第11話 1日積み重ね
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名前:サイガ・アキラ【神呪:All 1】
LV:1
職業:道化師
副職業:選択不可
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HP(体力):1(10)
MP(魔力):1(30)
ST:1(10)
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STR(筋力):1(4)
DEX(器用):1(27)
AGI(敏捷):1(4)
VIT(耐久力):1(3)
INT(知力):1(19)
LUC(幸運):1(40)
SP:2→12
《固有スキル》
憂鬱
虚飾
《特殊スキル》
独占の欲望LV:2→3
魔素支配LV:1
賢者の才
《スキル》
簡易拠点LV:6
認識誘導LV:4
感情操作LV:5
器用強化LV:3→4
知力強化LV:1→2
急所突きLV:2→3
言語翻訳LV:1→2
水魔術LV:1→2[+水球]
窃盗LV:3
度胸LV:6
変装LV:2
料理LV:1→2
剣術LV:1→2
槍術LV:1
観察LV:2→4
《耐性スキル》
苦痛耐性LV:1→3
精神耐性LV:5→6
損傷耐性LV:1→4
疲労耐性LV:6→7
属性耐性LV:1
〈パーティー〉
1.オムニス
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特殊スキル:『賢者の才』
・魔術特性の獲得。
・熟練度上昇に伴い、適正の高い属性魔術の獲得が可能。(最大3属性)
・3属性獲得により、『賢者』の職業が解放される。
特殊スキル:『魔素の支配』
・MPを消費せず、空気中から魔素を集め魔術を発動出来る。
・DEXとINTが高い程、魔素の収集効率が上昇する。
・熟練度の向上で、魔素の収集効率が上昇する。
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風が吹き抜ける早朝の道で、『水魔術』の〝水球〟を発動する。指先に空気が集まる様な感覚の後に、水の球体が生まれ、時間の経過に伴って大きくなって行く。そして、狙いを定めた先に立つのは、鎧を纏うオムニスだ。
「ふぅ」
バスターソードを両手で構え、俺の放った〝水球〟を迎え撃つ。
「はぁ!」
俺の放つ事の出来る最大火力の〝水球〟が、『剣気(破壊)』を纏った一閃によって両断される。
両断された〝水球〟は、通常の水の状態へと戻りコンクリートと土の地面を濡らす。
昨日の蜘蛛型モンスターとの戦闘で、『水魔術』が敵と戦う上で俺の秘策となると考え、夜明け直後から人通りの少ない道で訓練はしてるが、なかなか上達しない。
「今日はここまでだ」
「でも……」
「そう焦るな。長く続ければ、上達するとは限らないだろ?」
『憂鬱』のスキルがあっても、『水魔術』のスキルレベルは上昇し難い。何より、魔術という今まで感じた事のない感覚に慣れるのに時間がかかりそうだ。
おそらく、魔術の感覚は、才能に最も影響される。そして、当然だが、能力値が高い程に扱う事は容易くなって行くのだろう。
自分の能力値の低さと才能の無さに、憂鬱な気分になりながらも冷えたご飯で朝食を作る。
オムニスは、体が濡れてしまった為、朝に『水魔術』で貯めて置いた風呂で体の汚れを落としてから、体をタオルで拭いて貰っている。
獣毛がある所為で、1度濡れると乾き難く、汚れ易い為、入浴に時間が掛かるそうだ。
今の気温的に寒くはないけど、水浴びには適してないよな。オムニスは、「寒くない」と言っていたけど、風邪には気を付けて欲しい。
そんな事を考えながら料理を進める。
《熟練度が一定に達しました。『料理』がLV:2→3にレベルアップしました。》
《熟練度が一定に達しました。『筋力強化』を獲得しました。》
《熟練度が一定に達しました。『観察』がLV:4→5にレベルアップしました。》
心配事も増える一方で、スキルも順調に増えている。スキルの数だけなら、オムニスにも負けてはいない。
ただ、戦いに有能なスキルが少ない事から、結局は『水魔術』の訓練は必要だ。
すると、浴室の扉が開き頭から大きめのバスタオルを被り、大きなバスローブを纏ったオムニスが姿を見せる。
ドライヤーが使えれば良かったな。
