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先生の話を聞き終えて、製薬会社の前の喫茶店に移った。
ここには甘いのは無いので、仕方なくカフェオレを頼んで飲んでいる。
後輩ちゃんはアイスコーヒー。まったく口を付けてないけれど。
「飲みすぎるとお腹たぽたぽになりますよ」
なんて小言を行ってくる始末だ。
「あ、そうだ。命令は従ってね。誰からのだろうと」
作戦中、指揮を出す事はあるけど、私から別の誰かに急に移ることもあるし、そうなると思考も変わる。その時に混乱しないように言っておかないと。
「人によってコロコロ変わるんですか」
「多分ね」
「……はい」
「お〜、不服そうだなぁ」
渋面を作って面倒くさそうなの事を隠す気もなく返事する後輩ちゃん。
真顔以外の顔が見れて満足気にニヨニヨする私とは正反対だ。
頬をぷにっとしてもされるがまま。やわらかーい。
それでもその場ではしっかりしてもらわないとね。最悪死ぬし。この後輩ちゃんは可愛いから死なせなくないしね。
外から見て建物の弱点は無さそうだと感じる。
警備は一見普通だが、服の下には何が隠れてるか分かったもんじゃない。
巡回している人は歩き方から兵士、またはそれに準ずる人なのは明らかだ。
「で、だ。どうしようか」
「正面から行くんじゃないんですか?」
後輩ちゃんはどうやら脳筋であるね。
指示を受けて完璧に指示通りこなすタイプなのだろうね。
自分で考えることがまるで出来ていない。不安だなぁ。
「馬鹿正直に行っても弾かれるだけよ。変装でもするか〜?」
私がスマホの画面にバニーガールやら、メイド服やオシャレな和服コスの画像を見せる。きっと後輩ちゃんはどれも似合うだろうし、なんなら………。
「……裏口から行きましょう。どうせ相手も武装してますよ」
口の端をヒクヒクさせながら私の提案をアッサリ断る。
私を見る目に警戒の色が浮かんでしまった。
じょ、冗談だったんだけどな。いや、ラグジュラリーは似合うと思うけどね。
「だろうね。陽動はいるかな?」
「どうするんですか」
「スナイプ。情報操作が今回されるか分かんないけど、最悪でも、有耶無耶にはしてくれるっしょ」
「信じていいんですか?」
「ふっ、ネイルのエースだよ。任せなさい」
私は私の横に立てかけてある楽器ケースをポンと触れて自信げに言うのだった。
この楽器ケースの内側に多大なる信頼を添えて。




