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『脆い絆』  作者: 設楽理沙


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83/117

☘83  ◇戻ってきてほしい

2025.9.12


お米(国産米)が手に入りにくい方へ


noteのほうで直売してくれる農家さんのご紹介をさせていただいています。


検索 [note杏野真央]で飛べます。近況報告のぺージまで。

83  ◇戻ってきてほしい



「でも……もう40も過ぎていて、ここでの仕事は体が辛いだろ?

家に戻れば、もう無理して働くことはない。

家のことだけして、ゆったりと暮らせるんだ」


そんなふうに秀雄からやさしく今後の生活について促され……雅代は目を

伏せた。確かに体は辛い。


仕事を終えたばかりの足は鉛のように重いし、酷く疲れている。


けれど、ただ『戻る』と言ってしまえば、自分が負けるようで嫌だった。


『家に戻れば、もう無理して働くことはない。

家のことだけして、ゆったりと暮らせるんだ』


秀雄の言葉は、今の疲れ切った身体でいる雅代にとって、酷く甘美な囁きと

なって耳に届いた。


理性(αプライド)と肉体のせめぎあいが始まる。


「……分からない。そんなふうに言われても、すぐには決められない」



「……いいんだ。今日すぐに返事がほしかったわけじゃない。

だけど、考えてみてほしい。



俺は、本気でおまえに戻ってきてほしいと思ってる」


秀雄の『戻ってきてほしいと……』と話をしているところでふいに薫風(くんぷう)が吹き

遠くから汽笛の音が聞こえた。


「今夜は駅近くの旅館に泊まる。明日には適当な時間に帰るつもりだ。

気持ちが決まったら手紙で知らせてほしい。迎えに来るから」

 

真剣な表情の秀雄が『じゃあ、遅くにすまなかったね』と言いながら踵を返

し、その場を去って行った。


雅代はその背を、ただ無言で見送った。


その時、雅代の胸の中には、怒りとも寂しさともつかぬ重たい感情が渦巻く

ばかりだった。














       ――――― シナリオ風 ―――――




〇北山製糸工場/寮裏手 ・夜


   仕事帰りの雅代。

   疲れを抱えた身体で秀雄と向き合う。


秀雄

「でも……もう40も過ぎていて、ここでの仕事は体が辛いだろ?

 家に戻れば、無理して働くことはない。

 家のことだけして、ゆったり暮らせるんだ」


   雅代、目を伏せる。

   足の重さに耐えながら、揺れる心。


雅代(N)

「確かに……体は辛い。

 けど、『戻る』と言ってしまえば負ける気がする……」


雅代「……分からない。

 そんなふうに言われても、すぐには決められないわ」


秀雄

「いいんだ。今日すぐに返事を求めてるわけじゃない。

 でも考えてみてほしい……。

 俺は、本気でおまえに戻ってきてほしいんだ」


   ふいに風が吹き抜け、遠くから汽笛の音。

   沈黙ののち、秀雄が言葉を継ぐ。


秀雄

「今夜は駅近くの旅館に泊まる。

 明日には帰るつもりだ。

 気持ちが決まったら手紙で知らせてくれ。迎えに来るから」


   真剣な眼差しを残して背を向ける秀雄。


雅代(心の声)

「怒りとも寂しさともつかない……重たい感情だけが胸に渦巻いていた」

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