終詩
終詩:求めていたもの
一
私は何を求めているのか
分からない
湧いてくる衝動に従いながらも
善悪を判断しつつ
必要ならあえて破る
それを繰り返してきた
手にしたと思えば
手から離れてゆく
自分が求めていたものが
触れてみると違っていた
私が求めているものは
どこにあるのだろう
二
必死に駆け抜けても
先にあるのはなんなのか
成功という賞賛か
失敗という貶めか
分からない
だけど駆けていく
あえて問う
その先にあるのは
なんだろうか
三
両腕を伸ばして
太陽を望みながら
大地よりも深い
深海へと身体は
堕ちていく
深く深く
沈んでいく身体
どこまでも
ただひたすらに
底なる地面に
重力に引かれながら堕ちていく
私が求めていたのは
太陽なのだろうか
沈んでいきながら
私は考えていた
四
「貴方が求めているのは何」
「何を求めているのか分からない」
「貴方は後ろを振り向いたことはあるのか」
「後ろを振り向いたことは一度もない」
「なら後ろを振り向いてみるといい」
「そうすれば求めていたものが分かるのか」
「それは分からないけれど
やらなければ永遠に分からないまま」
「分からないままは嫌だ
後ろを振り向いてみよう」
私は誰かの声に従い
後ろを振り向いてみた
五
後ろを振り向くと
一人の女性がいた
「貴方は頑張ってきたね
疲れたでしょ?
少し休んで頑張っていこうか」
女性の言葉が
空っぽの器を
私が求めていたものを
満たしていく
私は理解した
求めていたものが
なんなのかを
私はただ
自分を認めて欲しかった
だけだったんだ
理解した瞬間
心地良い眠気が
私の身体を包んでいく
眠気に抗うことをせず
眠気に従うように
意識を睡魔に委ねた
《終》
作者が過去に書いた詩です。