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第14話

 興奮し、また体を起こした私の両肩に、メイナード先生は手を置いた。

 顔が近づき、まるでキスをする寸前のような状況になり、少しドキッとする。


 だが、当然ながら、そのままキスをするはずもなく、先生は私をなだめるように、再び体を横たえさせてくれた。そして、布団をかけなおし、私とは正反対に、静かな口調で言う。


「わかっていますよ。私は、アンジェラさんの言うことを、全面的に信じています。しかし、やはり重要なのは証拠です。証拠がなければ、エミリーナさんも、ディアルデン家も、そして理事長も、罰することはできないんです」


 そこまで言われて、私はエミリーナのことを、心から恐ろしいと思った。


 たぶんエミリーナは、証拠を残さずに私を始末することを、徹底して心がけていたのだろう。彼女は今朝、私に声をかけてきた瞬間から、口封じのために私を殺すことを考えはじめ、目撃者のいない早朝の屋上に私を誘導し、物証がまったく出ない重力操作魔法を使ったのだ。


 そうすれば、万が一私を殺し損ねたとしても、結局のところ、証拠はない。


 不正入学の件について、私が一人で騒ぎ立てても、これまた証拠がないし、何より、理事長まで不正にかかわっているとしたら、そう簡単に問題を表面化することはできないだろう。


 ……いや、しかし、それならば、どうしてエミリーナは私を殺してまで、口封じをしようとしたのかしら? 何度も言っているが、証拠は一つもないのだし、何もそんな、必死になって私を殺さなくてもいいはずだ。


 ということはつまり、逆説的に考えて、私が生きていては困る重大な理由があるということだ。……その理由とは、いったいなんだろう? 私がいると、困ること……困ること……私の能力に関すること……?


 いや、たぶん違うわね……えっと、それじゃあ……私の、人脈……? う~ん、でも私、そんなに友達いないのよね。『話が難しいからつまらない』って、チェスタスにも陰口をたたかれてたし……


 あっ。


 それよ。


 チェスタスだわ。


 私は、チェスタスの婚約者で、ディアルデン家にも、簡単に出入りすることができるし、チェスタスの叔父様であるディアルデン家の当主とも、一応面識がある。……私ならば、ディアルデン家に入り込んで、大規模な不正入学の証拠をつかむことができるかもしれない。エミリーナはたぶん、それを恐れているのね。


 きっとエミリーナは、『アンジェラを警戒しておきなさい』と、チェスタスに厳しく忠告していると思うが、それは無理だ。どこかのほほんとし、現実を把握する能力に欠けているチェスタスには、何を言っても危機感を持たせることなどできないだろう。

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