第54話
そうよ。
私はナディアス王子が、ううん、メイナード先生が、ずっと好きだったの。
穏やかで、優しくて、そして頼もしい先生が、ずっと好きだった。
馬鹿ね。
何言ってるの。
この人は先生じゃない。
この国の、第二王子よ?
わかってるわよ、そんなこと。
でも、それがどうしたっていうの?
王子様でも、先生でも、それこそただの一般人でも、関係ない。
だって、好きになってしまったんだから。
そして今日を逃せば、今度は宮廷魔導師になる時まで、想いを告げるチャンスは訪れないだろう。私は恋心の炎で理性を焼き尽くし、気持ちを言葉にしていく。
「私、私、あなたのことが好きです。わ、私みたいな小娘が、王子様に向かって、こんなことを言うのは、失礼だって、わかってます。でも、本当に、好きなんです」
緊張と興奮で、少しずつ息継ぎするかのような話し方になってしまう。
傍から見ていたら、相当に間抜けな告白であり、まるで喜劇のワンシーンだ。
しかし、ナディアス王子はくすりとも笑わず、真剣な瞳で私の話を聞いてくれている。……そう、ナディアス王子――メイナード先生は、いつだって、私の話をちゃかしたり、ふざけた態度を取ったりしない。だから、好きなのだ。
私は、想いのすべてを振り絞った。
「わかってます、今の私じゃ、とても王子様とは釣り合わないって。だから私、まずは宮廷魔導師になります! そ、それから、もっともっと成長して、この国で一番の、王族からも一目置かれるような魔導師になれたら、私、私と、結婚してくださいっ!」
言い切ってから、とんでもないことを言ってしまったと思う
告白を通り越して、一気にプロポーズをしてしまった……
確かに、この国一番の魔導師なら、王子様とも釣り合うだろうが、それにしたって話が飛躍しすぎだ。私は急に冷静になり、自分の先走った行動が恥ずかしくなって、顔を伏せてしまう。
ナディアス王子は、何も言わない。
あああああ。
やってしまった……
いくらなんでも、私の暴走した発言を聞いて、ムッとしてるに違いない。
うう……このまま消えてしまいたい……
そう思い、へたり込もうとする私の体が、しっかりと支えられる。
なんと、ナディアス王子が、私を抱きとめたのだ。
王子はそのまま、私を抱きしめ、耳元で囁く。
「わかりました。約束しましょう」
……えっ?
今なんて?
突然のことに、唇が震え、問い返すこともできない。
そんな私の代わりに、ナディアス王子が言葉を紡いでいく。




