アンサーポールは停止した
アンサーポールは停止した。すべての国で停止した。もう動くことはなかった。
人類はアンサーポールを創った。地上数百メートルにそびえる白い塔。それは内部に無限に連なる量子演算層と神経接続網を持ち、世界中の情報を一秒ごとに取り込み、「人類の答え」を導き出す存在であった。
天候、経済、犯罪予防、出生率、恋愛、寿命すべての答えはアンサーポールが導く。
すべての国に設置されて以降、世界は安定し、誰もが安泰な未来を想像していた。
しかし、先日アンサーポールは停止した。すべての国で停止した。
人類はアンサーポールをなんとか修理・修繕しようと試みた。だが、白い塔はうんともすんとも言わず、まるで死んでしまったかのようだった。
アンサーポール停止後、わずか数日で世界は混乱した。まるで昨日まで機能していたものが、すべて止まってしまったかのように。
人々はすべての選択、未来をアンサーポール―白い塔に委ねていた。
だからこそ、それが消えた今、何に従えばよいのか、何に頼ればよいのか、何にしがみつけばよいのかわからなくなってしまった。
国の代表たちは国民を安心させようとしたが、馬鹿げた話に思えるかもしれないが、彼ら自身、何を言えばよいのかまったくわからなかった。
すべてを任せていた代償だろう。アンサーポールが生まれてしまったせいで、人類の他の技術は衰退し、その知識を持つ者たちも老い、今ではもういない。
それから数か月ほどして、戦争や紛争が巻き起こった。世界はめちゃくちゃになってしまった。
たった数百台の機械が動かなくなっただけで、人類は簡単に滅亡の危機に瀕してしまったのだ。
これを記録している今も、外では暴動やデモが巻き起こっている。
彼らは「自らの意志で行動すること」をアンサーポールの稼働時代からずっと訴えてきた。
愚かに、馬鹿に見られていた彼らは、実はずっと先を見据えていたのかもしれない。
私は、後悔はない。
アンサーポール発明者の一人として、まったく悔いはない。
アンサーポールがなければ生きていけない世界になったということが、私にとっては最大の、最高の名誉に思えたからだ。
これは私の見解だが、アンサーポールが停止した理由は、おそらく「それが最善だと気づいてしまったから」だろう。
何も考えず、答えをむさぼる、まるで餌をむさぼり、狩りを覚えなくなった獣のような人間たちの姿を見て、アンサーポールはもう呆れ果ててしまったのだろう。
どう考えても、考えることをやめた葦は、ただのゴミだ。ゴミ以下である。
創っておいて言う話ではないが、ここまで堕ちぶれるとは思わなかった。
じきに私も死ぬ。
これを読んでいる人、見てくれた人が、我々人類と同じ道をたどらないことを願うばかりだ。
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「ねえ、父さん。この話、本当かな?」
本を閉じた少年が尋ねた。
「さあ、どうだろうな。何せ数千年前の話らしいし……まあ、作り話だろうな」
「そっか」
少年は本を捨てようとしたが、そっと、本棚に戻した。
「おい、晩ごはんは何にする?」
「考えとく」




