表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/10

第2章 学園生活の幕開け

第2章 学園生活の幕開け


1. クラスメイトとの出会い


 王立魔法学園のクラス分けは、剣技・魔法・学力・魔力適性など、様々な要素を加味して決まるらしい。

 俺は勇者という肩書きのおかげで、いきなり**特進クラス《S組》**に放り込まれた。


「はーい、新入生のみんな、静かにー!」

 教壇に立ったのは、長身でポニーテールの女教師。

 凛とした雰囲気だが、口調はややラフ。


「私はこのクラスの担任、セリーヌ・グレイス。剣も魔法も一通り教えるわ。……で、あそこに立ってる彼、異世界から来た勇者ね。自己紹介、どうぞ」


「えっと……天城蓮です。まあ、色々あって異世界に来ました。よろしくお願いします」


 軽く頭を下げると、クラスのあちこちでひそひそ声が上がる。


「マジで勇者だ……」

「王女様とペアって、どういう関係だよ」


 ……耳が痛い。


「私はアリシア・リオネール。この国の第一王女だ。以後、私の邪魔をしないようにな」


 アリシアがツンと胸を張ると、クラス全員が「おお……」と感嘆の声を上げた。

 この人、本当に人気あるんだな。



 席に着くと、隣の男子がにやにや笑いながら話しかけてきた。


「よう、勇者くん。俺はカイル・エヴァンス。剣士志望だ。ま、これからよろしくな」


 その後ろの席からは、黒髪の少女が本を抱えたまま小さく会釈してくる。


「……ミリア・アーデルハイド。魔法専攻……よろしく」


 さらに、前の席には明るい栗色髪の少女が振り返った。


「私、リナ・クロフォード! 錬金術専攻だよ。勇者さんって何食べたらそんなに強くなるの?」


「え、普通にご飯ですけど……」


 個性強めの面々がそろっていて、これは賑やかなクラスになりそうだ。



2. 初授業と洗礼


 午前中の授業は座学。

 この世界の歴史や魔物の生態など、聞き慣れない単語が多くて頭が混乱する。


「勇者、お前、寝るな!」


「いや寝てないです。たぶん」


「たぶん、は寝ているということだ!」


 横からアリシアが小声で突っ込んでくる。

 ……監視役というより、もはやツッコミ役だな。


 午後は剣技の実技。

 担任のセリーヌ先生が木剣を配り、ペアを組んでの基礎練習が始まった。


「よし、勇者は私と組め」


「いや、またですか」


「当然だ。お前の癖を見抜いてやる」


 訓練場のあちこちで木剣の音が響く中、俺とアリシアの模擬戦が始まった。

 やっぱりこの人、全力だ。手加減という言葉を知らない。


「……前より防御が上手くなったな」


「そりゃまあ、毎回相手してたら嫌でも」


「ふふ、なら次は魔法も交えてやるか?」


「遠慮しときます!」



3. 不穏な噂


 放課後、学園の寮へ向かう途中、カイルがこっそり耳打ちしてきた。


「なあ、知ってるか? 最近、学園の近くで魔物が出たらしい」


「魔物って、街中に?」


「ああ、普通じゃ考えられねぇだろ? しかも、目撃者によると“人の形”をしてたって話だ」


 ――人型の魔物。

 それってつまり……魔族、ってやつか?