……今度、犬猫用のドライシャンプーでもしてやるか。
今日の朝食は、オムニスの体が冷えたと思ったので、豆乳と味噌で作った何ちゃって坦々雑炊だ。これなら、冷えたご飯でも温かく食べれる。
盛り付けて、仕上げにラー油とお好みで花椒をかければ完成だ。
バスローブ姿のオムニスの前に、何ちゃって坦々雑炊を置くとオムニスの視線が釘付けとなる。
「不思議な匂いだ……」
「食べれそうか?」
「……頂きます」
オムニスは、蓮華で米とスープを救って口に運ぶ。
「か、辛い!?だが、美味い!」
「ごめん、ラー油とか花椒とか、唐辛子が辛かったのかも」
「俺は、もっと辛くても大丈夫だ」
今までの食事とは、また違ったオムニスのリアクションを見れた。
その後も、オムニスはご機嫌な様子で「フーフー」と雑炊を覚ましながら口に運んで行く。
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時間は、世界が異世界へと変わった4日目の朝より遡る。
人々が避難して来た高校の体育館の中に、怒声や懇願の声が響く。憔悴した人々や見回りをしていた生徒や大人達は、『またか……』といった様子で視線を元凶へと向ける。
そこでは、説明を行っていた男性2人に詰め寄る大人達数名の姿があった。
「そんな事納得出来ない!」
「逸れた子供が、家に戻ってるかもしれないの!」
「その報告だって、確実じゃないんだろ!」
詰め寄られている老人ーー校長は、困った表情を見せる。
「皆さん、どうか落ち着いて下さい。安全が確認出来ましたら、偵察の範囲も広がりますので……」
「そんなの待ってられるか!」
「お願いします。どうか、力を貸して下さい」
泣き崩れて、頼み込む人や縋り付く人々に校長は『どう説得するべきか』と悩む。
既に、言葉での説明では人々を納得させられない事は嫌と言う程理解出来た。
つまり、手詰まりだ。
現状、偵察の範囲は広げられない。それに、弱い人々を護衛しながら、行方不明者の探索が不可能なのは明白だ。
正直な話、校長にとって、目の前で一方的な意見ばかり言う人々よりも、命がけで戦ってくれる人々の安全を少しでも保つ事が最優先事項だと考えている。だからといって、目の前の人々を蔑ろにすれば、守るべき人々に被害が及ぶ可能性があった。
「なら、自分達でレベルを上げて探索に行けば良い」
痺れを切らしたのか、今まで黙っていた空悟が人々に向けて口を開いた。
「あんな化け物と戦えるか!」
「しかも、レベルなんて本当にあるの?ゲームじゃないのよ!」
人々の声を聞いていた空悟は、「はぁ」と『威圧』のスキルを込めた溜め息を吐いた。それだけで、人々は声が尻窄みに小さくなる。
「まず、貴方が化け物と呼ぶモンスターと俺達は何度も戦っているし、この場に避難している大勢の人々が戦った経験がある。そして、レベルやステータスがある事を疑うなら、貴方達を守る俺達の事も信用してない訳ですね?」
静かで丁寧な話し声ではあるが、その言葉には重みがあった。
「だが……あんな化け物となんて」
「本当に戦えるの?」
「国は何をしてるんだ?」
「ママ、お姉ちゃんを探しに行くの?」
「なんとかならないのか?」
人々の心を支配しているのは、『不安』だ。
疑問、恐怖、混乱、喪失、焦り、凡ゆる負の感情が、人々の冷静な判断を狂わせている。
その時、1人の男が前に出た。
無性髭を生やした恰幅の良い男性は、空悟の目を睨み付ける。
「あの化け物を倒す事が出来れば、家族を探しに、い、行けるのか?」
「断言は出来ません。それでも、可能性は0ではないでしょう」
「分かった。お、俺も、偵察のチームに入れてくれ」
校長は、その様子を見て感嘆する。
斎賀空悟という少年が、20歳という若さで人の心を動かす瞬間を短い間で何度も見て来た。
若さ故の蛮勇や無謀な意思ではなく、現実を見据えて尚、堂々と自身の意志を示す姿が人を惹きつけ、人々の心を変えている。
少なくても、この敷地の中に、そう言った輝きを秘める若者が3人いる。
もしも、彼等がいなければ、自分達がどうなっていたかを考えるだけで恐ろしい。
(儂も、褌を締め直さなければならんな)
《熟練度が一定に達しました。職業:『校長』の条件を達成した事により、特殊スキル『校内領域』を獲得しました。》
新しいスキルの獲得を知らせる声を聞き、校長は首を傾げた。
(はて、『校内領域』?)
