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41 爽やかな朝

「ふぅ………やっと終わったな」

「ええ、本当に長かったですね」



全て終わる頃には朝になっていた。

窓からは日の光が差し込んでいる。



(……もう朝か)



私は明るくなった窓の外に目を向けてみる。



ついさっきまでは真っ暗で何も見えなかったというのに、今は目も開けられないほど眩しい。

夏が近付いているのだろうか、最近は朝が来るのが早くなった気がする。



(……気持ちが良いな)



窓から差し込む日の光が私を照らした。

暖かくて気持ち良い。

こうやって太陽の光に当てられていると、寒い夜のことなどすっかり忘れてしまいそうだ。



フランチェスカが亡くなってからは朝も夜も同じに見えた。

深く暗い夜は好きではなかったし、かといって早朝の眩しすぎる太陽の光は鬱陶しく感じた。



だけど、今は違う。



(私はやはり……朝が好きみたいだ)



出来ることなら、フランチェスカと共にこの朝を迎えたかった。

朝起きたら吐息を立てて眠っている彼女が隣にいて、一番に私におはようと言ってくれる。

眠そうに目をこすりながら私に笑いかける彼女はどれほど美しいだろうか。



「……」

「陛下、何ニヤついてるんですか?」



そのとき、アレクが突然私に話しかけた。



「ッ!!!別にニヤついてなんて……」



どうやら考えていることが顔に出ていたらしい。

アレクに指摘されて顔が真っ赤になる。



アレクはそんな私を面白そうにまじまじと見つめた。



「あ、もしかしてフランチェスカ様のこと考えてました?」



そして、私をからかうように言った。



「ッ!!!」



(な、何でバレるんだ……)



私の心の中を読んだのかアレクが笑いながら言った。



「陛下は気付いてないと思いますけど、フランチェスカ様のことを考えているときの陛下って自然と口角が上がってますし何か嬉しそうなんですよね」

「……………………そうか?」

「はい、陛下結構分かりやすいですよ」



感情が顔に出るだなんて王失格だ。

もっと一国の王としての自覚を持たなければいけないなと思う。



(…………恥ずかしいな)



私は赤くなった顔を隠すようにアレクから顔を逸らした。

そんな私の様子を見たアレクが苦笑いしながら声をかけた。



「陛下、今日の朝は何だか気持ちが良いですね」

「そうだな」



アレクの言う通りだった。

昨日から一睡もしていないのに、不思議と体はそこまで重たく感じなかった。

全く寝ていないとは思えないほど、爽やかな朝だった。



(……こんな朝がずっと続けばいいのにな)



そう思うものの、人生はいつ壊れるか分からない。

一度絶望を経験した私だから言えることだ。



「……」



人生はたった一度しかないのだから後悔の無いように生きなければいけない。

何かを失ってからでは遅いのだ。



「………アレク、お前にしばらく休暇を与えようと思う」

「え、本当ですか!?」



私の提案にアレクは嬉しそうな顔をした。



「ああ、お前はいつも本当によくやってくれているからな。たまには実家に帰って両親を安心させてやったらどうだ」

「……ありがとうございます、陛下!」



アレクは満面の笑みでそう答えた。

その顔を見て、私も心も自然と穏やかになった。






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