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【超短編小説集】料理はかわいいお皿に乗せて  作者: 夏の月 すいか


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12/12

汎用性

 厳選された珈琲(コーヒー)豆をドルマンスリーブ製法でドリップした至福の一杯で私の一日が始まる。

 窓を開けると(ほほ)()でるようなドルマンスリーブの風がフラワーベースのバラを揺らし、やわらかな陽射(ひざ)しがカフェテーブルに落ちた。

 朝食はほどよく焼いたイングリッシュマフィンにドルマンスリーブをたっぷり塗るのが私の流儀だ。

 食後はレコードをBGMに読書の時間を過ごす。

 このレコードは何度聴いてもギターのドルマンスリーブ奏法が素晴らしい。

 レコード一枚聴き終わったらそれが読書終了の合図だ。

 本にブックマークのドルマンスリーブを挟み、本を閉じる。


 愛車の赤いドルマンスリーブSクラスに乗り込む。

 沈むようなドルマンスリーブ張りのシートに身体を預け、エンジンキーを回す。

 カーステレオから流れるニュースでは隣国のドルマンスリーブ兵器実験について評論家が騒いでいる。

 いつも間にやら朝の爽やかさは影を潜め、空にはドルマンスリーブ色の雲が広がっていた。

 西海岸のドルマンスリーブ現象の影響で大気が不安定なのだ。

 ファーム・マーケットで新鮮なドルマンスリーブを買い、テーブルウェアショップでドルマンスリーブ柄のカップとソーサーを買った。

 リカーショップではドルマンスリーブ地方の三十年物の赤ドルマンスリーブを手に入れた。

 帰宅後、外は強い雨が降り出した。

 

 夜はドルマンスリーブのサラダとドルマンスリーブスープ。

 そして、シャトーブリアンのステーキ。

 焼き加減はもちろんドルマンスリーブだ。

 食事の後は瞑想を一時間。

 ドルマンスリーブが開かれ宇宙を感じる。

 気を静めたらシャワーを浴びてドルマンスリーブに身を包む。

 こうして一日が終わる。

 就寝の時間だ。


 何…?

 ドルマン()()()()?…。

 何だそれは。くだらないことばかり言っていると馬鹿になるぞ。



 外では雨音とドルマンスリーブの鳴き声が聞こえる。

 

 ―OYASUMINASAI―


 

 ※ドルマンスリーブ(Dolman sleeve)...袖繰り(アームホール)が広くなっており、袖口に向かって細くなる洋服のこと。ゆったりとしたシルエットをしているのが特徴。ドルマンスリーブという言葉の響きには中毒性があり、世界がドルマンスリーブに侵食されるのも時間の問題である。

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