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殺さない授業
教室は明確なルールと空気に満ちているから
ノートにペンを突き立て自分を殺している。
赤い色は痛い、青や緑もじわじわくる。
だから蛍光ペンが揃う。オペ室のメスみたいに。
机の上で開く。白くてなにもない。
医者じゃないから
重要なところだけ、って出来ない。
カサブタはすぐ消えるけれど、
痛いものは痛い。
あとどれだけ続ければいい?
筆圧が弱いのは、せめてもの本能。
教卓で開かれるショーは凄惨。
あの人、人の答案だからって
あんな赤いペン使って!
でも、誰も彼も黙っている。
赤や青や緑。あんなに痛そうなのに、
平気みたいでなんともない。
きっと麻酔を手に入れたんだ。狡いよ。
似たように書いているのに、
いつまでたっても麻酔が効かない。
ノートは俯瞰すると白くてなにもない。
蛍光色にしたからかな。なにもないみたい。
閉じた後の名前だって薄いのに
チャイムの音は驚くほど染みる。