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目を使って見る事で、コメカミら辺が痛む。それに熱っぽさも出来てた。
目を抑えて何度か深呼吸すれば、マシになった。
そんなに長時間使ってなくてこれは不味い。
「この依頼終わったらメンテナンスしなきゃかな……」
「銃のメンテナンスなら今やったばかりじゃないですか」
後輩ちゃんは呆れたように言うが、どうも食い違っている。
後輩ちゃんは私を軽んじてるな。
この依頼をこなして、時間を確保したら喰ってやろうか。
サラサラの髪がなびく度に、それだけで艶かしいこの女。
頭の上から足の先までジロジロと見れば動きにくそうなおっぱいを持ってるくせに、くびれは凄いし、なんかもう完璧なルックスだなあ。
殆ど無表情の癖に、目だけ異様にコロコロと表情を変える。
ありだな。と、思案をしながらも、悟られないように平然と、なんでもない様に、それでいて自分の事だし、殊更つまんなそうに言う。
体を隠すように腕を交差しているので多分バレてる。
じっーとした視線が痛い。
「ん?ああ、メンテナンスはこの目だよ」
自分の目を指して、それからウインクをサービスしてあげる。
「目」
ノーリアクションである。悲しいなあ。目について説明する気にもなれないや。
空気が凍りそうなタイミングでちょうど依頼主が来店した。
「そそ、あっ。あの人じゃない?」
キョロキョロと席を見渡している。私達を見つけられていないから、声をかけて手をブンブン振った。
「おーい、先生〜」
「依頼主って先生なんですね」
後輩ちゃんは意外そうだった。さもありなんと言ったところか。作戦は全く覚えてないけど、私個人に最初に依頼してきたから私は知っていた。
後輩ちゃんは後からの追加人員だから、作戦を伝えられていても、誰からかは知らなかったみたいだ。
それも当然で、なんせ私と後輩ちゃんは昨日挨拶したばっかだったりするからだ。
「すまない、待たせたかな」
「いいよ、いいよ」
スタスタと姿勢よく、自信に満ちた人の歩きで私たちの席に優雅に来た。ネイルのなかでも一部の人しか会うことが出来ない人物。この人の案件は大抵厄介かつ、重要度が高かったりする。
手をヒラヒラさせてご挨拶。
お客さんの女性たちの視線が釘付けになっている。
目立つ目立つ。
それににこやかな笑顔で返して席に着いた。
それと同時にガタッと大きな音を立てて敬礼する後輩ちゃん。
目立つ目立つ。
「あー、座って、海理さん」
「はい」
先生が腰を下ろす様に言って、店員さんを呼ぶ。
珈琲を頼んだ様。
大人の男性の飲み物と言えば珈琲だよねと思い、まさに理想の形だあ、と感心してしまう。
空っぽの残りだけのコップを見ながら殊更そう思う。
「律儀だね」
「当然の振る舞いです」
失礼しますと言って席に着いて、アイスコーヒーを1口口を湿らせる程度に飲む。
顎に手を置きつつ横目で後輩ちゃんを見た。
私だけの時より姿勢が良いな。
「でもさ、先生。メールでも呼び出しでも良かったのに。なーんで待ち合わせなんて」
「時間が惜しいからな。手短に話す。詳しい事はこの中だ」
「はいはいっと」
手渡された封筒から書類をパラパラめくってざっと読む。
隣にいる後輩ちゃんにポンと渡して先生が喋るのを待った。
「ターゲットは奴隷紛いの扱いをさせる下衆だが、やらせてることも良くない。先行偵察したヤツらが帰ってこない事と、作ってる物がリークできた」
「何作ってたのさ」
「サリンを上回る毒だ。しかもこれが本命でないと来た」
「うはぇ、毒ですか」
「……だから私を」
後輩ちゃんが話を聞きながらイソイソと資料を読む。
真面目だからか全て読むつもりらしい。結構大変じゃねと思いつつ、今後一緒になる時はこういう作業は全て任せようと思ったのだった。
毒の精製をしているとは穏やかじゃないね。戦争でもするつもりかと疑ってしまうよ。
後輩ちゃんは毒という単語に敏感に反応した。
もしかして、後輩ちゃんは毒に関するエキスパートだったりするんだろうか。
それなら納得、納得。
「奴らは私たちの解体を目的としている。つまり政府だ」
「なっ……」
「ヤバいんじゃないですか?」
「ははは、まあ、一枚岩じゃないしね。何がしたいのやら」
うーむ、相手はただの製薬会社って訳じゃないらしい。政府と繋がりつつ、更に私たちネイルを解体しようとする。
後輩ちゃんは相手が政府ということに焦ったみたいだ。
私としては相手が誰より、相手の目的が気になる所だ。
「おう、冷静だな。じゃあ、銃でも作ってるんすか〜」
「そうだ。しかも毒入りの銃弾だ。カスっても死ぬ」
「最悪」
先生の余裕っぷりを見るに予め対策はしてそうだ。
私達と別働隊があってそれぞれで動くのかもしれない。
しっかし、銃の製造までするとなると政府の中に売国奴でも居るのかもしれない。
殺傷能力はピカイチで、相手の素性はイマイチ。
部の悪い依頼かも知れないなと思った。




