有能の一端。
その後、小話。のっけからR15です。たぶん。
※食べ物描写にもしかすると、苦手要素が含まれるかもしれません。爬虫類とかオドロオドロしたものが苦手な方は回避ください。お話はお話として突き放していただけると 大変 嬉しいです。
コチラの小話で苦情を寄せられても、責任は負いかねます……先に謝っておきます。申し訳ありません!
誰しもがあることを、彼女は寝台の上で長くグネグネとした彼の上に裸で跨がっていた最中に口にした。太さのある白い雄〔おとこ〕の尾が細い腰に巻きついている。
部屋は薄暗いが、夜ではなく……どちらかというと日が昇ってそれほど時間は経っていない頃だった。
昨晩から、断続的に体力を消耗するその行為に没頭していたから、発想はわかる。
解るのだが、しかし。
今、この時に言うべきことかと傍から見ていた者がいたとしたら……いや、いないんですけどね。そんな人。いたらどんな苦行(失笑)程度に彼女たちの生活は 異常 に上手くいっていたのだ。
傅〔かしず〕く者と、傅かれる者。
ピタリ、と嵌まったパズルのピースのように人間の(ハズ)の彼女と、魔族の(ハズ)の彼は互いに求め合う形が一緒だった。
だから。
この時も、彼は嫌な顔をしなかった。少し中断されたことが残念そうではあったけれど、彼にとって 番い からのお願いは愛の言葉に匹敵する甘美な響きである。
「 苺大福が食べたい! 」
謎の単語に、首を傾げて上にある美しい人間の雌〔おんな〕を仰いだ。
ツヤツヤとした黒髪がサラリと裸の肩を滑って、ふくよかな胸の二つの膨らみに降りる。濡れた宝石のような黒の瞳が強く輝き、ぷるりと弾力のある赤い唇が「食べたい」と象るのを眩しそうに眺めると訊いた。
『イチゴダイフク?』
人型ではない時、声ではなく思念が伝わる。この姿に声帯がないせいだ。
「そうじゃ! 今、急に頭に浮かんだのだ。妾の国の食べ物ではないが、国交のある遙か遠い島国が持ってきた名産品でのう……大層美味であったのだ。特殊な食材ゆえ、なかなか口に出来ないのがまた良くて……こう、妾の欲をたまらなく刺激するお主のような菓子じゃ」
『僕、みたい? 食べたい、の、ですか?』
「そうじゃ」
こくり、と頷くと妖艶に微笑む。
「まわりはモチッとした皮での、中には甘い餡と甘酸っぱい実が入っておる。これくらいで丸い」
手で大きさを示し、くるりと丸く円を描く。表情は恍惚としている。
「 わかりました 」
長くグネグネとした本性から人型になり、体を持ち上げた彼は慇懃に告げると散らばった衣服を素早く身につけ始めた。
そうして出来た、シエン特製 魔界風 苺大福はエリルご用達の定番デザートになった。
本来、白いはずの餅の皮は魔界の餅米に似た穀物の色を反映して淡いピンク色になったが、中の餡はほっこり白くてなかなかに良く出来ている。
ただ、ちょうど良い甘酸っぱい実が魔界では「実」ではなく「目玉」だった。
……モリミズチの目玉(←緑色)である……出てきたシュールな「目玉大福」に、
「くっ、ふはは……気に入った!」
コレが番いの、第一声。もちろん、味はグルメな彼女のお墨付きで大変美味――らしい。
今の季節を逃すと、いつ出せるかわからない時候ネタです。
ご気分を害されていないことを願うばかり(汗)。