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SDGsバトラーズ17  作者: 茶竹抹茶竹
【3章・地に足つける者達へ/SIDE未來】
10/17

『3-1・予感』

‐翌朝‐


 吹き込んできた朝の冷たい風で、未來は目を覚ました。

 寝ていたのは壊れた小屋。

 奇跡的に簡易ベッドは無事で、何とか布団に潜り込むことは出来た。

 遮るものがなくなって庭の景色がよく見える。

 昨晩は重度の疲労から頭がまともに回らず、気絶するように寝てしまっていた。

 雫との会話も途中で途切れた覚えが未來にはあった。

 改めて部屋……というか半壊した小屋の惨状を前に、祖父にどう言い訳したものかなと未来は頭を抱えた。

 緊張と疲労が抜けておらず重たい身体を起こそうとした未来は、その重みが身体の不調だけでないことに気が付く。

 身体にかけていた毛布の下に大きな塊。

 確かな重量感と自分の脚に食い込む柔らかな感触。

 毛布を引っぺがすと長い手足を器用に丸めて眠る雫の姿があった。

 狭いベッドは未來だけでも窮屈なくらいであったが、その隙間に潜り込むようにして雫がいた。

 けれど彼女の長い手足と背の高さが収まる筈もなく、殆ど未來を下敷きにするような形であった。

 柔らかく瑞々しくハリのある肌が触れている。

 自分とはまるで別の素材で出来ているかのような触感だ、と未來は眠たいままの頭で思考する。

 骨の存在を感じるくらいに細い身体なのに、何故触れていると柔らかく感じるのだろうと未來はぼんやりと考えていた。

 そうして、段々と目が覚めてきてはっきりとした意識で現状を再認識した。

 他人が自分の脚に乗っていることに未來は慌てふためく。

「ぃぃっ……?」

 何故、という気持ちと驚きのあまりに身体が勝手に動いてしまい、未來の脚が寝ている雫の頭を綺麗に蹴り上げた。

「ぁっ」

 バランスを崩した雫の身体がベッドの上から転がり落ち、大きな音と共に悲鳴が上がる。

 身を起こしながら何が起きたのかを理解した様子で雫は渋い顔を作った。

「痛いなぁ」

 文句を口にする雫に対し未來は辿々しく問い詰める。

「な、な、なんで……!」

「んー? あぁ、毛布? 寒かったから」

 他人と共に寝ていた事実が、脚に残った重さの余韻や知らない匂いで、未來の中で実感に変わっていた。

 不慣れで苦手な、人との接触を思いもよらず体験し未來は緊張で声が上擦ったまま。

「さ、さむっ、寒くてもそんな人の、そんな、一緒に、ね、寝ないと思うんですけど」

「何か鉄さんって、機械みたいな匂いするね」

「ぇ、ぁ……すいません」

「あー、臭いとかの意味じゃないよ? ホントそのまま」

 結局いい匂いとは言い難いのでは、という言葉を未來は呑み込む。

 眠気の抜けていない雫の姿は、いつも教室で見かける凛々しさはなく隙があった。

 想像したこともない雫の意外な姿に未來は何となく緊張して視線を外す。

 雫が身を起こし、「問題は……」と呟きながら視線を向けた先には昨晩の女性の姿があった。

 SDGs2を所有していた彼女である。

 昨晩、未來達の反撃によって倒れ気を失っていた彼女は今は毅然とした座り姿で床にいた。

 雫の手によって結束バンドで手を拘束されている。

 彼女はそれを二人の方へ見せて言う。

「これ、解いていただける?」

「ダメに決まってるじゃん」

「SDGsを奪われて何か出来るわけがないでしょう?」

 昨晩の雰囲気とは打って変わった軟化した態度であった。

 険しい視線を向ける雫に対して未來がおずおずと提案する。

「ほ、ほどいてあげたら……ど、どうでしょうか」

「えー?」

「そ、その、て、敵意とかなさそうですし……」

 渋々といった様子で雫はハサミを物が散乱した床から探し当てた。

 昨日の戦闘の被害は片付ける暇もなくそのままである。

 ハサミを手にした雫が少し思案する様子を見せてから、未來にハサミを向けて手渡した。

「じゃあ鉄さんがやってくれる? 妙な真似をしたら撃つから」

 いつの間にか雫の手には、昨晩も見せた銃が握られていた。

 そもそも何故銃など持っているのか、その疑問が未來の中で再燃するも雫の気が変わらないうちに拘束を解いてやるのを優先しようと考える。

 雫は躊躇いなく銃口を女の方に向け、ジェスチャーで未來に早くやるように促す。

 見るからに緊張した様子でハサミを握る未來を見て女は言う。

「今の私には何もできないのよ、緊張しないで」

 温和とまではいかないが、その口ぶりからは敵意のような物は感じられない。

 それを未來は言葉にしていた。

「き、昨日とはだいぶ様子が……違う……いますね」

「えぇ。奪われたあなた達には言っても構わないかしら。持っていかれるのよ」

「な、何が?」

「あの腕に。自分の意識とでも言うべきものが引っ張られるの」

 その言葉に雫が横から口を挟む。

「なに? 腕に人格でもあるわけ?」

「使うときは気を付けることね」

「つ、つかう……?」

「SDGsを奪ったなら、その所有者になるわ。使いこなせるかは別だけど」

 雫が首から下げていたペンダントを静かに手で隠す。

 はじめから女はSDGsを奪うという目的があった。

 その能力も使ってみせた。

 何かしらの情報を有しているのは間違いないと雫は問いかける。

「色々と知っている口ぶりだけどさ、どこまで知ってるの。どこで手に入れたの」

「届いたのよ、差出人不明でね」

 SDGsの力を秘めたペンダント。

 それが突然送られてきたという。

 中には誰が相応しい持ち主なのかを決めるというメッセージが共にあったという。

 それとペンダントの使い方だ。

「怪しげだったけど実際に力があった。なら試してみたくなるでしょう?」

「あ、あんまり……そうならない気もしますけど……」 

 未來がそう言いながら雫に同意を求めようと視線を向けるも、雫は何か考え込んでいる様子だった。

「SDGsを持っていたのにわざわざ他人に渡した……?」

「口ぶりからして……な、なんかまだ持っていそうな……SDGsを配って……争わせようとしてるみたいですね」

 そこで未來は口をつぐんだ。

 それが誰か、雫の父親ではないのかとそんな可能性に思い至ったからだ。

 雫の父親は全てのSDGsが集まった時にそれを奪ったと言う。

 そして、そのうちの2つだけを娘に遺した。

 その構図はまさに同じではないのかと。



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