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SDGsバトラーズ17  作者: 茶竹抹茶竹
【3章・地に足つける者達へ/SIDE未來】
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『3-2・修復』

 もはや無力だろうという未來の訴えに負けて、元SDGs2の持ち主の彼女を雫は解放を決めた。

 すっかり態度が軟化している彼女に対して折れたというのもある。

 今度会ったら撃ち殺すから、と念押しをする。

 去っていく女の後ろ姿を見送って雫は言う。

「さて、学校どうする?」

 天井まで届く背の高い棚が倒れている。

 どう起こそうかと思案していた未來は雫の言葉で呆然と立ち尽くす。

 今、瓦礫と残骸の山の中にいるのが見えてないのだろうかと未來は雫の提案に困惑する。

「え、い、行くんですか」

 未來が部屋の惨状を見渡しておずおずと口に出す。

「これ、このままにしとくわけには……」

「じゃあサボろっか」

「ぇ、ぁ……はい」

「初めてかも、学校サボったの」

 何を言うまでもなく雫が足元に落ちた工具を拾い集め始めたのを見て未來は、親切な人だという感想と帰らないのだろうかという気持ちと、そもそも事の原因は全て彼女ではという感情が入り混じった。

「また共犯だ。こんどはサボりの」

 雫の言葉。

「そ、その、共犯って……」

「だってそうでしょ、あたし達は共犯者だから。嫌?」

「あまり、その、良い言葉じゃないと思います……」

「だってさ」

 片付ける手を止めず雫の言葉は続く。

「フツーじゃないことするんだよ、あたし達。ホントに危ないこと。よくわからない力を使ってさ、戦うなんてさ。誰にも言えないし、ヘタしたら死んじゃうかも」

 そこで雫は顔を上げる。

 その真っ直ぐな瞳と目があって、未來は視線が逸らせなくなる。

 人の目を見るのは苦手なのに、逸したいのに。

 雫の言葉が、瞳が、未來をひどく惹き付ける。

「それってさ、多分。めっちゃすごい関係なんだと思う。友達とかそういうのを超えてると思うんだよね、あたし」

 初めてだった。

 人付き合いの苦手な未來にとって、こんなにも真っ直ぐに語りかけられる事や他人よりも知人よりも同級生よりももっと近く深い関係になる事が。

 この関係が普通でない事は分かる、まともじゃない事をしようとしている人間に共犯者に誘われるのがどんなに危うい事も分かる。

 だが、抗えないくらい強烈で凶悪で蠱惑的な何かが雫と彼女の言葉にはあった。

「さて、これからのことだけど」

「こ、これから?」

「あたし達の手元にはSDGsのペンダントが三つある状態。もし、これを持った人間同士が争うように仕込まれているなら、あたし達はまた狙われる筈。変だとは思ったんだよね。ペンダントを起動させると近くのペンダントの位置が分かる機能があるってのはさー、無くした時用かなって思ってたけど」

