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冴えない僕と不良女子で始める復讐劇(連載版)  作者: のれん
復讐の裏側(佐倉視点)
10/10

第10話 復讐と復讐

 私の家に集まり、例の電話を待っていると、着信音が静寂を切り裂いた。


「はい、もしもし」

「もしもし。先輩?」

「遅かったじゃない。どうしたの?」

「いや、私も記憶が無くて…。気づいたらベッドの上で朝を…」

「あら、そうなの。多分ゴムなしでやられてるんじゃない?中確認した?」


 電話の奥からぐちゅぐちゅという音とかわいい喘ぎ声が聞こえる。


「あ、これ出されました…ね」

「あらあら。もしかしたらレイプに近いことされたかもしれないから、警察行ったほうがいいかもね」

「え、それだけは嫌」

「どうして?」

「だって私のせいであの人たちが捕まっちゃう…」

「でも自分の命の方が大事だよね。もし妊娠してたらこれからとんでもない費用かかるし、精神的にもくるものがあるから。大丈夫。私が手伝うから」

「本当ですか?いや、でもだめですよ」


 頑なに快い返事が返ってこないことに少し腹を立て、別の手段を切り開く。


「そういえば、親になんか言われなかった?」

「あぁ、言われました。『あんたどこ行ってたの』って。めっちゃ怒られました」

「まぁそりゃそうよね。あと言っておくと、昨日の出来事が親にばれたら確実にあいつらは警察行になる」

「それだけは…避けたいです」

「分かるけど…。でも私たちはあんたの方が大事なの。あんたのためにも警察に行きなさいって言ってるの。分かる?」

「絶対に嫌です!」


 急に後輩が叫んだため、耳がキーンとなった。しかしそのおかげで向こうの家では彼女の叫び声が響いた。電話の奥の方から母親らしき声が聞こえる。


「どうしたの?部屋はいるよ?」

「あ、だめ」

「え、どうしたの。何で泣いてるのよ」


 どうやら後輩は泣いていたらしい。私のせいで、という感情が前面に出たのだろう。私は近くにいる母親に向けて大声で「お母さん!お話があります!」と叫んだ。


「え、私?」

「お母さんは出ちゃダメ」

「いや、貸しなさい。はい、もしもし」

「あ、お世話になってます。私、娘さんの先輩のものです」

「はい…。お世話になってます」

「あの、これから真剣な話をするのでよく聞いてください」


 母親の真剣な返事と後輩のすすり泣く声が聞こえる電話の向こうに、会心の一撃を贈る。


「あのですね、もしかしたら娘さんがレイプされたかもしれないんですよ」

「え!どういうことですか!?」


 何が起きたのか、私たちが全く関与していない形ですべての事情を話した。電話の向こうから来るのは、震える返事ばかりだ。


「分かりました…。ありがとうございます。あの、一応会ってくれませんか。もう少しちゃんとお話をしたいので」

「分かりました。じゃあ、○○っていう喫茶店分かりますか?」

「はい」

「じゃあそこで待ってます」


 電話を切り、私たちは勝利の雄たけびのように叫んだ。強く抱きしめあった。私たちの目は涙が溢れていた。


「もう勝利は目の前ね」

「うん、神君の願いももうすぐで叶う」

「よし、じゃあ私行ってくるね。山下の樋口は準備をお願い」

「うん、気を付けてね」


 その後、先に後輩と会い、とある約束を交わした。それは「私が基本的に話すから、実際にやられたときのことだけ話してね」という約束。半分、私に脅された後輩は思考がおかしくなり何度も頷いた。これも計画通り。


 そして警察に行き、全てを話した。時折、私が関与している事実を消しながら。端的に言うと、マッチングアプリで会った人にレイプされた、という事実を述べた。

 警察もよくあるケースだという反応をし、冷静な面持ちで事情聴取を進めた。


 すぐにあいつらは捕まった。警察に対して述べた事実は、とても醜く悪意のある犯行だと下され、懲役刑になった。

 後から聞いた話によると、酒と媚薬を飲ませ朦朧とした状態で犯しまくった、とのこと。これが合意のもとでやったと判断されることはなかった。


 当然だがあいつらは違法な相手だということを知らなかった。私たちが口酸っぱく後輩に「一個下ですって言いなさい」と言っていたからだ。

 その後、SNSに個人情報を投稿し、思い描いていたストーリーになった。復讐は完璧に終えることができた。


  *********


 五日後、私たち三人はお墓参りに行き、神君に復讐完了の報告した。恋人とのキスも終え、私たちは解散し帰宅する。その帰り道、とある冷たい視線を感じた。

 その視線は後ろから感じたため、後ろを振り返ると、刺身包丁のような刃物を持った後輩が立っていた。


「あんたのせいで…。私の人生も快楽も、信頼関係も、なにもかも失った…。あんたのせいで…」

「待って。私はあんたのために」

「うるさい!」


 後輩が私のもとへ走ってくる。もう、足は言うことを聞かなかった。痛みを感じたお腹を触ると、真っ赤な手が震えていた。おそらく貫通した。血が抜けていくのってこんな感じなのだと知った。体に力は入らず、その場に倒れこんだ。


「ふふっ、次はあの二人…」


 そう言い、後輩はその場からいなくなった。


「…だめ……、逃げて………」


 遠のく意識の中、神君が私の目の前に現れた。


「お疲れ様。本当に頑張った。だからこっちの世界で楽しく生きよう」


 差し伸べる手はあの時と変わらない。「うん」と言いその手を掴んだ。また大好きな人と一緒に居ることができる。神君と手をつなぎ、煌びやかな階段を上って行った。何段も、何段も…。

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