第45話
「もちろん、あなたのしたことは間違ってたと思ってる。それに、昨日殺されかけた恨みだって、忘れたわけじゃないわ。……でも、結局私は死ななかったし、こうして不正の決定的な証拠を見つけ、ナディアス王子はガンアインさんを捕まえることができた。つまり、えっと、こういうの、なんていうんだっけ? 終わり良ければすべて良し……ってやつ?」
「……いったい、何が言いたいの? 遠回しに喋るのはやめて、結論だけ言ってちょうだい」
「じゃあ、端的に言うわね。さっきナディアス王子が言った、あなたの『殺人未遂罪』についてだけど、あれ、私とあなたが『ディアルデン家の地下で決闘してた』ってことにすれば、罪に問われることはなくなると思うのよ。だから、あなたの人生は、全然終わったりしないの」
私の提案を聞き、エミリーナはぽかんと口を開け、黙ってしまった。
そんな彼女の代わりに、私は意気揚々と言葉を紡いでいく。
「エミリーナ、あなたは確かに、私に対して何度も危険な攻撃魔法を使ったけど、私はそのすべてを防いだわ。つまり結局のところ、私はかすり傷一つ負っていない。だから私が、『決闘形式で、同級生と魔法の実力を比べあってただけ』って主張すれば、あなたは殺人未遂になんかならないのよ。……そうですよね、ナディアス王子?」
私が問いかけると、ナディアス王子は困ったような顔で答える。
「それは、まあ、そうかもしれませんが……。アンジェラさん、そんなことをしたら、あなたはエミリーナさんと一緒に『決闘罪』に問われてしまいますよ? この国では、魔法を使った決闘は軽犯罪に該当しますからね」
あぁー。
やっぱり、そうなるよね。
しかし私は、力強く頷いた。
「わかってます。確か『決闘罪』は、初犯の場合、罰金刑でしたよね」
「そうです。上級貴族の令嬢であるあなたにとっては、大して金額ではありません。しかし、法を犯したということで、前科はつくことになります。……その事実は、今後のあなたの人生に、重たくのしかかってくることになるでしょう」
……それは、そうよね。
前科者になれば、色々と困ったことになるのは、まだまだ世間知らずの私でも、容易に予想がつく。しかし、わかってて申し出たことだ。私は力強く頷き、言う。
「構いません。覚悟の上です」
そこでエミリーナが、今まで閉じていた口を開いた。
「大きなお世話よ、アンジェラ。余計なこと、しないでちょうだい」
「エミリーナ……」
「こんなの、間違ってるわ。だって私、あなたと決闘なんてしてないもの。私は自分の保身のためにあなたを殺そうとし、あなたはそれを見事に防ぎ切った。結果的に外傷を負わなかっただけで、これは立派な殺人未遂よ。……自分の望む結末にするために、事実を捻じ曲げるなんて間違ってる。そうでしょ?」




