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『脆い絆』  作者: 設楽理沙


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71 ◇いろいろと悩ましい

71 ◇いろいろと悩ましい


そして、雅代のこともそうだが、自身のこともなんとか現状を変えなければと思うのだった。


……というのも、養子という形にはなっていなかったが、温子の両親と同居し

たのは、看護婦として製糸工場に勤める妻の温子のためでもあった。


哲司が温子と結婚した経緯は、哲司のひとめぼれからだった。


哲司の親類が温子の近所に住んでおり、葬式の折に隣保で助け合うため温子が哲司

の親族の家に手伝いに来ていたのを、参列するため親類の家へ訪れていた哲司がそこで彼女を見初めたのである。


温子の両親との同居は温子の意志というより温子両親の意向であった。


無理に婿養子にはならなくていい、ただ同居してくれて娘の収入は自分たちの懐に

入るような形にしてほしいという要望だったのだ。


惚れた弱みじゃないけれど、養子に入り籍がどうのこうのと言うようになるわけで

もなく、また自分の給金から実の両親に毎月いくばくか哲司のほうでも入れてよい

ということで双方合意の元、温子と哲司はスムーズに結婚生活をスタートさせたの

であった。


ところが哲司が温子の妹凛子とやらかしてしまい、結局温子とは離縁してしまう

ことになる。


それでも経済的な話だけに関していうとそのあと、妹の凛子と結婚していれば

ぶっちゃけ妻の座に姉妹が入れ替わるだけなので両家にとって問題はおきなかった

ことになる。


しかし、実際には姉の温子と離婚しただけで、妹の凛子とは結婚しなかったため

問題が生じることとなった。


           ********


いやいや、|普通なら妻の座に姉妹が入れ替わる《そういうことになる》だけで

問題はおきないだろうけれど、あの凛子のこと―――結局は働かない凛子を含め

て哲司がひとりで6人の食い扶持を賄わなければならなくなるだけだっただろう

から、それを考えると、凛子が家にいないことはまだ幸いなのかもしれなかった。           

           ********


哲司ひとりの給金で4人の年寄りを背負う形となってしまったわけだが……。


この状態(状況が)が早晩崩れるのは時間の問題だったのだ。


……というわけで、今や哲司はふたつの悩み事を抱えているような状況だった。

幼馴染の雅代の仕事の問題、そして自分の身の振り方の問題。




年が明けて-しばらくしてまたまた実家へと雅代の顔を見に帰り、ふたりの楽しい 

語らいの時間を過ごした後で、哲司はパッと閃いた。


どちらの問題も、ある人物に協力を要請すればまぁるく収まりそうに思えた。


全ての鍵を握る人物、そう……元妻の温子を訪ねて相談に乗ってもらえば……と。


積極的にやさしい対応はされないだろうが、いたずらに追い返されたりはしないだ

ろうとの算段があったし、縋れるのは現状彼女しかいなかった。




    ――――― シナリオ風 ―――――





〇小原家 / 哲司の自宅(温子の両親と暮らす家) ・ 夜

◇哲司の胸中


   哲司、机に突っ伏すようにしながら―――――。


哲司(N)「……雅代のことも、自分のことも。

どうにか現状を変えなければならない。

そう思わずにはいられなかった」


(回想)

 温子との出会い

 葬儀の手伝いをする温子に見惚れる若き日の哲司


哲司(N)「温子との結婚は、俺のひとめ惚れだった。

 彼女の両親との同居も……惚れた弱みで呑み込んだ」


   温子の両親は少々計算高く「同 居でいい、娘の収入は自分たちへ」

   という話に哲司が頷くことで話がまとまる。




哲司(N)「婿養子になることもなく……俺の給金も実の両親にいくらか

 渡せる。そうして始まった結婚生活だったが……」


(回想)凛子と過ちを犯す哲司

    温子の苦悩

    離縁の瞬間



哲司(N)「愚かな俺は、温子を失い……

 結局、凛子とも結婚せず……ただ惨めなだけになった。


 普通なら……姉妹で妻の座が入れ替わるだけで済んだはずだ。

 だが凛子は……働かず、結局は俺一人で六人の口を養うことに

 なっただろう。

 それを思えば……いなくなったのは、ある意味幸いだったのか」


   哲司がため息をつく


(N)

「今や、哲司ひとりの給金で四人の年寄りを背負う身。

崩れるのは時間の問題だった」


◇閃き


〇実家近くの茶屋 ・ 哲司と雅代


   雅代と談笑するひととき。

   雅代は柔らかに笑うが、やはりどこか影がある。



〇 哲司の自宅・夜


哲司(N)「雅代の仕事の問題……そして自分の身の振り方。

 二つの悩みを抱える哲司は、その夜、ふと閃いた」


   哲司、ハッと顔を上げる。


哲司(心の声)「そうだ……温子だ。

 あの人なら、鍵を握っている。

 相談に乗ってもらおう。

 きっと突き放されはしないだろう」







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