汎用性
厳選された珈琲豆をドルマンスリーブ製法でドリップした至福の一杯で私の一日が始まる。
窓を開けると頬を撫でるようなドルマンスリーブの風がフラワーベースのバラを揺らし、やわらかな陽射しがカフェテーブルに落ちた。
朝食はほどよく焼いたイングリッシュマフィンにドルマンスリーブをたっぷり塗るのが私の流儀だ。
食後はレコードをBGMに読書の時間を過ごす。
このレコードは何度聴いてもギターのドルマンスリーブ奏法が素晴らしい。
レコード一枚聴き終わったらそれが読書終了の合図だ。
本にブックマークのドルマンスリーブを挟み、本を閉じる。
愛車の赤いドルマンスリーブSクラスに乗り込む。
沈むようなドルマンスリーブ張りのシートに身体を預け、エンジンキーを回す。
カーステレオから流れるニュースでは隣国のドルマンスリーブ兵器実験について評論家が騒いでいる。
いつも間にやら朝の爽やかさは影を潜め、空にはドルマンスリーブ色の雲が広がっていた。
西海岸のドルマンスリーブ現象の影響で大気が不安定なのだ。
ファーム・マーケットで新鮮なドルマンスリーブを買い、テーブルウェアショップでドルマンスリーブ柄のカップとソーサーを買った。
リカーショップではドルマンスリーブ地方の三十年物の赤ドルマンスリーブを手に入れた。
帰宅後、外は強い雨が降り出した。
夜はドルマンスリーブのサラダとドルマンスリーブスープ。
そして、シャトーブリアンのステーキ。
焼き加減はもちろんドルマンスリーブだ。
食事の後は瞑想を一時間。
ドルマンスリーブが開かれ宇宙を感じる。
気を静めたらシャワーを浴びてドルマンスリーブに身を包む。
こうして一日が終わる。
就寝の時間だ。
何…?
ドルマンスリープ?…。
何だそれは。くだらないことばかり言っていると馬鹿になるぞ。
外では雨音とドルマンスリーブの鳴き声が聞こえる。
―OYASUMINASAI―
※ドルマンスリーブ(Dolman sleeve)...袖繰り(アームホール)が広くなっており、袖口に向かって細くなる洋服のこと。ゆったりとしたシルエットをしているのが特徴。ドルマンスリーブという言葉の響きには中毒性があり、世界がドルマンスリーブに侵食されるのも時間の問題である。




