【詩】見えないこども
俺は煙だ。
だから
誰の目にも見えない。
だから
どんなに暴れても
壊しても
傷つけても
燃やしても
誰も俺がやったと気づかない。
誰も俺に気づいてくれない。
もう俺なんて消えてなくなればいいのに。
俺が消えて、お前が残ればいいのに。
そうすれば、みんな喜ぶのに。
だけど
お前が消えた。
お前が消えたせいで、俺は見えないこどもじゃなくなった。
俺の姿はみんなから見えるようになった。
お前が俺にまで体を分けてくれたから。
バカなやつ。
お前のせいで、もう俺は悪いことができなくなった。
お節介なやつ。
だから
お前が消えたときに
壊したもの
傷つけたもの
燃やしたもの
俺はこの目で見ていたから。
だから
俺が後片づけしといてやるよ。
お前は見えないこどもじゃない。
俺の目には、今でもお前の姿が見えるんだから。
「わたしのなかのあなた」兄視点の詩でした。
作中で語られてはいないですが、おそらく絶望で壊れかけた家族を懸命に繋ぎ止めたのは、彼だったのではないかなと思っています。