表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私がそう簡単に死ぬなんて思わないでよね  作者: 小平ニコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/57

第52話

 そこで初めて、ぐずるばかりだったチェスタスの瞳に、何かに気がついたような光が宿る。チェスタスは俯き、小さく、「そうか」「そういうことなのか」と呟いている。それはまるで、自分の心の中で、想いをゆっくりと咀嚼しているようだった。


 そして顔を上げたチェスタスは、もう情けなくべそをかいてなかった。

 憔悴こそしているものの、どこか、すべてに納得した顔で、ため息と共に言う。


「……今、やっとわかりました。アンジェラが僕との婚約を破棄することも、ディアルデン家がお取り潰しになることも、結局は、僕の浅はかな考え方と、幼稚な行動が招いた結果なんですね」


 自分の間違いに気がついたチェスタスに、ナディアス王子は慈悲深い眼差しを浮かべ、小さく頷いた。チェスタスもまた、それに呼応するように頷き、語り続ける。


「叔父上に命じられて不正を手伝っている時も、アンジェラをないがしろにしているときも、僕は、よくないことをしているという実感が、少しもなかった。と言うより、何も考えていなかったんです。だから罪悪感もないし、何か問題が起こっても、自分が罰せられるなんて思いもしなかった。アンジェラが僕を見捨てるなんて、思いもしなかった……」


 そこで一度言葉を切り、チェスタスは再び俯くと、そろり、そろりと言葉を吐き出していく。


「すべてを失って、愚鈍な僕も、さすがに目が覚めました。ディアルデン家はもう無くなってしまいますが、今後は誠実さを第一に考え、裸一貫で、なんとか頑張っていこうと思います。甘ったれの僕が、本当に一人で生きていけるか、凄く不安だけど……」


 ナディアス王子は、チェスタスの両肩に手を置き、励ますように言う。


「先程までのきみならともかく、今のきみなら、きっと大丈夫ですよ。自分の間違いに気がつき、正しい道を歩もうとしているのですから」


 チェスタスは、静かに「はい」と呟き、そして、部屋を出ていく。

 去り際、彼は私に向かって、小さく声をかけた。


「アンジェラ、嫌な思いをさせてすまなかった。もう二度と会うことはないだろうから、最後に謝っておくよ」


 私は首を左右に振り、「もういいのよ」と言う。


 今でもわだかまりはあるが、弱ったチェスタスに追い打ちをかけるほど、私の心は歪んでいない。手を差し伸べてあげようとまでは思わないけど、それでも、チェスタスの今後を思うと、多少は同情心も湧く。今まさに扉をくぐり、出て行こうとするチェスタスを、私は呼び止めた。


「チェスタス」


 チェスタスは立ち止まり、振り向く。呼び止めたものの、なんて声をかけるべきか数秒悩み、私は、思った通りのことを、そのまま言葉にすることに決め、口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