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私は死人だった

作者: さかえ

短編です


夫婦には1人の男の子がいた


彼は優しく育った

地形研究者の父と

教師の母

美しい2人から生まれた美しい男の子


男の子はある日自立するために

1人で森に向かう


父と母は遠くの茂みから彼を見守っていた


お腹が空いた男の子は

一つの賑やかなレストランに入った


両親も後から入った


満席の店内

 

男の子は離れて座っている両親には気付かず

食事をしている


父親は母親と口論になった


頼んだ食事はまだ来ない


店は兎に角混んでいた


男の子は食事を終えて席を立った


父親はすぐに席を立ち会計を済ませた


息子の食事代と、

2人分食べていない食事代を


レストランのオーナーは追いかけてきた


「まだ、何も出していない


お金持ち風なお二人よ


何処へ行ってしまうんだ」


父親は森の中に進む男の子を追いかけて行く


母親はそれを追いかける


父親は空腹に苛立ちながら怒り

反対に息子の自立を感じ満足感に満ちている


母親は茂みから足を滑らせた


細い声で呼びかけた


あなた、、…


母親は茂みの深くまで滑り落ち

気を失った


じきに雪が降ってきた


愛する男の子と父親が

生きているのならそれで良いのだ


身体は動かない






動かない身体が土ごと持ち上がり

両腕を地べたから引き上げられる感覚を覚えた


灰色の空には厚い雲が出ていた

薄暗い昼間か夜かもわからない


土の塊と共に大きなトラックの荷台に詰め込まれた


また何時間も目を閉じた


知らない言葉が聞こえる


目が覚めた時妙なモノを見た


豊満な女が私の目玉を除き込んでいた


何かを話していたが

身体に力は入らない


何をどうすれば声が出るかを

忘れてしまうほどに

喪失感で意識は朦朧としたままに薄目を開けていた


女は床に膝をついて

私の横に寝ている人間に話し掛けた


どうやら若い男性の声が聞こえた


苦しくて辛いか細い声の男性の衣類を脱がしていく女


ふと男性の腕が私の腕に触れた


彼はビクッとして私を避けた


「froid」


私の身体はとても冷えていた事にビックリしたようだった


よくみると数人の足などが見える


床に寝かされた私、

ここは死体安置所?


女は若い男の服を脱がして

上にまたがり

異様な高い声を出しながら身体をくねらせていた


私はまた目を閉じた


とてもとても眠かった


しばらくしてまた部屋に明かるい光が差した


男の声がした


数人がドカドカ入って来た


床の軋む音、引きずっている揺れに

薄らいだ意識がまた目覚めた


薄っすら瞼を開けた時


髪か髭かわからない老人が私の顔をいじっていた


耳の裏を乾燥して硬い皮膚の指が撫でた


私は嫌な想像をした


老人は私の衣類を剥がしていく


衣類に到達するまで沢山の湿った枯葉や硬い泥を

爪で剥がしていく


上半身が露になった


空気は冷えていた


初めて異様な匂いに気づいた


今までは腐葉土の香りしかしなかった為に

気づかないでいた


私の腕を掴む老人の頭がゆっくりと


私の胸に近づいてきた


私は目を閉じた


「生きている」


人の声が増える


あの女も入ってきた


「まさか、そんな、」


私の眼球を長い爪で無理やりに開かせて

除き込んだ


私と目が合った


女は何かを察知した


老人は

「誰かこの人を診察台に、や、先に風呂場だな、兎に角急いで温めるんだ」


数人に抱えられて

泥だらけの私は救われた


ドアを出る前に老人の声で


「生存者は、一名か。」


私は恐怖に気を失った

続きも有ります

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