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『脆い絆』  作者: 設楽理沙


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41 ◇ごめんよ 

41 ◇ごめんよ   



この時代結婚適齢期は早い者(女子)で10代のうちに結婚する者が

大半で、すでに志乃は適齢期を過ぎていた。


涼は志乃に気持ちを残しつつ、どうやれば彼女が今生幸せに生きて

いけるのかを考えた。


涼は日を置かず、すぐに志乃に会い自分の不甲斐なさを詫び

良いご縁があればすぐにでも嫁ぐよう言い含めた。


「涼さん、やっぱり私の出自がふたりの結婚の足枷になったのですね。

ずっと、私は気になってた。でもおじさまもおばさまも他の大人の人たちの

ように私を卑しい娘だと見下したりしたことは一度もなくやさしくして

くださった。


だから私ったらつい、結婚も許してくれるかもしれないと

甘い考えを持ってしまったの。


涼さん、こんな私なのに一途に好意を向けてくれたことすごく感謝してます。


小さな頃から今までずっと一緒にいられて幸せだった。

年老いた母のこともあるし、よいご縁がいただけたら嫁いで行くわ。


涼さんや珠代ちゃんと過ごした子供時代の楽しかったことは

私の生涯の宝物」


 


「志乃、ごめんよ」



「謝らないで。涼さんのせいじゃないもの。

運命には抗えないものなのかもしれない。

私、流されるままぷかぷかと浮いていくことにします。


親を選ぶことはできなかったけれど、でも境遇に負けず自分の精一杯で

一生懸命生きていくわ。


どんな未来が自分を待ち受けているのか、今の私には何も見えないし、

何も分からないけど……。


縁があればきっとまた人生のどこかで涼さんと交われる日が

来るかもしれない……し、来ないかもしれない。


それも運命……。


涼さんに小さな時から出会えて今まで仲良くしてもらえて

それだけでも私は幸せ者だと思ってる」



幼い頃からいつも一緒にいたふたりは、互いの気持ちを言葉で綴り、胸の内を

明かし合った。


そして、いつもの神社の境内で別れた。

それが最後の逢瀬となる。


その後―――――――

志乃は前々から好意を寄せてくれていた商社に勤めている男の元へと

翌年、嫁いで行った。


運の良いことにその男は三男で、しかも父親が妾を囲っているような環境だったのも

あり、北山家で問題になった点はさらっと流されたのである。


|これまた、人生の妙というものか。《いやはや、人生というのは本当に不思議なものだな》


-911-

     ――――― シナリオ風 ―――――



〇志乃との最期の逢瀬/神社の境内・10年前の回想


   小さな神社の境内。

   日が落ちかけた夏の終わり。

   蝉の声が遠くに響く。



  適齢期を過ぎようとしている志乃の幸せを願い,涼は自分の不甲斐なさを

  詫びた後、良い縁談があればすぐにでも嫁ぐよう言い含める。


志乃「私ったら、今までよくしてもらってたから、つい甘えた考えでいたの 

 ね。涼さん、謝らないで……。お嫁さんにって考えてくれただけでもすごく 

 うれしかった。これまでずっと一緒にいられたことも。涼さんと過ごした

 時間は私の宝物よ。今まで本当にありがとう。言われた通り、良いご縁が

 あれば嫁いで行くわ。だから心配しないで、涼さん……」



涼「志乃……ごめん。本当にすまない」


志乃(微笑む)「謝らないで。涼さんのせいじゃないもの。

 抗えない運命というものがあるのかもしれないけど、でも私は負けない。

 流されるままぷかぷかと浮かびながら、別の幸せを見つけてみせるわ」


涼「志乃……」

(N)「悲しいはずなのに、強がりを言って自分を安心させようとする志乃がい 

 じらしくて涼は泣けてくるのだった」


   境内の鈴の音が風に揺れ、二人の間に長い沈黙。


志乃(小さく)

「……涼さん、またどこかで、笑って会えたらいいな」


涼「ああ……きっと、いつか」

涼(N)「きっと自分は一生志乃のことを忘れないだろう」


   志乃が踵を返し去っていく。

   涼は何も言えず、その背中を見送る。



   その後―――――――

   志乃は商社に勤めている男性と縁があり、彼の元へと嫁いで行った。


   運の良いことにその男は三男で、おまけに妾がいたことで父親の考え方

   が寛容だったため、志乃の氏素性も大きな問題とはならなかった。


   |これまた、人生の妙というものか。《いやはや、人生というのは本当に不思議なものだな》


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