ぶくぶく
やっと息をした お前
歌を忘れたのか 声ごと失ってしまったのか
空腹ならばこちら 口に合うものもあるだろう
好きなものを好きなだけ そうだ運べ 満足するまで
もし あなた
あの人はそうして
あなたを ママゆずりの美しさを 食い荒らすつもりですよ
お逃げなさい 私に皿をよこしなさい
椅子がミニチュアになるまえに
やっと見つけた お前 どこへも行くな
お前は人魚だから医者にかかれない そうだろう
心配するな 声が戻るまで俺が面倒を見る
ああ あいつはお前の皿が欲しかっただけだ
心配するなよ
お客様 ここは通せません
特別な部屋へご案内します
海がお好きだと聞きました
どうぞ こちらへ部屋の中へ
窓から海が見えますでしょう
柵はほら 落ちないように
間違いが起きないようにです
我々は命令に従うべきです
ねえ あなた いい部屋を使っているわね
どこへも行く必要がないような部屋
音がよく響くから ほら 手を叩くだけ
大声で召使いを呼ぶ必要もない
どうして逃げなかったの あなた
かわいい子 かわいい子 窓から顔を見せて
ああ こうして会えるのだから寂しくないわね
かしこい子 かしこい子 海から見守っているわ
そうよ 陸でだって達者に暮らせるわ
やっと落ち着いたか お前
尾ひれや声を失って 俺のもとへ来た足
この足に見合うものは なんだ
かわいそうな お前 こんな足では 海へ帰れない
かわいそうな お前 泣き声も出せやしない
俺はお前が恋しかったが
お前に似合っていた 尾ひれや声がいっとう恋しい