第3話 ちょっと違う世界
ファンタジー要素がちらちらと顔見せを開始するのと 説明話です。
家族に会った途端に泣いてしまった事を今考えると非常に恥ずかしい気持ちと申し訳ない気持ちになってしまう。
それぐらい嬉しかったのだけどお父様にお母様、それにお兄様にはなんで泣くのか判らなかっただろうからそこが申し訳ない。
理由を聞かれたけど本当の事は言えるわけもないので皆が居なくなる怖い夢を見て家族の顔をみたら安心して泣いてしまったみたいな感じになりました。
朝食の席でお兄様が両親のことをお父様、お母様と呼んでいたので私もそうする事にした。
そう呼ぶと何故かお父様がしょんぼりとした顔になって「パパってもう呼ばれないのか……」とかなり本気で落ち込んでいた。
こちらの世界でのお父様は私を本当に可愛がっているようです。
お母様の方は気品のある振る舞いなど上品な感じになってましたが、それ以外にも何かこう……前の私では怖すぎる何かを隠してそうな印象があった。
お兄様は今年で10歳になったという事から前の世界と同じく5歳離れだった、ということからやはり瓜二つや他人とかではなく、前の世界とちょっと違う部分が追加されたように感じる。
その違う部分がまず家柄。庶民だった筈の我が一家は相当格の高い名家という事になっていた。
゛七条゛という苗字が゛七條院゛になっても仕方ないと割り切れるぐらいの名家っぷりである。
まず我が家に執事が居る、この人は七夜雷堂さんという外見からみるとナイスミドルな人なんだけど、祖父の代から執事をしてて七條院家に無くてはならない人のようです。
しかし祖父の代から執事しててまだお爺さんじゃない外見なんだけど……どういうことなの?
私はほとんど雷堂さんと話す事もないからまだ全然人となりは判らないや……
そして私を起こしに来てくれた雪音さん、フルネームは白崎雪音って言うんだって。
名前の通り雪のように白くて綺麗な髪のお姉さん、なんでも三年前から私専属のメイドとして雇われたそうです。
それ以外にメイドさんというとお兄様に一人付いてる人を見かけたのとお掃除メイドさんが何人か居るぐらいで思ったより少なく感じた。
小説で見たメイド長みたいな人って居ないのかなーと考えていたらどうやらお母様がその役割をこなしているようで、メイドさん達に指示を出して自分まで色々とやっていましたよ。
七條院家の朝食は私たちのみで食事をするのだけど昼食はメイドさん達も含め皆で食べる事が多いから私はこの時間が大好きだ。
夕食時も皆で食べる、でも執事の雷堂さんはよくお父様の後ろに控えていて食べてないことがほとんどだったりする。
「そういえば華憐もそろそろ学園に通うのよね、楽しみだわー」
などとお母様に言われたとき最初は学園の何が楽しいのだろうと思っていたけど、よく考えたら今は病弱な身体ではなく健康体だからそんな学園生活を思うと、無性に楽しみになってしまった。
「それなら華憐もこういった本を見るといいな」
などと言ってお父様から渡された本の題名を見て驚きの余り呟いてしまった。
「まじゅつのこころえ、しょしんしゃへん?」
一瞬お父様は娘に何を期待しているのだろうかと思った、魔術だなんて将来手品師にでもなれというのかしら。
そんな事を思いながら部屋に入って本を開いてみると私が思っていた魔術とは全く違った物がその本には書かれていた。
ファンタジー世界で魔法と呼ばれる現象を行使する為の内容がそこには初心者向けなだけあって、丁寧に優しくびっしりと書かれていた。
それを見て私は思った、我が七條院家は5歳児にこのような本を読ませるほど教養が高いのか、と。
雪音さんに聞いてみたら魔術の授業は小学校に入ってから習うのが普通らしいです。
「お嬢様のお父上も読めるとはさすがに思っていないでしょうね」
そんな事を苦笑しながら言ってくれた。
しかし困ったことに私は一応18年分の経験と知識がある為にこの本を読めるし内容もまあ……理解できないわけではないけど。
実際にやれといわれても本当に可能なのかなコレ?っていうのが本音です。
そしてこの初心者編に書かれている内容で見えたエルフとかドワーフとかっていうファンタジーお約束な名前が見えたとき、私の知識と経験はあってもさほど意味を為さないのでは?と思い始めました。
そんなこんなで魔術の勉強をしている私ですが、判ったのはこの世界の魔術は火水風土雷の五元素魔術に水魔術の亜種に該当する氷魔術、それと光魔術と対になる闇魔術があってそれらに分類されない特異な魔術も存在する、ということらしい。
その特異な魔術として幅広く知られているのが治療魔術と強化魔術の二つであって、これらは非常に有用な為任意に広めているんだって。
確かに傷を治療したり自分の能力を強化できるなら便利だよね。
魔術の種類や属性を頭に入れてから魔術の発現方法の項目を読み始める。
せっせと読んでいると大体発現方法は理解できた。
「体内に魔力が流れているのを認識して、イメージする……」
本によれば魔力は勝手に体内を循環しており、その流れを掴むのが自身の魔力を認識するという事らしい。
私は目を閉じて自分の魔力を感じようと試みる。
少しして力の循環を感じ始めた、なるほどこれが魔力の流れなのかな。
後はイメージするんだったかな、そうして私は自分の目の前に炎が出来るイメージを創造する。
眼を開けずにやってるものだから実際に目の前に炎が浮いてるかは判らないけどなんとなく自身に流れている力が弱まった気がした。あ、もしできてて爆発でもしたらどうしようなどと考えたところで。
ガタンッ!と後ろで音が鳴り驚いてしまう、それと同時にこ気味いい破裂音が聞こえ。
「あっつぅ~!?」
私は額に火傷でもしたんじゃないかという熱さに襲われ……って実際に熱いよ!?しかも触ると痛いし!どうなってるの~!?
「お、お嬢様!!大丈夫ですか!?」
「雪音!?一体どこに居たの?それよりも熱痛いんだけど……ど~なってるの!?」
私がまったく状況を理解出来ないでいると雪音がそっと私の額に手をかざし、一呼吸してから暖かい光が放たれ始めた。
それから少しすると徐々に私の額にあった熱さや痛みが引き始めた。
「これって、治療魔術?」
「そうですよ、お嬢様もう少し動かないでくださいね」
「う、うん」
私は雪音の言葉に返事を返して大人しくする事にした。
痛みも直ぐに無くなり傷も消えましたよと雪音に言われて私は額をさすった、確かに触っても痛みも火傷の後もなかった。
「まさかお嬢様が本の内容を正確に理解して魔術を発現なさるとは思いませんでした」
それで思わず音を立ててしまったらしい。その反動で私の集中力が途切れたのと余計なイメージをしてしまったせいで暴発したそうだ。
炎が出るまでのイメージだったらその場で消えてしまったらしい。うん…怖いイメージをするのはやめておこう。
こうして私の初めての魔術発現は終わったのだった。
ようやくファンタジー要素が顔見せを開始しました。
この調子でいけば色々な要素がアップを開始しました的な流れになりそうです。
しかしスムーズに華憐は魔術を発現する事ができましたね。
実際ほかの人がどうかというと……?
そこは追々的な流れで。
しかしプロローグでは病弱キャラ設定だったけど今ではもう……