第57話【完結】
私は頷いた。
そして、決意を新たにする。
必ず、この国で一番の魔導師になり、政治を動かせる立場になって、世の中の形を変えて見せる。……いつかエミリーナが自由の身になったときに、失望されないように。
『上級貴族のあなたは、生まれた時から輝かしい未来が約束されている』
確かに、その通りだ。
上級貴族の子供は、生まれた時から、色々なものに恵まれている。
恵まれた環境。
恵まれた才能。
恵まれた幸運。
しかし、その『恵まれた要素』の数々は、単に贅沢をしたり、堕落して過ごすためのものではないと、私は思う。恵まれた人間には、恵まれた人間の責任がある。数多くのチャンスと優れた能力を、自分のためではなく、みんなのために使うべきだ。
あのガンアイン氏は、ナディアス王子も認める魔法の天才だった。しかし『恵まれた人間の責任』を放棄し、私利私欲のまま、身勝手な行動をとり続けたため、天罰を受けたに違いない。彼ほどの才能があれば、身を慎み、努力さえ怠らなければ、たくさんの人々を幸せにできただろうに。
酷い人間だったが、彼のありようは、強い戒めとして忘れてはならないだろう。私自身も、いつか初心を忘れ、堕落してしまうかもしれないのだから。
私は誓いを立てるように、ナディアス王子に言う。
「ナディアス王子。私、誓います。決して堕落せず、自分の能力を、自分のためではなく、この国の皆のために使うことを」
ナディアス王子は、しっかりと頷いてくれた。
今日は私にとって、新たなる婚約と、新たなる誓い、その二つが同時になされた、記念すべき一日となった。恐らく目的を達成するまでには、今の私には予想もできないような困難が待ち構えているに違いない。
まずは宮廷魔導師になるために、今まで以上に努力をしなければならないし、そこから、さらに上の目標――歪んだ国の形を変える『変革』を成し遂げていくためには、既得権益の上で胡坐をかいている特権階級たちとも戦わなければいけない。
それは、少なからず命の危険が伴う、いばらの道だろう。ガンアイン氏のような……いや、ガンアイン氏以上に邪悪で危険な存在と、直接対峙することもあるかもしれない。
想像すると、少しだけ足がすくむ。
でも、私は逃げない。逃げたくない。
どんな難題にも、正面から立ち向かってみせる。
愛する婚約者を、失望させないために。
いつか再び会えるであろう友人の、期待に応えるために。
そして、世の中が良くなることを望んでいる、すべての人々のために。
終わり。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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