三流なろう作家が鳥取砂丘に行ってきたお話
タイトルの通りでございます。
それ以上でもそれ以下でもありません。
アクション小説などを好む三流なろう作家の自分が、旅行で鳥取砂丘に行ってきたお話です。この作品は写真も無し、イラストも無し、文字だけでどこまで情景を伝えられるか、自分なりの訓練みたいな面も持っております。
読者の皆様におかれましては、旅行記として読むも良し。ファンタジー系小説における定番フィールドの一つ、砂漠のシーン描写のヒントにするも良し。好きに読み流しちゃってください。
読了時間は、たぶん12分ほど。
良いのか? 貴重な12分だぞ?
それでは、はじまりはじまりー。
自分は旅行ツアーの目的地の一つとして、今回の鳥取砂丘を訪れたワケです。到着時刻はたしか16時過ぎくらいだったかと。そこから一時間ほど散策、またはお土産購入の時間が与えられるワケです。
さて。バスを降りた自分は、さっそく目の前の階段を上り、鳥取砂丘へ向かいます。話に聞いていた鳥取砂丘、生で見たらどんなものだろうと、胸をウキウキさせながら。
……ここから先に、地獄が待ち受けているとも知らずに。
階段を上りきると、さっそく眼前に広がっておりました鳥取砂丘。
最初に見た時の感想は、なんというか、もう、「うぉぉぉぉぉ」って感じでした。なんだこのコメント情景伝える気あんのか。
階段を上がってきたその場所が、砂丘の一番高いところになっていて、そこから中心にかけて大きくくぼんでいるような地形でした。
そして、辺り一面が砂色一色。もう比喩でも何でもなく、視界の端から端まで砂丘が広がっているのです。あれほどまでに広大な砂の大地を、自分は生で見たことなどありませんでした。
この鳥取砂丘以外にも、姫路城や出雲神社なども見て回ったのですが、やっぱり大自然が作り出す景色が一番圧倒されますね、自分としては。そこは個人の感性にもよるでしょうが。
砂丘の中心がくぼみ、自分が立っている場所の反対側が大きく反り立って、砂の山になっています。ちなみにこの砂の山、『馬の背』という名前があるそうです。『鳥取砂丘 馬の背』で画像検索すると出てきますよ。自分が言葉で伝えるよりよっぽど分かりやすいですね。この砂の山の頂上を目指すのが、自分の第一目標です。
ためしに足元の砂を調べてみると、砂粒が恐ろしいくらいにきめ細かいのです。例えば……今、あなたがパソコンでこの作品を読んでいるとして、キーボードにホコリが落ちていませんか? それと同じくらいですよ。いやホントに。誇張抜きで。
あまりの砂粒の小ささゆえに、メッシュ製の靴などは、繊維の間から砂が侵入してくるらしいです。いつか砂丘に行かれる予定がある方は、どうかご注意ください。
さて。砂も調べたところで、いざ砂丘に足を踏み出します。
歩いてみてすぐに分かったのですが、砂に足を取られて歩きにくいです。柔らかい砂に靴が沈んでいくのです。これが地味に効きます。恐らく、この砂の上で全力疾走しようとしても、スピードはかなり落ちてしまうでしょう。
かの名作戦略シミュレーションゲーム、ファイアーエ●ブレムシリーズでは、砂漠にユニットが侵入すると移動力が落ちるのが定番ですが、納得です。あれは間違いなく落ちます。むしろ、回避率までは影響されない自軍のユニットたちを褒め称えたい気持ちです。
さて。話を戻しまして、自分は件の砂の山のふもとまで到着しました。この砂の山を登るには二つのルートがあります。一つは、比較的なだらかな坂道を行く右ルート。もう一つは、鬼のように急こうばいな坂道を上る左ルートです。
