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第1話 幕開け

「お前目立たねえくせに腹立つな」


 とある昼休みのことだ。教室の隅っこで静かに勉強しているだけなのに、そんな暴言が飛んできた。気が付くと僕の代わりには四人の性格の悪い不良が集まっていた。その奥に見える一般生徒は知らんぷりをして被害が広がることを抑えている。

 無視をして勉強するも、教科書と筆箱が取り上げられてしまった。


「俺たちお前の名前覚えたいと思ってんだけどさぁ。どうも覚えられねえんだわ」


 そんなことを言われても正直どうでもいい。今目の前にいるような人たちと関わりたくないのだから。


「ていうことでお前の知名度上げるために罰ゲームな」


 何もゲームをしていないのに罰ゲームを受けてしまう始末。情けない思考回路をしているやつの相手は本当に面倒くさい。

 そのまま無視をするも、その姿に不良たちの怒りを買ったようだった。


「お前さぁ、無視するとどうなるか分かってんの?」


 どうせ暴力だろうと予想していた。正直、暴力をくらって問題になって停学処分にさせた方が全体のためにいいと考えた。しかし、一向に暴力は振るわない。不良たちはニヤニヤした表情を保っている。


「こっち来いや」


 そう言うと不良のリーダー格のやつは僕の首根っこをつかみ、どこかへ連れて行こうとする。こういう時に僕が強かったら、なんて妄想をする。


 しばらくすると、女子更衣室の前に移動していた。


「お前はこの中にいる俺らの仲間に告白をしてもらう」

「できなかったらお前をボコボコにする」


 なんとも頭の悪い交換条件だ。やる気が全く湧かない。しかし痛い目を見るよりは少し恥をかく方が楽だと思い「わかった」と答えた。


「俺らは入るところ見てるから、途中で逃げたら容赦しないからな」

「わかったよ」


 中にどんな人がいるか予想はできるが、念のため三回ノックをした。するとドアの向こうから予想していた声が聞こえる。


「なにー?」

「三年三組の神山修治です」


 そう言うと、答えは返ってこないが鍵を開ける音がした。これは「入れ」という合図だ。監視の目があるため僕は自分からドアを開けた。


「こんにちは。佐倉さん。山下さん。樋口さん」


 佐倉さんに山下さん、樋口さんはいわゆる不良のグループ仲間である。見た目は金髪や茶髪、スカートはかなりのミニスカートと、しっかりとした不良である。しかし、僕たちの関係はあの不良たちは知らない。


「どうしたの?学校では私たちと関わらない約束でしょ?」

「そうだけど、なんか罰ゲームでここに連れてこられた」

「え、あいつらの仕業?」

「そうだよ」

「え、本当にごめんね」


 佐倉さんはとても優しい口調で答えてくれた。あいつらは想像していないだろう。教室では隅にいる僕が、この女の子たちと対等に話していることを。


「そろそろあいつらを痛い目に遭わせたいね」

「僕もそう思う。早く消さなきゃだめだと思うよ」

「相変わらず辛辣だね~」

「わざわざあの不良グループの仲間になってる君たちほどじゃないよ」

「計画が面白そうだったからやってるだけだよ~」


 僕たちは小学六年生のころに出会った。きっかけはそれぞれいじめられていたところを助けただけ。小学生の頃はそれなりに力があったため、助けることはできたものの、中学生となった今、僕の体力や筋力は徐々に落ち始めている。原因不明の病だ。あと一年。余命宣告もされている。

 いじめから助けたことから僕は彼女たちに慕われている。


「私たちはあんたに恩がある。あんたが死ぬまでにやりたいことを私たちは全力で応援する。だから手伝ってるんだよ」

「いまさら聞くけど、死ぬまでにやりたいことって本当にそれでいいの?」


 僕が死ぬまでにやりたいこと。それはこの学校にいる頭の悪い不良を排除すること。自己満足かもしれないが、今後の為にもなるのでは、と考えている。


「それでいい。だから三人には本当に感謝してるよ」

「いいのいいの」


 余命で僕は好きなことをする。今まで散々な扱いをしてきた不良にたいして精神的に、肉体的に追い詰めたい。そんな不良がトップにいるようなカーストをぶっ壊したい。それが僕の野望だ。


 僕たち四人にできる復讐を、僕が死ぬまでに成し遂げる。

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