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契約3

(あれ?ここは?)


《主、主、聞こえるか?》


声が聞こえる。

確か俺はステラと契約の儀式を行なっていた筈、そしたら声が聞こえて。


《主、聞こえておるのだろう?其方面白い能力を持っておるな。我の力の範囲内で面白い波動を感じたから興味本意で来てみれば、、これは暇つぶしになるやもしれん。》


なにやらぶつぶつと呟く声が聞こえる。


(一体なんなんだ、この声は?)


《主、我と契約せよ。そこの娘と契約した様だが、別に二重契約となっても良かろう。なにしろ精霊たる我が認めるからな。》


《因みに拒否権はないでな。それに主にもメリットはある。》


(俺はそんな力は持っていない、よく分からない契約なんてごめんだ、、)


《くふふふ、言ったであろう。拒否権は無いと。それにしてもよ、主の星はとても数奇に見える、これは覗き甲斐があるのぅ》


《我の名は、精霊クリスタ。また近いうちに会う事になるだろう。ではな。》


その言葉を最後に声は遠ざかり、

俺はまた意識を失った。


*


「シュン、シュン。大丈夫か?目を開けてくれ。」


徐々に意識がハッキリしてくる。

ステラの声だ、、先程まで聞こえていた女性の声はいったい。


「俺は気を失っていたのか、、ステラ?」


「良かった、良かった。儀式の後急に意識を失って、心配したのじゃぞ!」


余程心配だったのだろう、涙目でこちらを心配そうに見つめるステラは、目を覚ました俺を急に抱きしめてくる。


とても嬉しいのだが、とても力が強く、、、

本当に強い。なんだこれ、人の力じゃない。


(あぁステラは魔族だもんな、しかも竜の)


「ごめん、ステラ。苦しい、、」


ステラの手を叩きながら訴える。


「す、すまん。つい力が入ってしまった。」


「大丈夫か、、?体は何処も悪くないか?」


ステラが心配そうに此方を見つめてくる。

体を触って確かめてみるが、特に異常は無い。強いて言うなら、体に力が漲っている。これは魔力だろうか、、。元々の俺には魔力は全く無かった。多分契約の結果だろう、ステラに感じる魔力と同質の物を感じる。


「あぁ、大丈夫みたいだ。」


「そっか、良かった。」


差し伸べられたステラの手を掴んで起き上がる。すると左手の甲に見慣れない物を見つけた。


「ん?これは?」


左手に右手とは異なる紋様が刻まれている。

契約の前には全く無かった。ステラとの契約が影響しているだろうか?


「なぁ、ステラこの左手の紋様なんだが、、」


そう言って、ステラに左手を見せる。


「なんじゃ?急に、、、ん?それは、クリスタ様の紋様では無いか?ほれ、あの宝玉にも同じ物が掘ってあるじゃろう?」


指し示された宝玉には確かに同じ紋章がある。夢かと思っていたあの女性の声に真実味が出て来た。


「ステラ。ちょっと話があるんだが。」


*


「なるほどのぅ、精霊に好かれやすい体質なのかもしれんな。あの部屋の特異性にも直ぐに気付いたし。にしてもシュンよ、其方クリスタ様が気に入る様な特別な力でも持っているのか?」


「もしかしたらなんだが、俺が異世界人と言うのは話したよな?どうも俺たちは超能力があるらしいんだよな。」


知る限りの異世界から一緒に喚ばれた仲間達の能力をステラに説明した。


勇者である俺の親友が授かった力【ペルセウス】光月が持つ【猿飛佐助】他にも【パイロキネシス】【フリージング】【トランスポーター】【コンダクター】など知ってる限りを話した。


「なるほどのぅ。人族が召喚術によって異世界から勇者召喚を行なっているのはそういう訳か。」


(あれ、もしかして話しちゃ不味かったのかな、、ステラ知らない感じだよな。)


「まぁ良い、我ら魔族にとって不都合な真実だが、長年特殊な力を持つ人族に苦しめられたからな、その謎が解けたわ。」


(やっぱり、、)


「して、シュンよ。其方はなんの能力があるのだ?其方も異世界人なのだろう?」


(来ちゃうよなぁ、この質問。)


「無い、、、」


小さい声で呟く。


「ん?聞こえんぞ。」


「無いんだよぉ!俺には何も!」


つい大声を出してしまった。

気不味い顔をしなからも、ステラに声を張り上げた事を謝る。


「ふむ、だが能力の有無なんぞ、我はどうでも良いぞ。我は其方が欲しいのだ。能力が欲しい訳では無い。」


「それにな、明日には其方も能力者になってるかもしれぞ。説明した通り、其方は魔族側の役目を持つ。ならばその異世界人特有の超能力とやらも人族の教会では判別出来なかっただけではあるまいか?ここ魔族側で祝福を受ければ解決するやもしれん。」


「それにクリスタ様が其方に能力があると伝えていたのだろ?ならば、可能性は高いじゃろ。」


確かにその通りだ。

無い事が当たり前と思っていたせいで、卑屈な考え方しか出来なくなっていたのかもしれない。


「そ、そうだよな、ありがとうステラ。」


「うむ、明日は早い。早朝には出発するでな、午前は教会に行き、午後は王城にて其方のお披露目じゃ。」


今聞いてなかったワードが飛び出した気がする。聞き間違いじゃなければ、王城に行く、、と。


「あの、ステラさん?今王城に行く、と?」


「ん?確かに言ったぞ。現魔王である我の父タナトス・リ・アドアステラに其方を紹介せねばならんし、他の魔王候補の連中にも伝えないとのぅ。」


「ちょ、聞いてないぞ。それにまだ心の準備が、、」


慌ててステラの父、しかも今代の魔王?に会うのは、覚悟が出来てない旨を伝えて、考え直して貰う様に願い出るが。


「却下じゃ。其方がこんなにも早く我との婚礼を決断してくれたのじゃ。嬉しくてのぉ、もう国内には触れ書きを出してしまったわ。」


知らないワードが沢山出てくる。

婚礼?確かに婚約者、、とは言っていたが飛躍し過ぎだろう!


「まっ、待ってくれ。」


「ダメじゃ~、覚悟を決める事だの。」


そう言って部屋から出て行こうとするステラを追い掛けようとするが、体が動かない。

知らない内にバインドの魔法が掛けられている。


「では。おやすみ。だ・ん・な・さ・ま」


ステラが出て行った後の扉を見つめる。


(あぁ、父さん、母さん。俺に婚約者が出来ました。)


今はもう会う事も出来ない、元の世界の両親に心の中で念じるのであった。

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