第35話
……いったい、どういうこと?
あの眩い光りに包まれて、私はこの場所にテレポートしたのだろうか?
そう、テレポート。
いわゆる瞬間移動だ。
かつて王宮に仕えていた天才魔導師が、基礎理論を提唱しただけで、いまだ実用化はされていないらしいが、テレポート以外に、今さっき起こった現象を説明する理屈は考えられない。
なるほど、メイナード先生の言っていた『危機を脱することができる』とは、こういうことだったのか。確かにテレポートしてしまえば、どんなピンチも追いかけてくることはできないものね。
私は、一人で納得したようにうんうんと頷いた。
だが、そんな私の耳に、もういい加減に聞き飽きた、粘着質の笑い声が聞こえてくる。
「ほ……ほほほ、ほほぉ……こ、ここは……どこだね……?」
うげっ!?
ガンアイン氏だ!
ちょっと、冗談でしょ!?
ピンチが追っかけてきたじゃない!
私の金縛りは、もう完全に解けている。
また動きを封じられる前に、急いで逃げないと。
そう思い、大慌てで身体を翻すが、ガンアイン氏は私には目もくれず、室内を見回し、それから、恐れおののいたように言う。
「まさか……まさかここは、王宮……? そして、さっきの光は……いや、しかし、そんな……」
王宮?
ここ、王宮なの?
いや、今はそんなこと、どうでもいい。
とにかく、ガンアイン氏から逃げなければ。
別に彼の真似をしているわけではないが、出入り口を探すため、私も室内を見回す。その途中で、床に横たわるチェスタスと、膝立ちで頭を押さえているエミリーナが目に入った。どうやら、あの地下室にいた全員が、この部屋へと転送されてしまったらしい。
なら、状況はあまり変わっていないということだ。
一刻も早く、この部屋から脱出しないと……
出入り口……
出入り口はどこ……
あった!
2メートルはある、立派な両開きの扉だ。
あそこから逃げよう。
でも、びっしりと閉じられてるし、あんな重たそうな扉、開けるだけでも一苦労ね。
すると、まるで私の思いを感じ取ったかのように、大きな扉はゆっくりと開いていく。
その中から、青年が現れた。
すらりとした、高い身長。
日の光を受けて輝く、美しい銀髪。
メイナード先生だ。
安堵感で、思わず泣きそうになる。
しかし、それにしても、今日のメイナード先生、普段と全然雰囲気が違うわね。いつもはもっと、のんびりとしているというか、穏やかで優しい感じなのに、今はまるで、王族が着るようなビシッとした服で身を固め、鋭い視線をガンアイン氏に向けている。