「……明らかに、所有者同士をぶつけることを意図してる気がします」

 雫が頷く。

 そもそも相応しい所有者とは何を指すのだろうか。未來はそんな事を考えながら床の片付けを続けた。

 壊された小屋はそう簡単に、どうこうできるものでもなく。

 分別こそ終わったものの片付いたとはいえない状況だ。

 壊された壁や床の残骸は産廃にしか見えず、散らばっていた工具や

 異形の腕に呑み込まれた物も吐き出されて返ってはきたが、爆発させた花火のせいでどれも焦げている。

 壊れた物は直す、それが未來の信条であり特技であり趣味でもあるものの、一朝一夕で手に負える量ではなかった。

「あたしのせいでもあるし、どうにか直したいって気持ちもあるからさ」

 雫がそう言って切り出す。

「ペンダント使ってみない?」

「ぇ?」

「SDGs12‐工匠は雑兵に非ず‐」

 それは未來が発動させたペンダントの能力だった。

 身構え怯え、未來は問う。

「な、なんでです……か?」

「理由は二つあるけど、まず一つ目。起動した時に位置はバレるってわけだけど、あたし達は前回起動した時に他の人の位置は見れてないんだよね」

 前回見たものを未來は思い起こす。

 星座のような物が空中に投影されていた。

 それらの点とそれを結ぶ線。おそらくはそれがペンダントの位置を示しているのだろうと推測できる。

 それぞれの方角はともかく、距離はどれくらいの縮尺なのだろうか。

「情報があたし達には不足してる」

「……起動して、他の人を捜すんですか」

「近くにいてさ、また突然襲われたら困るでしょ」

 雫の提案に負けて未來は頷く。

 なし崩し的に未來の物となったペンダントを手にする。

 そこで手が止まる。

 起動とはどうすればいいのか、と。

 前回は突然過ぎて考える余地も無かった上、そもそも未來にそんな意識もなかった。

「あ、あの……、これはどうやったら起動出来るんでしょうか」

「ナンバーを言えばいいんだよ」

「ナンバー?」

 「SDGs12」と雫に言われて未來は復唱する。

 前回と同じようにペンダントが光を放つ。

 描画されるのは星座表のような光の軌跡。

 おそらくこれ自身を示すのであろう点滅する光があり、その横に二つの白い光の点があることで三点が並ぶ。

「あたし達が持っている三つがこれだとすると」

 未來が指尺でそれをなぞる。

 半径5kmくらいだろうか。

 前回と違い、近くに反応らしき物はない。

 SDGs2以外にも居た気がしたが、気付かれて逃げられたのだろうか。と未來は推測する。

「と、とりあえず安全ってことでしょうか……」

「だね、それでさ。もう一つの理由なんだけど。工匠は雑兵に非ず、は対象をより高度な物へと変えるならさ、直せないかな? 鉄さんの部屋」

「え、あ……」

「やってみてよ」

 壊れた壁の材料をまるで壁であるかのように見立て、雑ながらも並べた雫を見て未來は戸惑う。

「あの、えっと……あのときは夢中だったので。どうやれば使えるんでしょうか……」

 雫は未來の手を掴む。

 手のひらのペンダントを握らせる為に、未來の手を包み込む。

 突然手を握られて未來は緊張する。

「大事なのはイメージだって、聞いてる」

 雫に言われるがまま、未來の中で何か湧き上がってくる衝動のようなものを掌から放つように。

 その木材に触れる。

 そして、それは起きた。

 ペンダントの発光が伝わり光を湛える。

 遅れて変化が起こる。

 並べられた木材は瞬時に壁へと変わる。

 最初からそこに存在していたかのように。

 小屋の壊れた壁に添えた木材は、綺麗に壁に変わって破損箇所を埋めていた。

 未來はたまらず隅々まで検分を始める。

 釘も打ってある。ヤスリもニスも素人の仕事ではない。

 破損した箇所とは何かでくっつけた様子もなく、綺麗に直っていた。

 いや、前のものより質の高い物へと変わっていた。

 床や天井と比べて壁だけが全くの別物へと変わって浮いているように見える。

「色々使えそうなカンジがするね」

 雫の言葉もそぞろにして未來は口と目を丸くする。

 そして傍らに落ちていた汚れた玩具のフライパンに手をかざす。

 子供向けの知育玩具。

 マジックテープの付いたプラスチック素材のカラフルな玩具。

 チャチな見た目の食材を貼り付けて遊ぶものだ。

 それがまた未來の手を伝って光を放って。

 同じことが起きた。

 修理ではない。

 プラスチックの玩具は、鉄素材の本物のフライパンに変わっていた。

 質量保存の法則どころではない、材質からして全くの別物に変わっていた。

 同じカテゴリーの物でありながらより高度な物へ。

 贋作を真作に。

 眼の前で起きた光景に、未來が得たのは高揚感だった。

 超常的な事象への畏怖と、何かとてつもない事ができそうな予感。

 好奇心をくすぐられて未來は思わず声を張る。

「っ……試して、っみましょう!」


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