無いという私自身の考えからこのような行動をする事にした。
それでも根を詰め過ぎると心配されるのでほどほどに勉強する事にしている。
そういった事を続けているうちに2ヶ月が経ち、渋々だった刀術修練も今では進んで頑張ろうという気持ちになっている。
「華憐様は久我のお爺様との刀術修行が楽しみのようですね」
夕食を食べ終え、自室で魔術の本を呼んでいると雪姉がそんな事を言ってきた。
「楽しみ……という事は無いかな。あれを楽しいとは絶対に思えないよ」
最初の頃は今思えば楽しかったかもしれないが、ある程度身についてからは刀術を扱う厳しさやそれを相手に行った結果どうなるかなどの5歳児に教えて判るのかコレ……っていう事が多くなった。
「な~に、華憐は年の割にはしっかりしているようじゃからな~判るじゃろ?な?」
などと言われて色々と叩き込まれてしまった。確かに判らない事は無かったし色々と言われたけど結局は覚悟を持って技術を使え、という事だと思う。
この世界には魔物と呼ばれる存在が居る事を私はお父様の書斎にあった冒険者の事が書かれていた本から知ってしまった。
魔物は遺跡や魔窟など”ダンジョン”もしくは”魔物界域”と呼ばれる場所に生息しており。力の弱い魔物たちはそこから出てくる事はほとんどないとされている。
それでもたまに出てくることがある為身を守る術ぐらい身につけておこうと思ったのがこの2ヶ月での私に与えた最も大きい変化だと思う。
「あのお方は華憐様に教えるのがすごく楽しそうですけどね」
「あ~……それは間違いないと思う」
私は厳しく教えながらも楽しそうに見えるお爺様の姿を想像して苦笑いを浮かべる。
「華憐様もここしばらく魔術の勉強をされていますし、私の方から一つお教えしようと思うことがあります」
雪姉が真面目な顔でこちらを見るので私も真剣に聞く姿勢で待つ。
「私がお教えするのは新しい魔術ではなく根本にある魔力などに由来する知識です」
「魔力に由来する?」
「はい、強い魔力を持つ者や特異な魔力を持っている等、何かしら特殊な人は絶対ではありませんが人体が影響を受けて変化する事があります」
雪姉の言葉に私はハッとして反射的に自分の髪に触れる。
私のその仕草を見て雪姉はコクリと頷いて続きを話し始めた。
「それは髪の色が変わったり瞳の色が変わったり等他にも変化があるようで様々です。更に意識的に切り替えれる、ある行動を切っ掛けに変化するなど様々なケースがありますね」
そういって雪姉は話を終える、単に知識として覚えて欲しいだけではなく暗に私自身に起こっている変化がソレだと告げているのだ。
私は自分の机の上にある写真立てを見る……お父様とお母様、お兄様とはまったく違うアクア色の髪色を持つ私、一家揃って黒色の瞳なのに私の瞳は金色……この変化が意味する所はつまり――
「私は何かしら強い魔力か、変わった力を持ってるって事かな?」
「おそらくは……単に魔力が強いか、蓄えれる魔力容量が最初から大きい為に変化している事もあります」
なるほどな~それで私だけこんな感じになっちゃったと……納得。
「ありがとう雪姉、ためになりました!」
「それは良かったです」
私の返事に雪姉は少し微笑みながら返事を返してくれた。
その話を聞いて私は雪姉の髪を見る、雪のように真っ白で綺麗だなと何度も思う。
「それに、私は華憐様の髪は好きですよ」
いきなり雪姉にそんな事をいわれて私は一瞬固まってしまい、直ぐに顔が赤くなるのを感じた。
うぅ~こうなったら私も仕返しするしかない!
「ゆ、雪姉の真っ白い髪も綺麗で私も好きだよっ!」
どうだ!雪姉も顔を真っ赤にして――
「ありがとうございます、嬉しいですよ」
笑顔で言われてしまった……あれ?もしかして私が単に恥ずかしがり屋さんなだけなの??
そんな事ないと思うんだけどな~?
「華憐様?」
「はぁい!?」
考え事をしてるうちに雪姉が近づいて声を掛けてきたようで思わず聞こえた近くの声に驚いてしまった。
「……はぁ~、今日の華憐様は可愛い反応をしますね」
え?何かうっとりしてませんか雪姉?
それにあの、その伸ばして来ている両手はなんでしょうか?
「華憐様、どうしたのですか?後ろにお下がりになって……」
「あっと、その~……ど、どうして雪姉は近づいてきたのかな?」
私は反射的に後ろに下がってしまったようで、その行動を不審に思われた雪姉の発言からつい聞き返してしまう私。
「それは……あれ?どうしてでしょう?」
「ゆ、雪姉?」
「すみません華憐様、何やら無意識に近づいてしまったようです」
「う、うん。それなら仕方ないわね」
どうやらいつもの雪姉に戻ったようです。よかったよかった。
ふと机に置かれた時計を見れば22時過ぎてるじゃないですか!寝ないと!
「雪姉、良い時間だから私はそろそろ寝る事にするわ」
「判りました、それではお休みなさいませ華憐様」
「雪姉もお休みなさい」
私はベッドに入って雪姉が外に出ていく音が聞こえてから少し経つと直ぐに眠気がやってきたのでそのまま眠りに就いたのでした。
今日もいい夢が見れるといいなぁ。
少し雪姉さんの様子がおかしくなっていました。誰のせいでしょうね?
今回はやや駆け足ではありますが2ヶ月の月日が流れています。
久我お爺様はスパルタに見えて優しそうでやっぱりスパルタだったみたいですね。
そして魔物の存在が明かされました。主人公まだ5歳児なのに!!