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「裏切ったの?」
ネチャネチャとした粘土をこねくり回した様な笑顔に嫌悪と軽蔑を込めて聞けば、その顔は急に凪が来たように真顔に変わった。
薄気味悪い。
それは泪含め、この場所のせいもあるだろう。
ネイルの施設に居たんだ。そう遠くでは無いはずだ。
何も物が置かれてない部屋……いや、アレは泪の武器だろう。
どの形かはよく見えないけど拳銃が転がってる。
「なんか言ったらどうなの!?」
「……ねぇ、なんで私達は人を殺さないといけないんだろうね」
「……それが与えられた使命です」
「使命、使命ね。人を殺さずに生きる人がいるよね」
「……」
「なんで?そう思ったことは無いの?」
「それは……」
あるに決まってる。もし、親が普通にいて、普通に学校へ通って……。
そんな存在しないもしもを、考えない時は無い。
でも、それは無いものだ。
「まぁ、いいや。私は平等にしたい」
「敵となる気ですか」
「敵って何?」
「この日本をっ……」
「作り替えるだけだよ。ねぇ、先生?」




