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「んじゃ、行きますか。丁度この上がいい場所だから。出来ればヤバそうなドローンだけでも壊すよ」
「あの、私は」
「一緒に来て。ターゲットだけを殺すけど、うっかりしちゃいそうだね」
喫茶店の付近で1番高いビルに入る。
受付に改札があるタイプだけど、とある秘密兵器、政府関係者のカードを通せばすんなり入れる。
警備の人が近づいてこようものならカードをちらりと見せてウインクまでチップとして載せてあげれば深深とお辞儀までしてくれる。
後輩ちゃんは慌てて着いてくる。
私と警備の人を交互に見ながら。
平然とエレベータに乗って最上階まで。
オフィスで働く人達にチラチラと1、2回見られるがそれっきり。わざわざ声をかけてくるような人はいない。
非常階段をカツカツと上がりながら後輩ちゃんが言う。
「見られたら不味いですよね」
「そうね。表向きは一般企業だもの。まあ、潰れるかもね」
表の顔は製薬会社としてしっかりと機能しているだろうし、儲けも出ていて一般人も養っているのかもしれない。
けど、私には関係ない。
「何も思わないんですか?」
「思わない。言ってなかったけ。一凛は根っからのシリアルキラーなの」
振り返って指で銃の形を作ってバンッとポーズを摂ると、これまた何度目かの苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……殺さないでくださいよ」
横幅が狭い非常階段では追い抜くことも出来ず、さっさと行けと私の手を払い除けて、ズイっと背中を押される。
少し背中に体重を預けて両手を広げて愛おしいバディ様へ気持ちを伝える。
「何言ってんの、大切なバディじゃあ、ないか!」
「芝居がかって言われても」
ため息を吐いてポンッと強く押されてしまう。
うーむ、後輩ちゃんの緊張は中々取れないな。
茶化すのではなく、真面目である方が逆に後輩ちゃんは落ち着くのかね。
「一応銃は出しといてね。気付かれると思うし、との時に対処お願いするね」
「分かりました」
後輩ちゃんが軽く銃を確認して、更に緊張感を高めてしまった。本格的に戦闘になるのは乗り込んでからになるのに。
「てか、階段多くね〜」
「何泣き言言ってるんですか。狙撃するって言ったのは貴女ですよ。ちんたらしてると失敗しますよ」
「それは困る〜。お金無くなるよぉ」
「へ?支給されてますよね」
失言。
後輩ちゃんがなんですと?と、きっと鋭い目線を向けてくるは、手を取って静止させようとしてくるわで、詰問されそうになる。
「……なんでもない」
「ちょっと、詳しく!」
明後日の方を向いて発言をなかったことにしたのに、余計に火をつけてしまった。
そそくさと早足で階段を登ってさり気なーく距離を取っていたのに、ダンッダンッダンッ!と力強い足踏みと共に近づいてくる。
「ほ、ほらぁ!早く行かないと時間切れ〜!!」
「あっ、ちょっと、待ってください!」
残り少しの階段を駆け足で登る。
後輩ちゃんも駆け足で登る。
遊んでいる場合では無いけれど、後輩ちゃんといると楽しくなっちゃうな。




