第1話 俺の名前は青山大地
――これは、俺が“過ち”から更生して、変わっていくまでの話だ。
俺は1年2組の青山大地。この高校に通う男子生徒。
俺は隣のクラス、1年3組の桜井春に恋をしていた。
桜井春の瞳が見つめた時、俺はドキッとした。そして彼女の微笑みで眉の先が垂れて頬が上がり、口元が緩む様子が分かった。
「青山君」と優しく声をかけられ、俺が答える。そうして話が弾むのだった。桜井春の優しさは俺にとって希望だった。
万全の準備を整えて最後は告白だと意気込んでいた。
それなのに、その計画は脆くも崩れ去った。
それは6月の梅雨入りをした日、放課後の図書室だった。
「青山君。私そういうことする人、ヤバいと思うんだ」
本棚の影にいた俺。
それに背を向けて席に座っていた桜井に唇が震えるような弱々しさで声をかけられた。
バレていた。桜井には俺のしていることが分かっていたのだ。
椅子を後ろに引きずる音がした後、桜井がゆっくりと席を立って目の前に置かれているであろう勉強道具を急いで仕舞いだした。
スクールバックを肩にかけると振り返ることもなく入り口の方へと移動しドアに手をかけ、ガラッという音の後にピシャッという閉まる音がした。
その行動は獣を恐れる小動物のようだった。
あっけなかった。告白に失敗した。俺は受け入れられなかったのだ。
――これからどう生きていけばいい?
神様にすがるようなそんな思いで俺はいた。
図書室の窓に貼り付いた雨粒が滴り落ちると、俺の頰に冷たい何かが伝わった。
(帰ろう。)
そう思ったら俺は図書室を出ていた。
廊下を歩き階段を降りて昇降口に向かっていた。