第5話 決意
お葬式というものに初めて参加した。それが同い年の友達、いや恋人のお葬式なんてとてもサプライズだ。
神君が亡くなったという知らせを聞いたとき、何とも言えない虚無感を経験した。何も考えることができない。ぽっかりと私の心に大きな穴が空いた。
亡くなって一週間くらいは何事もやる気が出なかった。かろうじて学校にはちゃんと通い、不良たちの相手をしていた。ここで不審がられたら神君の生きた証が無くなってしまう。だから学校では常に元気でバカな女子中学生を演じた。
神君の遺影は輝いている。悲しむ遺族の方々に深く礼をし、神君の目の前に向かう。昨日、お焼香のマナーを調べたが、いざ当日を迎えると、お別れをしたくないという気持ちが溢れだし、だんだん調べることをしなくなった。三本指でやるのは覚えているが、何回つまめばいいのだろう。前の人の行動をちゃんと見ていれば良かったと後悔をした。
とりあえず三回ほどやり、速やかに元の場所へ戻った。涙は出ない。そんな感情を持っていたらもう元気なのだから。
お葬式を終え、神君のお母さんに少しだけお話をしようと思った。今まで息子さんに助けられたんです、とか感謝の気持ちを伝えたかった。
近くにいた樋口と山下を連れ、神君のお母さんのお母さんのもとへ向かった。今は誰とも話しておらず一人でいたため、そこをついて私たちは向かった。
「あの、本当に、いや、あの、この度はご愁傷さまでした」
「あー、どうもね。あなたたちは修治の友達?」
「そうです。学校ではいつも明るい修治君に助けられまして、本当に楽しかったです」
「そんな話聞くことができてうれしいわ。あの子、中学入ったら病気にかかっちゃって、本当にかわいそうな中学生活だったと思ってたけど、あなたたちみたいなべっぴんさんが友達だったなんて、長生きしてほしかったわ」
「いやいや、そんな、でも本当に、お母さんも悲しいのは十分承知ですが、私たちも悲しいです」
「ありがとうね。あれ、じゃああなたたちのことかしら」
「…ん?何がでしょうか」
神君のお母さんは荷物を置いてある部屋に向かった。そして右手に封筒を持って小走りで戻ってきた。
「これ、あなたたちのことかしら」
差し出された封筒を見ると「仲の良かった三人へ。本人以外絶対に開けないでください」という字が書かれている。とても見覚えのある字だ。
「もしよかったら、中身を見てもいいですか?もし違ったらすぐに返します」
優しい声で「いいよ」という返事をいただき、震える手で封筒の中身を取り出した。A4の紙が三つ折りになって入っていた。
佐倉さん、樋口さん、山下さんへ
そろそろ最期を迎えるなぁ、と思ったのでこの手紙を書きました。だから思った通り死んでいるか、思ったより長く生きたのか、それは分かりません。
まずは三人に感謝を述べます。本当に楽しい日々を送らせてもらいました。あの時に三人を助けなかったら、と考えると僕はただのいじめられっ子になります。実際、三人以外に僕は友達がいません。いや、恋人になったんだもんね。だから友達は誰一人いません。三人は僕のことを命の恩人と言いますが、僕も三人のことを命の恩人だと思っています。僕のわがままを全部叶えてくれた三人には、言葉では表せないくらい感謝で一杯です。ありがとう。
じゃあ、ここからはあの日に言い残した復讐の計画です。一番陥れやすいやり方はやっぱり未成年淫行です。これくらいしか、三人に罪がなくできる復讐はないかなぁと思います。だからざっくりですが、復讐手順を綴ります。
作戦1.あいつらのマッチングアプリの情報を盗む。
作戦2.偶然をよそって後輩(JKなら誰でも)とあいつらをマッチングさせる。
作戦3.あいつらと未成年の後輩とセックス(5P)をさせて、後輩と警察に行く。
ざっくりだから、それ以外にも苦労することがあると思います。マッチングアプリは必ずしも入っているとは限りませんし、この計画に付き合ってくれる後輩がいないかもしれません。ですので、必ずしも決行しなくてもいいです。三人が辛い思いをするのであれば、復讐はしなくてもいいです。
また、あいつらが更生していれば復讐を決行しなくてもいいです。ただ、僕の予想ではしないと思います。醜悪なあいつらが僕は嫌いです。三人も同じ意見たと思っています。
まぁ、色々ありますが、僕の勝手なわがままです。決行するかどうかは三人が話し合ってください。どんな決断をしても僕はそれを讃え、尊重します。
佐倉さん、樋口さん、山下さん。じゃあね。
手紙を読み終えたころには、幾つもの字が滲んでいた。泣いている様子を見て、神君のお母さんは渡す人が合っていたと思ったのか、その場から消えていた。
その手紙を持ち帰り、三人で話し合うことにした。私の気持ちは、神君のために復讐をして、神君に喜んでもらう。ただそれだけ。