第28話
そうだ。
私は、これほどの能力と向上心を持ったエミリーナが、間違った道を選んでしまったのが、哀れで、残念でしょうがないのだ。たった今述べた通り、無理をして不正な方法で王立高等貴族院になんか入らなくても、いくらでも功名の道があったはずなのに……
「うるさい! 何もわかってない上級貴族のお嬢様が、知ったような口をきくな!」
エミリーナは、これまでで一番の強力な攻撃魔法を使ってきた。
防ぎ方を間違えれば一瞬で首が飛ぶ、危険な魔法だ。
私は何とかそれを防御する。……冷や汗が、首筋を流れた。
今のでかなりの魔力を消費したのか、エミリーナは肩で息をしながら、言う。
「はぁ、はぁ……優秀な魔法使いになっても、それだけじゃ何の意味もないのよ。この国じゃね、王立高等貴族院を出ていない魔法使いの行きつく先は、魔導師ギルドに勤めるか、魔法道具店で働くか、冒険者になるか、傭兵になるかの四種類だけよ。ふん、『魔法を使う犯罪者』を入れてもいいなら、五種類になるけどね」
「そ、そうなの? 優秀な魔法使いなら、どこでも引く手あまたで、活躍の場所はいくらでもあると思ってたわ」
「あなた、本当に何も知らないのね。はぁ、これだから上級貴族のお嬢様は……」
エミリーナはやれやれと首を振り、それから言葉を続ける。
「考えてもみなさいよ。優秀な魔法使いは、捉えようによっては『人間』というより『凶器』に近い存在よ。呪文を口ずさむだけで、木を倒し、山を削り、その気になれば何人もまとめて殺すことだってできるんだから」
「…………」
「だからこそ、『この魔法使いは高い教育を受けた道徳的な人間ですよ』と人々に証明するために、『王立高等貴族院卒』というブランドが重要なのよ。そのブランド信仰のせいで、この国では王立高等貴族院に入らないと、決して高い地位へとのぼっていくことはできないの。馬鹿みたいな話だけどね」
「で、でも、それって問題が多すぎない? 王立高等貴族院を卒業してるからって、必ずしも皆、道徳的な人ばかりじゃないだろうし、反対に、王立高等貴族院に入ってなくても人格的で、素晴らしい魔法使いはいっぱいいるはずだわ」
「そうよ。だから『馬鹿みたいな話』って言ったでしょ。でも、どんなに馬鹿げていても、それがこの国で信じられているルールであり、下級貴族の小娘でしかない私がどれだけ叫んでも、そのルールは変わらないわ。だったら定められたルールの中で戦うしかないじゃない。たとえ、どんな汚い方法を使ってでも……!」




