第48話
「それは、きみがそう感じたってだけだよね? だいたい、積極的にやるしかないじゃないか。まだ未成年で、叔父上以外になんの後ろ盾もない僕は、彼に逆らえるはずもないんだから。こういう場合、過去の判例に照らすと、99パーセントの確率で未成年の従犯者は無罪になるんだよ。そうですよね、ナディアス王子?」
ナディアス王子は、まったく反省をしていないチェスタスに向かって渋い顔で腕組みをし、「それはまあ、そうですね」と言った。
嘘でしょ……?
なんなのこの国、採用制度から司法制度まで、問題だらけじゃない。
茫然とする私を尻目に、チェスタスは勝ち誇ったように笑う。
「あはは! ナディアス王子殿下のお墨付きもいただいたし、僕はもう、帰ってもいいですよね? それにしてもアンジェラ、凄いじゃないか、単身でディアルデン家に乗り込んで、叔父上の不正を暴いてしまうなんて、いやぁ、僕も婚約者として鼻が高いよ! はははは!」
叔父であり、ディアルデン家の当主でもあるガンアイン氏が、もう二度と自由の身になることはないと言うのに、どこまでも他人事のチェスタス。……そのあまりにも浮世離れした姿を見ていると、呆れを通り越して、不気味さすら感じてしまい、私は寒気を覚えた。
だいたい、『婚約者として鼻が高い』って、ディアルデン家の地下で、私に対し、あれほどハッキリと敵対行動を取っておきながら、よくもそんなことが言えたものだ。
そうだ。
思い出したわ。
チェスタスは昨日、エミリーナに対し、私の陰口も言ってたわね。
『一緒にいてもつまらない』
『好きなところは、顔と体だけ』
……確か、そんなことを言っていた。
なんだか今になって、怒りがグツグツと煮え立ってきたわ。
だらしなくニヤついたチェスタスの横っ面を、引っぱたいてやる。
そう思い、前に出ようとする私を遮るように、ナディアス王子がチェスタスの正面に立った。そして、毅然とした態度で言う。
「チェスタスくん。言いにくいのですが、そんなに悠然と構えていられるほど、きみの置かれている状況は良いものではありませんよ。……考えようによっては、刑務所に入ることになるガンアイン殿より、大変かもしれない。刑務所は、何もしなくても寝床には困りませんし、食事も出ますからね」
「はぇ? どういう意味です?」
「わかりませんか? 当主であるガンアイン殿が、国の教育制度の根幹を揺るがすような、重大な罪を犯したのですよ? ディアルデン家は、間違いなくお取り潰しとなります。あの立派なお屋敷も没収されるでしょう。そして、罪には問えなくても、ガンアイン氏の不正を積極的に手伝っていたきみは、当然王立高等貴族院を除名される」




