高校生・2年・春・公園
その姿を見たとき、俺は激しい怒りを胸にしまい込みながらも、どうしようもないくらいの同情を抱いた。なぜ、と問われたら、答えは一つしかないだろう。
光星を殺した人物とは、スノさんだったからだ。
「あ……」
「どうしたの、お兄さん」
青い世界。空と海に挟まれた地面と呼んでよいのか分からない地に崩れ、彼は涙をぼろぼろと流す。そんな彼に何があったのか、竜也の弟は問う。
「そんな、雪、裏切り……」
「雪? 女性の名前?」
雪、それが何を示す言葉かは分からないが、お兄さんが信用していた人なんだろうと、竜也の弟はぼんやりと考える。そこで気づく。なぜ、ぼんやりしていたのか。お兄さんが倒れた。自分には、いったい何が。
「死んだ」
「誰が?」
「オレの、オレの……弟が……」
「……」
瞬間的に覚る。ああ、それが僕に現れた異常の、原因か、と。
光星の身体は冷たくなっていた。俺は光星に駆け寄り、どうしようかと考えていたが、スノさんが指を鳴らすと光星は光となって消えてしまったため、立ち竦んでいた。
「ふふ、不思議でしょう?」
スノさんの笑みが、とても怖かった。
「どうして」
「どうして? ああ、光成君のことかい?」
光星以外に何があるのかと思った。この人が、光星を殺した。消えた。同情を抱いたのは、ときどき悲しい笑みを見せるスノさんだからだろうか。自分でも分からない。なぜ、同情した。
「あなたは、本屋にいたんじゃ……」
「ん、本屋?」
そう、青い石を壊したあと、本の整理をしてくると言って、店の奥に消えていった。そのとき、スノさん自身が、また明日と言ったのだ。なぜ、なぜ来た。なぜ殺した。
「うーん、なんか勘違いしているね」
「は?」
「わたし、本屋なんて知らないよ」
頭の中がぐちゃぐちゃになって、気持ち悪くて、ぼーっとして、スノさんがスノさんじゃないように見えて、いきなり走り出して、拳を振り上げて、スノさんを、スノさんを……!
「殺す、殺してやる」
スノさんの口が歪んで、ゆっくり動く。
「何言ってるの、君には無理だよ」
そこからは何も覚えていない。
「お兄さん、本当に、死んだの?」
「……ああ」
「教えて。雪って誰、何? どうして、お兄さんの弟は死んだの? なぜ、僕はこんなところにいるの? どうしたら、元の世界に、兄貴のもとに行ける?」
「……」
「教えて」
「……雪……この世界の、人物で、今は向こうの世界にいて、君たちの世界でいうところの、スノという人物の鏡で、オレの弟を殺した奴」
「僕が本来いるべき世界にいるスノって人の、この世界の人物?」
「ああ、そうだね……鏡なんだ。殺されたオレの弟の鏡が、君で。向こうの世界にいる君の兄貴の鏡が、オレだ……」
「鏡の向こう側が死ぬと、どうなるの?」
「そうだな……なんていうかな、こう、ぼんやりと……ぼーっとするかな。鏡だから。片方が悲しくなると、もう片方も悲しくなる。でも、変なこともあってね。真逆になったりすることもあるよ」
「どうして、お兄さんの弟は死んだの?」
「雪が殺したんだ。あいつは、光成を殺したんだ……」
中途半端でごめんなさい。