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ラベル
あの子「初めまして」の後、
名前とか、どこどこに住んでるとか、
聞いたそばからラベルを張って、
スーパーマーケットの商品棚みたいに
きっちり「私」を陳列したの。
話しかけたってもう
横目でちらりで終わり。
蓋を開けて中身を詰めたりしないのね。
「私」はただの売物で、あの子は店員。
そうして「私」の空っぽの容器を
どこかの誰かに売りつける気なの。
ラベルだらけの「私」は
まるで中身が入っているみたい。
飛ぶように売れてしまうのね。
あの子のスーパーマーケットに
嘘っぱちのラベルはないみたいだけど、
そんなの濡れたシール。
安売りされた空っぽの「私」は
ラベルの痕を気にしながら、
目の前の子が蓋を開けるのを待つの。
中身はなんだっていいわ。でも、
できればママレードジャムを詰めてよ。
「私」は「私」は「私」は「私」は、
水洗いも要らないからって
リサイクルに出されるばっかり。
あの子は棚に並べるだけましかしら。