 胸の奥に、薄い不安が広がった。

4. 平和な(?)学園ライフ


 学園生活が始まって一週間。

 朝は寮の食堂でパンとスープを食べ、午前は座学、午後は実技。

 夜は寮のラウンジで宿題を片付ける――そんな生活にも慣れてきた。


「蓮、ノート見せろ。昨日の授業でお前、半分寝てただろ」


「いや寝てない。……半分くらいは聞いてた」


「それを寝てたと言う!」


 今日もアリシアのツッコミが鋭い。


 一方で、カイルとはすっかり打ち解けた。

 授業後に剣の打ち合いをしては、「お前やっぱ強ぇな」と感心されたり、

 リナには「新しい回復薬の実験台になってよ!」と振り回されたり。

 ミリアとは静かに読書をする時間が心地よかったりする。


 ……うん、なんだかんだで楽しい。



5. 学園対抗戦の告知


 そんなある日の終礼。

 セリーヌ先生が教壇に立ち、意味ありげな笑みを浮かべた。


「来月、恒例の《学園対抗戦》が行われる。隣国グランツ魔法学園との交流試合だ。剣技・魔法・混合競技の三種目で争う」


 教室がざわつく。


「勇者、お前はもちろん剣技部門に出場だな」

 アリシアが当然のように言ってくる。


「いやいや、まだ来て一ヶ月も経ってないんですけど」


「それがどうした。お前の力を証明するいい機会だ」


 横からカイルも笑顔で加勢してくる。


「俺も出るぜ。二人で並んで試合に出たら盛り上がるだろ?」


「……フラグ感すごいな」



6. 迫る影


 その日の夜、寮の裏庭で涼んでいると、物陰から低い声が聞こえてきた。


「……予定通り、対抗戦の場で仕掛ける」


「勇者も王女も一度に消す……これで王国は混乱する」


 背筋が凍る。

 見れば、月明かりに照らされた二つの影。

 フードを深くかぶり、顔は見えないが、漂う気配は人間じゃない。


(――魔族、か)


 物音を立てないように部屋に戻ったが、心臓の鼓動はしばらく収まらなかった。

7. 特訓の日々


 翌日から、俺はアリシアと一緒に放課後の訓練場へ通うことになった。

 理由は単純――対抗戦でのペア練習だ。


「勇者、お前の弱点はまだ多い。攻撃は悪くないが、防御が甘い」


「そりゃ、毎回王女様みたいな全力剣撃ばっか食らってたら、普通死にますよ」


「死なぬように鍛えるのだ!」


 容赦ない剣撃、時折混じる魔法、そして追い打ちの説教。

 正直、授業よりもハードだった。


 けれど不思議と嫌じゃなかった。

 剣を交えるたびに、アリシアの真剣な表情や、わずかに口元がほころぶ瞬間が見える。

 その度に胸の奥が、ちょっとだけ熱くなる。



8. 寮の夜と作戦会議


 訓練の帰り、学園寮のラウンジでカイルとリナが待っていた。

 テーブルには地図や過去の試合記録が広げられている。


「今回の剣技部門、相手校のエースは“雷剣”ライゼルってやつだ」

 カイルが真剣な顔で説明する。


「雷剣……名前からして嫌な予感しかしないですね」


「全身に雷を纏って突っ込んでくるタイプらしい。スピードはかなりのもんだ」

 リナがメモを指で叩く。


「蓮、お前の《無限適応》で一度でも動きを見切れれば勝てるかもしれない」

 カイルの言葉に、俺はうなずいた。


「……じゃあ、作戦はこうだ」


 そこから夜遅くまで、俺たちは作戦会議を続けた。



9. 開幕の日


 そして――学園対抗戦当日。

 会場となる円形闘技場は、両学園の生徒や貴族たちで埋め尽くされていた。

 旗が翻り、歓声が轟く。


「第一試合、剣技部門――王立魔法学園代表、勇者・天城蓮!」


「同じく王立魔法学園代表、第一王女アリシア・リオネール!」


 二人並んで入場すると、会場の歓声が一段と大きくなる。

 アリシアは背筋を伸ばし、堂々と歩いていた。俺はその横顔を横目で見ながら、深く息を吸う。


「……緊張してるのか?」

 小声でアリシアが訊いてきた。


「まあ、ちょっとは」


「大丈夫だ。私が横にいる。お前を落とすのは、この私だけだ」


「励ましなのか脅しなのか、わかんないですね」


 彼女は小さく笑い、それきり前を向いた。



 反対側から、長身で銀髪の青年が歩いてくる。

 肩に掛けたマントが翻り、腰の剣からは微かに雷光が漏れていた。


「――“雷剣”ライゼルだ」


 目が合った瞬間、稲妻のような殺気が走る。


 試合開始の鐘が鳴るまで、あとわずか。


(……絶対に負けられない)


 俺は剣を握り直した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