いきなり無理をして轟沈したくないので、自分は右ルートを選択しました。楽な方ですね。はいそこ「つまんねぇ左行けよ」とか言わないで。
比較的なだらかで楽……などと書きましたが、右のルートも十分キツイです。なにせ、ここまでの平らな道よりもさらに深く、足が砂に埋まってしまうのです。
平らな道では、せいぜい靴底までしか砂に埋まらなかったのに対して、この坂道はつま先が沈没、かかともアキレス腱あたりまで砂に浸かり、脚を上げるのも一苦労です。
そして、そんな坂道が47メートル続きます。
15階建てマンションの屋上までの高さくらいだそうです。
(鳥取県公式サイトより)
とはいえ、自慢になりますが、自分は体力には多少の自信がありまして。右ルートはほぼ難なく登頂完了いたしました。
砂の山の向こう側には、日本海が広がっております。水平線の向こうまで、島一つない大海原。波の音がドドォー……ドドォー……と、少なくとも47メートル離れているはずの自分の場所にまで響いてくるのです。ウチの母のいびきにも負けていません。
海岸側にも下りることができるようでしたが、今回は海岸には行かず、来た道を戻ることに。
帰りは下り坂なので、まぁ楽ちんなものでして、地球の引力に任せてたったったーと坂を駆け降りるだけです。上りは三分以上かかりましたが、下りは20秒で終わりました。
さて。坂道を駆け降り、あとはバスのところまで戻って、お土産でも探すのが安牌なのですが、自分はどうしても左のルート……急こうばいでキツイルートも気になったワケです。こっちを上ってこそ、鳥取砂丘の神髄を知ることができるのではないか、と。
しかし、自分は今回、ツアーでこの旅行に来てます。自分の気が済むまでこの鳥取砂丘にいられるワケではないのです。時間は限られている。自分はどの選択肢を取るべきか。左ルートに挑戦するか、それとも尻尾巻いて逃げ帰るか。
はい。左ルートに挑戦することにしました。
誰だ今ガッツポーズしたの。
先述の通り、自分は多少は体力に自信があります。そんな自分ならば、左ルートも無事に登頂して、そのまま颯爽と坂を駆け降り、軽やかにバスまで……といけると思ったのです。
そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。
さて。二度目の砂山登り開始です。
まず、左ルートの坂のふもとまで移動し、そこから坂を見上げてみました。
その時の第一の感想は「壁かな?」でした。
いやもう本当に、めっちゃ首を上げないと山頂が見えないのです。例えばですが、高速道路なんかを車で走っている時、坂道が土砂崩れ防止で、セメントで固められている場所があるじゃないですか。アレとほぼ互角と思っていただければと。
で、さっそく坂を上ってみるワケですが、今まで以上に足が砂に沈みます。靴紐部分までは当たり前。足を置いた場所が悪いと、足首のあたりまで砂に埋まることもザラです。ザラザラです。砂はサラサラでしたが。あ、止めて、座布団を投げないで。
ともかく、バスの発車の時間もあります、あまり悠長に坂を上るワケにもいきません。自分は持っている力全てを注ぎ込み、この左ルートを進んでいきます。
それから、およそ二十秒後……。
げ……は……ぐぁぁぁ……!!
心臓が……爆裂する……っ!!
もうそれぐらいキツイのです。あれだけ心臓がドグンドグン鳴っていたのは、高校の時の持久走以来だったかと。間違いなく今年で最も体力を使った瞬間でした。
とはいえ、まだ山頂ではありません。
とはいえとはいえ、これだけ頑張ったのです。
ならば、結構良い所まで進んだのでは?
