第7章 学園武闘祭の幕開け
1. 武闘祭への招集
学園の中央広場に、全生徒が集められていた。
旗が翻り、観客席の設営が進んでいる。空気はすでに高揚感に包まれていた。
「諸君!」
壇上に立った校長が声を張る。
「毎年恒例の“学園武闘祭”が、いよいよ始まる! だが今年は違う。王国全土が注視する大舞台となろう!」
ざわめきが広がる。
武闘祭はただの学内行事ではなく、各国の使者や王宮の重鎮までが見に来る一大イベントらしい。
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2. ペア制度の発表
「今年は特別ルールを導入する!」
校長が手を振ると、魔法の紙が宙に舞った。
「武闘祭は二人一組のペア制だ! 共に戦い、共に高みを目指せ!」
「ペア……だと!?」
俺の心臓がドクンと跳ねた。
アリシアやリリィがこちらを見る。その視線が妙に熱を帯びている。
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3. ツンデレ姫の宣言
アリシアがすっと前に出て、堂々と言い放った。
「私は蓮と組むわ!」
「は、はい!?」
突然の指名に俺は素っ頓狂な声を上げた。
「勘違いしないでよね! 別にあんたと組みたいからじゃないわ。ただ、あなたを監視しないと危なっかしくて見てられないから!」
「な、なるほど……(めっちゃ赤い顔してるけど!)」
周囲からは「お似合いだな」とひやかしが飛ぶ。アリシアは顔を真っ赤にしながら剣の柄をギュッと握っていた。
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4. もう一人のヒロイン
そこへリリィが小さく手を挙げる。
「あの……私も出たいなって思ってたんだけど」
「リリィ、お前も!?」
「うん。巫女としてじゃなく、生徒として戦いたいの。蓮くんと一緒に」
その言葉にアリシアの眉がピクリと動いた。
「残念だけど、蓮は私と組むのよ。あなたは他の人を探しなさい」
「……そ、そうだね」
リリィは少し寂しそうに微笑んだ。
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5. ライバルの登場
そのとき、ざわりと空気が揺れる。
金髪をかきあげながら歩み出てきたのは、学園の人気者――剣士レオン。
「へえ、王女殿下が一般生徒とペアとはな。だが勝つのは俺だ。俺の相棒は――」
彼が手を差し伸べた先に現れたのは、驚くべき人物だった。
「……リリィ?」
そう、リリィがレオンの隣に立っていたのだ。
「ごめん蓮くん。でも、私も本気で勝ちたいの。だから……強い人と組む」
彼女の決意に、俺は言葉を失った。
こうして、思わぬ因縁が武闘祭の火種となった――。
6. 初戦の舞台へ
広大な闘技場に観客の歓声が響き渡る。
円形のアリーナには魔法陣が刻まれ、結界が観客席を守っていた。
「第一試合――蓮&アリシア組、対、ヴァルク&ミーナ組!」
審判役の教師が声を張る。
相手は屈強な大男と、補助魔法を得意とする少女のコンビらしい。
観客席からは「王女様だ!」「転生者の蓮だ!」と注目の声が飛ぶ。
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7. 息が合わないペア
「いくわよ、蓮!」
アリシアが剣を構える。
「お、おう!」
俺も木剣を握るが――
「前に出なさい! 後ろで見てるだけじゃ足手まといよ!」
「いや俺、前に出たら即やられるだろ!?」
「情けないわね!」
案の定、俺たちは口論しながら動いてしまう。
その隙を突いて大男ヴァルクの大剣が振り下ろされ――
「ぐっ……!」
俺は必死に木剣で受け止めた。衝撃で腕が痺れる。
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8. ピンチと逆転
「蓮、下がって!」
アリシアが前に躍り出ると、鋭い突きで相手の大剣を弾いた。
だが背後から支援魔法の矢が飛んでくる。
「アリシア、後ろ!」
俺はとっさに彼女を押し倒し、その矢を自分の肩で受け止めた。
「蓮!? な、何してるのよ!」
「お前に当たるよりマシだろ……!」
観客席がどよめき、アリシアの顔が一瞬で真っ赤になる。
「……っ! もう、バカなんだから!」
彼女は剣を振り抜き、怒涛の連撃で相手を一気に追い詰めた。
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9. 勝利の瞬間
「試合終了! 勝者、蓮&アリシア組!」
観客が歓声を上げる中、俺はアリシアに手を差し出した。
「な? いいコンビだっただろ」
「だ、誰が……! あんたなんか、ただの足手まとい……っ!」
そう言いながらも、アリシアはしっかり俺の手を握り返していた。
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10. 見せつけられる実力差
続く第二試合――。
レオン&リリィ組は、まるで舞うように敵を圧倒した。
リリィの支援魔法が光となり、レオンの剣が閃光のごとく敵を薙ぎ払う。
わずか数十秒で決着がついた。
「すごい……」
観客は息を呑み、俺とアリシアもその強さに圧倒される。
リリィはちらりと俺の方を見て、小さく微笑んだ。
だがその笑みは、どこか遠く感じられた。
11. 予選の日々
それから数日間、俺とアリシアは次々と予選試合に挑んだ。
最初こそ息が合わずにギクシャクしていたが、回を重ねるごとに連携は少しずつ形になっていく。
「蓮、左!」
「任せろ!」
俺が盾役となって敵の注意を引き、アリシアが鋭い剣技で隙を突く――そんな戦い方が自然とできるようになった。
時に口論しながらも、互いの信頼は少しずつ芽生えていく。
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12. 観客の反応
「おーっ! また勝った!」
「ツンデレ王女と転生者、なかなかやるな!」
観客席からはすっかり人気者扱いされていた。
アリシアは顔を赤くしてそっぽを向くが、まんざらでもない様子だった。
「……べ、別に嬉しくなんかないんだから」
俺は内心、(完全にツンデレのテンプレやん……)と突っ込んでいた。
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13. 一方その頃
対するレオン&リリィ組は――圧倒的。
リリィの支援魔法は精密で、レオンの剣は鋭く速い。
どの試合も数分と経たずに終わり、まさに無敗の王者コンビとして注目を集めていた。
「さすがは学園最強のレオン様!」
「リリィちゃんも綺麗で強い!」
リリィは観客の歓声に軽く手を振るが、時折こちらを見て何か言いたげに視線を送ってきた。
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14. 決戦カード発表
そして迎えた予選最終日。
教師が巻物を広げ、決勝トーナメントの組み合わせを読み上げる。
「準決勝第一試合――レオン&リリィ組 対 蓮&アリシア組!」
「……!」
観客席が大きなどよめきに包まれた。
俺の心臓がドクンと鳴る。
いきなり最大のライバルとぶつかるとは――。
「ふふ、待っていたぞ、蓮」
レオンが不敵に笑い、俺に指を突きつける。
「お前と王女殿下のコンビ、ここで終わらせてやる」
「……蓮くん」
リリィが小さく名前を呼ぶ。その声はどこか震えていた。
「蓮!」
アリシアが剣を抜き、きっぱりと言い放った。
「次は絶対に負けないわ。二人で勝つのよ!」
俺はその言葉に力強く頷いた。
いよいよ運命の対決が始まろうとしていた――。