第44話
消え入りそうなエミリーナの声に我慢できず、私は叫んだ。
「終わってないわ! まだ、何も終わってない! これからまた、頑張ればいいじゃない!? エミリーナ、あなたみたいに努力家で、魔法の才能のある人が、何もかも諦めるなんて、絶対に間違ってるわ!」
怒ったように、必死に主張する私を見て、エミリーナは怪訝そうな顔になる。
「……変な子ね。アンジェラ、あなた、私が不正入学をした証拠を見つけるために、危ない思いまでして、ディアルデン家を調査してたんでしょ? 結果、見事に目的は成就して、ガンアインも私もおしまい。……それで、めでたしめでたしなのに、何をそんなに熱くなってるの?」
自分でも、よくわからない。
昨日、エミリーナには殺されかけたわけだし、ディアルデン家を調査し、不正の証拠を見つけ、彼女に罰を与えたいという気持ちは、当然あった。そして、どんな理由があろうとも、エミリーナのおこなったことは間違っていると、今でも思っている。
しかし、ディアルデン家の地下室で直接対峙し、真剣勝負のような形で互いに魔法をぶつけ合ったことで、私はエミリーナが、ただずるいだけの人間ではなく、夢をかなえるために、どれだけ真剣に努力してきたのかを、身を持って悟った。
恐らくエミリーナの魔法の実力は、現時点でも、ある特定分野だけなら、もはや王立高等貴族院の先生たちをも上回っているだろう。
それだけの実力を持つエミリーナが、このまま人生のすべてを諦めてしまうのは、あまりにももったいない――
私はきっと、そう思ったのだ。
あと、ガンアイン氏が私を調教すると言い出した時、エミリーナが私のことを『意志も強く、誇り高い』と言ってくれたのは、純粋に嬉しかった。ガンアイン氏の不興を買う覚悟で、私が辱めを受ける前に、『あなたが望むなら、このまま私が、あなたを殺してあげる』と言われた時は、奇妙な友情すら感じた。
そう。
奇妙な友情。
私はエミリーナに対し、自分でも不思議だと思うが、奇妙な友情を感じている。王立高等貴族院に、それほど仲の良い友達がいない私にとって、もしかしたらこれが、生まれて初めて感じた、本物の友情なのかもしれない。
なんとなくだが心の整理がついた私は、いまだに訝しげな目でこちらを見ているエミリーナに、微笑みかけた。
「ねえ、エミリーナ。あなた、ディアルデン家の地下室で、私に言ったでしょう? 『自分でもよくわからないけど、たぶん私、あなたのこと、好きなのよ』って。……たぶんね、私も、あなたのこと、好きなのよ。あっ、一応断っておくけど、変な意味じゃなくてね」
「…………」