後で、斎賀兄姉に相談する事の一件に加えて、話に意識を戻す。
「なるほど。では、熊谷さんの家族は商店街の近くにいる可能性があると?」
「ああ。だから、出来れば商店街方面への偵察には出来る限り参加させて欲しい。絶対に足は引っ張らない。もし、勝手な行動をすれば見捨てて貰っても構わない!だから、この通りだ!!」
人々の見ている前で、壮年の男性が土下座をした。その姿を見た空悟は、「今の条件は、偵察隊に伝えて起きます」と言って了承した。
その後、他の人々からも声が上がり始めたので空悟と校長は、人々の対応に追われる事になった。
漸く、人々の意見を整理した校長と空悟は、校長室へと戻って来れた。
校長室のソファーには、配給されたお茶とカロリーメイトを食べる夕華と玲が座っていた。
「ここはお前達の休憩室ではないんだぞ」
「だって、外を歩くだけで色んな人に話しかけられるんだもん……」
「そうかい。なら、好きな時に来て休むと良い」
「校長先生……」
校長にとって、この場にいる3人は特別な子供達だ。自分の私室が、休憩所に使われる事で夕華達が少しでも心身共に休めるなら幾らでも貸すつもりだった。
「所で、先程新しいスキルを獲得したんじゃよ」
「どんなスキルですか?」
「特殊スキルで『校内領域』と言うらしい」
校長のスキル名を聞いて、3人は首を傾げる。
この場の4人は、校内で発言しているスキルの殆どを把握していた。
殆どというのは、意図的に隠している者もいる事を過程し、『殆ど』と4人は考えている、
「どんな効果なのですか?」
優しげに問いかける玲に向けた校長の視線は、近くに置かれている刀に向かった。
自宅に飾られていた家宝だというが、真剣の刀を飾る家と言うのも凄いな、と思う。
「どれどれ……」
慣れない手つきでステータスの画面に触れて、説明を読み上げる。
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特殊スキル:『校内領域』
・校内の敷地に効果を付与し、領域内の敵対者以外に恩恵を与える。
・レベルに応じて、付与効果の種類が増加する。
・レベルの上昇に伴い付与効果が増加する。
・[+自動治癒]
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校長の説明を聞いた3人、特に玲の表情は満面の笑みをしていた。
「凄い、凄いスキルですよ!校長先生!」
影のゲーマーである玲は、この世界に逸早く適応した人物であり、スキルへの理解も深い。それ故に、4人の中では、最もスキルの扱いや他人への説明なども上手くこなしている。
「そ、そうなのかのぉ」
「だって、学校の敷地内にいれば、怪我が勝手に治るんですよ!」
「た、確かに、凄いのぉ」
「落ち着いて、玲」
「獅堂さん、校長先生が引いている」
「あ、ごめんなさい……」
先程まで、満開の桜と言うより、向日葵の様な喜びの表情だった玲が、急に顔を赤くして縮こまってしまう。
本来の獅堂玲という少女は、恥ずかしがり屋な一面を持っていた。
「いやいや、寧ろ助かったよ」
お礼を伝えて、校長は早速『校内領域』を発動する。そして、3人に早く休むように伝えて、校長室で1人となった。
1人となった校長室の室内で息を吐いた校長は、紙で運ばれて来た連絡事項を蝋燭の明かりを用いて目を通し続けていた。




