第42話
天窓から差し込む陽光と、晴れ渡った青空は、とても美しい。エミリーナはまるで、決して届くことのない空に触れようとするように、手を伸ばしていた。
ナディアス王子は、エミリーナのそばに近づいて行き、かすかな哀れみを込めた瞳で彼女を見下ろすと、静かに口を開く。
「エミリーナさん、不正入学を主導したのは、王立高等貴族院の理事長とガンアイン氏ですから、あなたは大した罪にはならないでしょう。もちろん、入学自体は取り消されますけどね。しかし、口封じのためにアンジェラさんを殺そうとした『殺人未遂罪』については、不問にできません」
エミリーナは、ナディアス王子の話を聞いているのかいないのか、何も答えない。ただ静かに、ひたすら静かに、天窓の向こうにある青空を眺めている。
「この魔導具には、魔力を使った際の波動も送られ、証拠として記録されています。あなたがアンジェラさんに向かって放った魔法は、学生が使うことを禁止されている、とても強烈で、殺傷力の高いものです。裁判で『殺意はなかった』などと言い訳しても、誰も信じないでしょう」
そこでやっと、エミリーナが口を開いた。
「……言い訳なんてしませんよ。殺意、ありましたから」
「そうですか。……勤勉なあなたなら知っているでしょうが、この国では殺人未遂は重罪です。たとえ未成年でも、五年以上の懲役は覚悟しておいてください」
エミリーナは小さく頷き、それから空虚な笑みを浮かべ、ナディアス王子に問う。
「メイナード先生……いえ、ナディアス王子殿下。私、王宮の天窓から空を眺めるのが、ずっと夢だったんです。かつて、上級貴族として王宮に仕えていた私の曽祖父が残した日記に、『王宮の天窓から眺める空は、この世の何よりも美しかった』って書いてあったから……」
「…………」
「下級貴族で、天才でもない私は、どんなに頑張っても王宮に入ることはできない。入るチャンスすら与えてもらえない。この天窓を通して見る空は、選ばれた者だけが見ることのできる、特別な景色。だから私、どんな手を使ってでも、これが見たかった。そうすれば私も、選ばれた、特別な存在になれるような気がして……」
そこでエミリーナは立ち上がり、両手を伸ばして、天窓から溢れる光を全身に浴びる。眩い陽光に包まれたエミリーナは、天使のよう美しく、そして、儚げだった。
エミリーナは、淡々と言葉を続ける。
「でも、こうして実際に見てみると、まあ、確かに綺麗ではあるけど、『この世の何よりも美しい』ってほどでもないと思います」