そう思い、坂を見上げてみるワケですが……。
現在地点は、坂の半分くらいのところでした。\(^o^)/
……心が折れそうだ…………。
それからも、高鳴る心臓に歯を食いしばって耐えつつ、一心不乱に山頂を目指し始めます。この辺りでもう完全に、この左ルートに挑戦したことを後悔しておりました。
前の人が歩いて、少し踏み固まった砂を足場にするという姑息な手段もフル活用しながら、この地獄からの脱出を目指します。
あの名作狩猟アクション、モン●ターハンターシリーズでは、ハンターたちが重そうな鎧を着込んで砂漠の大地を駆け抜けたりしますが、今の自分がアレを見たら、正気の沙汰とは思えません。ましてや砂の坂を駆け上がるなど……。鎧の重さであの砂の坂を上るって、下手するとモンスターと戦う前に疲れ果ててキャンプ送りですよ? やはりハンターは超人……。
ともかく最後の方は、鬼気迫る表情で、坂に両手を突っ込みながら、どうにかこうにか登頂に成功しました。断言します、もう二度と左ルートは行きません。
とはいえ、苦労の果てに到達した山頂です。山頂から見下ろす景色は一回目の右ルートと同じですが、自分の眼にはどこか違うような、輝かしい景色に映って……スミマセン同じ景色です。やっぱりどうあがいても同じ景色は同じ景色です。綺麗でしたけど。
さて。無事に山頂に上り詰めた自分ですが、体力はとうに枯れ果てて、数分ほど深呼吸しても心臓のバクバクは一向に止む気配がありません。そして、バスの発車時間は刻一刻と近づいている……。
つまり、ゆっくりしている暇は無いということです。
いまだ疲れが残る身体に鞭打って、自分は砂山を駆け降りました。それだけでも超キツイのに、そこからバスまで戻らないといけないんです。自分の現在地点からバスの停車場所まで、ざっと2キロ近くはあります。しかも、この砂丘はくぼんでいる地形なので、帰りも当然、坂道です。坂道なんです。
……今一度誓います。
二度と左ルートは使いません。
許して。
何度も砂丘のど真ん中で行き倒れそうになりながらも、自分はどうにか砂丘の入り口まで戻ってこれました。もう心臓は臨界寸前。11月だというのに汗ダラダラです。ここで自分にハートブレイクショットなんぞ打たれた日には、まず間違いなく心停止を引き起こす自信がありました。
砂丘から出ると、近くの柵にちょっと腰かけて、靴の中の砂を出すことにしました。左ルートに挑戦した際、踏み込んだ足が足首まで砂に埋まり、靴の中にも砂が侵入してきたのです。
靴を脱ぎ、裏返して、靴底をトントンと叩きながら、靴の中の砂を追い出す……と、砂と一緒に、靴底に敷いていたインソールまで落ちてきました。地面にベシャリと落下し、今でも砂まみれです。
……二度と左ルートは使いません。
心身ともに満身創痍となった自分は、もはやお土産を選ぶだけの気力すら残っておらず、ウインドウショッピングを楽しむだけに留めて、ツアーバスに乗って鳥取砂丘を後にしたのでした。おしまい。
……とまぁ、自分の自業自得で地獄を見る羽目になりましたが、なんだかんだで楽しい体験でした。自分は自然の名所が好きだということもあり、今回のツアーでは最も楽しめた場所かもしれません。
聞いた話では、砂丘の砂粒はあまりに細かすぎて、空気中を舞い、電子機器に入り込んで動作をおかしくすることもあるらしいです。目やのどに入って痛みを引き起こすこともあるとか。砂丘に行かれるご予定がある方はご注意を。砂丘に落書きも駄目ですって。
最後に。
三流なろう作家としての自分が、今回の砂丘体験についてまとめると……。
◎砂漠の移動はすごく大変。重い武装なんてもってのほか。
◎小高い丘から眺めれば、めっちゃ遠くまで見渡せる。人もまるで米粒。
◎あの砂地での歩きにくさは、足腰のトレーニングに間違いなく使える。
◎あのきめ細かい砂には、きっと何らかの利用価値がある……!
(でも鳥取砂丘の砂はテイクアウト禁止です)
◎砂の山が目の前にそびえ立つ絶望感は異常。
こんなところですかね。
ファンタジー小説の砂漠のシーンを書く時の参考にでもしてください。
参考になるのだろうか、こんなの。